東北でも相次ぐクマ被害。発注機関や民間企業も対策を講じるところが出てきた。必要経費を変更で認める旨をいち早く打ち出した福島県土木部の担当者は「人命第一で対策を示した」と切迫した状況を明かす。
福島県は土木部が主導し、クマ対策に要した現場経費を協議の上で変更対象とすることを今月5日付で記者発表した。農林水産部も翌6日付で同様の内容を公表している。
想定している対策は、現場事務所の近くにクマが出没した場合に備えるセンサー付き感知器や音を発する器具、1本2万円が相場となっているクマスプレーなど。
土木工事は共通仮設費の安全費、建築工事は共通仮設費で計上する。委託業務では、測量業務は直接経費の安全費、地質調査は間接調査費の安全費、土木設計業務は直接経費の特許使用料等でそれぞれ計上する。工事と業務のいずれも積み上げで積算する。当初設計時点では計上しない。
技術管理課の担当者は「作業に当たる方々の人命第一で内容を考えた。また、現場が止まらないように配慮していきたい」と話す。積算方法を示す上では国土交通省のものがベースになっている算定基準を読み込んだと明かす。
例えば、土木工事の共通仮設費における安全費は「工事施工上、必要な安全対策等に要する費用」とする一文にクマ対策も含まれると解釈。測量業務の積算基準にも「安全対策上必要となる経費」にクマ対策ハンターやハブ対策監視員の記載があり、現場状況に応じ積み上げて算出すると書かれていることに根拠を見出した。
前出の担当者は「新しく制度をつくったのではなく、既存の内容を改めて周知したもの」と話す。市町村にも参考送付しており反響は大きいという。
東北地方整備局ではことし7月、会津地方で猛禽類の繁殖状況を調査していたコンサルタント会社の調査員がクマに遭遇。命に別状はなかったが負傷した。これを受けて各事務所に書面(写真)を送付し注意喚起を促している。
必要な対策に生じる経費は協議の上で応じる考えだが、まだ具体的な事例は乏しいという。赤外線カメラを搭載したドローンによる事前調査も想定するが「生物反応があったとしてもクマかどうか識別が難しい」という課題もあるようだ。また動物の生態調査は音を出して近付くことができないのも悩ましい。担当者は「フェーズが明らかに変化しているので、注意喚起の次の手を考えないといけない」と危機感を示す。
このほか宮城県は、県管理河川でヤブの刈り払いに着手。クマの移動経路となる川沿いの見通しを確保するもので、18河川26カ所について11月末までの人身被害防止強化期間内に順次、実施する。作業は日常の河川維持管理業務を担当している各地域の建設会社に依頼。費用は変更契約で対応する考えだ。
現地調査にハンター同行
東北で検討のゼネコンも
受注者側も恐怖感が高まっている。トンネルやダムなど山間部に計画されている構造物の現場を調査する業務は、クマの生息域に足を踏み入れるようなものだ。
いくつかの建設会社にヒアリングすると、クマスプレーやクマ鈴、ラジオ、爆竹などを携行して複数人で調査に行くようにしている会社が多いが、「今はできるだけ現地調査に行くこと自体を控えている」という声も。
あるゼネコンはもともと、北海道でヒグマの出没が想定される場所を現地調査する際は、1回につき2万円の手当を支払ってハンターに随行してもらっているという。この取り組みを東北など他地域にも展開できないか検討しているようだ。
提供:建設新聞社