北海道建設新聞社
2026/03/17
ナラ枯れ 北上の脅威/道内で急速拡大
2023年度に本道で初めて被害が観測されてから、道南地区で急速に広がりを見せる「ナラ枯れ」。害虫が原因で製材用の樹木などが枯死するものだ。本州では古くから知られる現象だが、温暖化の気象条件を背景に北上したとみられる。森林で枯死が広がると元の姿には戻りにくく、抜本的な駆除方法がないのも現実だ。しかし道内全域への被害拡大も否定できず、立ち向かう姿勢が試されている。(建設・行政部 鈴木穂乃花記者)
■害虫が原因
ナラ枯れは、カシノナガキクイムシ(カシナガ)が繁殖のためにナラ類の樹木に潜り込んだ際に菌類が広がることで、通水障害が起こり木が枯死してしまう現象。本州では明治から昭和にかけて被害が発生したものの、数年で次第に収束するものだった。
■道内は23年度被害を初観測
ところが1980年代から状況が一変する。日本海側を中心に各地で発生した被害が連続して拡大を始めた。徐々に被害地域は北上を続け、2010年には青森県でも被害が発覚。県内の被害本数は25年10月末時点で10万本以上と過去5年間で最多になっている。
北海道では23年度に松前町と福島町で初めて被害が観測された。24年は213本だったが、25年は1959本と急速に勢力を伸ばしている。
■耐性低いミズナラ 温暖化など影響
道内で繁殖するナラ類の総蓄積は24年度の北海道林業統計によると、6265万5000㎥に上る。このうち、特に道内全域に分布するミズナラは、ナラ枯れへの耐性が最も低く、25年度の被害木のうち89%がミズナラとされている。ミズナラは量、質ともに本道を代表する銘木だ。
国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所北海道支所の小林卓也主任研究員によると、原因となるカシナガは青森県から飛来してきたと考えられるという。青森県での被害が急増したのをはじめ、地球温暖化による気温上昇、カシナガが付きやすい太いミズナラが多かった条件が重なり、道内でも被害が急激に増加したとみる。
本道の最高気温が40度近くになる温暖化を考慮すると、感染の前線が北上する可能性は否定できない。その上、耐性の強いササの密生や、急速に生息域を広げるエゾシカの食害が起きやすい条件下では、「ナラ枯れ後の森林は元の林に戻りにくい」(小林主任研究員)と指摘する。
■調査、伐採、駆除にマンパワー必要
檜山森林管理署では8月から10月までにヘリコプターなどで現場調査をし、冬に伐採、雪解け後の4月ごろから6月までは薬品でくん煙駆除している。担当者は「短い期間での全木の確認と対処はマンパワーがいる。現在はトラブルもなく対処できているが、働き手不足の昨今、同様の対応が継続できるかは分からない」と不安を見せる。
実際にナラ枯れ被害木の伐採に取り組んだ林業者は「当初定めていた仕事のスケジュールを押すことになってしまい、精神的にも大変な仕事だった」と振り返り、途方もない作業への疲れを見せる。
■知恵を絞って効果的対策を
森林生態学を専門とする東北大大学院農学研究科の深澤遊准教授は「よほど徹底的に発生状況を把握し、しらみつぶしに感染木を伐倒・薬剤くん煙しないと防除は難しい」とし、対策の困難さをうかがわせる。
ナラ枯れ被害の深刻さや脅威を認識する一方で「病気イコール悪と安直に捉えられるものではない。なぜそのようなことが起こっているのか理解する必要がある」(深澤准教授)と、人や社会が自然と共存するため知恵を絞る必要があると示唆した。
ナラ枯れが地域の経済や産業に暗雲をもたらす存在であることは間違いない。手をこまねくことなく、関係行政や研究機関が効果的な対策に乗り出す必要に迫られている。