埼玉県八潮市の道路陥没事故から、1年余り。インフラ老朽化への危機感が高まるとともに、上下水道など地中のライフラインを新技術で把握しようとする動きが広がっている。国は、2027年度末までにメンテナンスと管路情報のDX導入率を100%とする目標を設定。各自治体は、ビックデータ、AI、IoTなどの先端技術を活用した取り組みを加速化させている。
静岡県磐田市は25年9月〜2月まで、路面異常と地下の水道管劣化の相関関係を検証する実証実験を自動車部品メーカーのアイシン(愛知県刈谷市)、スタートアップ企業の天地人(東京都中央区)とともに行った。アイシンの道路維持管理支援サービス「みちログ」と、水道管の破損リスクを衛星データから分析する天地人の「宇宙水道局」が連携。将来的に道路異常とともに下水道管の劣化状況などを「みちログ」で把握することを目指している。
「みちログ」は、市街地を走行する道路パトロールカーなどに搭載したカメラで撮影した画像などをクラウド化し、AIで分析。ポットホールやひび割れなどの道路異常を検知する。道路の劣化情報や補修作業の指示、作業報告を地図で記録・管理することで、早期修繕や長期的な補修計画の作成を可能にした。現在、愛知県岡崎市、浜松市、横浜市などの地方自治体を中心に10者が導入している。今回の実証実験は、それを地下の異常検知に広げる取り組みだ。
なぜ、自動車部品メーカーが、インフラメンテナンス関連の事業に乗り出したのか。同社に話を聞くと、カーナビで使われるLBS(ロケーションベースサービス)の技術が起点になったという。位置情報活用技術だけでなく、部品のピース検査で使用しているAIなどの技術基盤を応用することで同サービスが開発された。
製品開発担当の宮島孝幸氏は「道路の劣化など移動による負の側面を、維持管理に貢献することで補っていきたい」と、その意義を説明してくれた。確かに、効率的な管理システムの開発は、インフラの老朽化や、技術職員の人材不足が進む中で、有力な課題解決の手段となるだろう。
同社では現在、配送業者などの車にAIカメラ専用車載器を搭載してもらい、車両情報や、位置情報、カメラ画像をサービスで活用している。宮島氏によると「操作が一切不要なため、どのような車でも街のパトロールカーに変えることができる。AIの学習データ生成には、障がいがある人の力も借りており、就労支援にもつながっている」という。これまで道路の維持管理に関わってこなかった人材や企業の参加を促すことで、幅広い見守り用途に対応できるプラットフォームの構築、街のエコシステム≠目指しているようだ。
また、現在のシステムは、道路のポットホール、ひび割れ、白線の擦れが管理対象だが、「水道管の破損による道路の空洞化、橋梁、トンネルや水道管などの劣化検知、落下物や草木のはみ出しなどを素早く検知できる技術の開発」を他社との協業も視野に入れている。今回の実証実験を含め、多岐にわたる維持管理全般の業務をフォローできるシステムに発展させる考えだ。
これまで国道や市道で採用されてきた背景を、宮島氏は「AI監視システムなどDXの積極的な導入の流れが後押しになった」と分析。今後は「県道や高速道路への活用拡大、さらにはアジアをはじめ北米や欧州でも展開していきたい」と意気込んでいる。
提供:建通新聞社