京都市は、東寺の西側に位置する史跡西寺跡の保存活用計画をまとめた。
整備の主な内容としては、▽サインや遺構表示の充実(周辺を含めた体系的な計画)▽コンド山周辺の保存整備、公園整備と連携した施設整備の検討(唐橋西寺公園(A−1地区))▽公有化後の整備(塔跡地区(A−2地区))▽ガイダンス・管理機能を持つ便益施設整備(展示、普及啓発・管理等の機能を持つ便益施設等の整備)−など。
計画期間は、短期(令和8〜12年)・中期(13〜17年)・長期(18年以降)。
史跡西寺跡(南区唐橋西寺町)を巡っては、令和元年に遺構が確認できていなかった塔跡が発掘され、市はその周辺6291uを史跡に追加指定するよう意見具申し、令和3年に指定。令和4年に国庫補助を得て、その大部分を公有化した。
今後、残った民有地の公有化を進めるとともに、史跡として整備を行い、その歴史的な価値を発信し、周辺のまちづくりにも寄与していくため、保存活用の基本方針として保存活用計画を策定した。令和6・7年度に史跡西寺跡保存活用計画策定検討会で議論し、文化庁、京都府教育庁文化財保護課の指導・助言を得て、京都市文化財保護課がとりまとめ。策定事業支援業務は空間創研に委託した。
史跡は区画整理された市街地の中にあり、民有の宅地を多く含んでおり、また、公有地も小学校、都市公園、道路といった市民生活の維持に必要なものが多い。その前提のもと、史跡の保存と活用、継承を適切かつ持続的に行っていくための指針とすることが計画の第一の目的。
市文化財保護課で公有化を進めている塔跡地区について、今後の公園整備により史跡の本質的価値を可視化し、まちづくりの一つの核としていくことが必要とし、今計画により、その本質的価値を明確にし、整備と活用の方針を示すことが第二の目的。
計画の主な内容をみると、整備の基本方針として、@遺構面が浅いため、整備の際には保護層を十分に確保し、確実に遺構を保存するA唐橋西寺公園(A−1地区)は、都市公園としての機能に加え、史跡の活用にも配慮した整備の検討を行うB史跡公有化を行った塔跡地区(A−2地区)は、史跡整備による本質的価値の可視化を図るC塔跡地区(A−2地区)は段階的な整備を行うこととし、当面は第1期整備(暫定整備)とし、全面的な公有化が実現した後に、再度計画を立て第2期整備を行うD塔跡地区以外については、伽藍の範囲や位置がわかるよう、標識や説明板等サインの充実を図る−とした。
整備方法について、史跡地全体は、@遺構面の保護を行う(▽施設等の整備にあたっては、保護盛土などにより遺構面の保護を行う)A平安京の歴史を体感できる場として整備する(▽史跡西寺跡と周辺に位置する関連史跡等をつなぐネットワーク動線の指定や整備(表示)、共通するサインの設置など、平安京の歴史を体感し楽しめる空間として整備し、活用を図る▽史跡西寺跡の歴史的意義や特徴をわかりやすく伝えるため、史跡地内に史跡標柱、史跡説明板、解説板等のサイン施設を設置する。設置にあたっては、体系立てた配置及び内容の検討を行うとともに、表示手法やサイン等の意匠や色彩を統一する)B理解の増進に役立つ活用のための施設を整備する(▽史跡に関する展示、普及啓発等のガイダンス機能や管理機能を併せ持つ便益施設等を整備する)。
唐橋西寺公園(A−1地区)は、@コンド山周辺の保存整備を行う(▽コンド山の浸食を防止することで、講堂跡の遺構の保護と松尾祭の場としての継続的な利用を担保する▽コンド山頂上部の既存樹(エノキ)について、定期的な点検によって倒木等の危険を事前に回避し、見学者の安全確保とコンド山の保存を図る)A公園整備と連携した施設整備を検討する(▽周辺遺跡等を含めたネットワーク動線上の拠点となる施設整備として、史跡と公園が連携して利用可能な便益施設等の更新を行う▽コンド山東側にあるプール跡の既設コンクリート構造物撤去の可能性について検討し、可能な場合、伽藍の遺構(東僧房)を表示して遺構の顕在化を目指す。遺構表示にあたっては、公園施設としても活用可能な施設整備を目指す)。
塔跡地区(A−2地区)は、@塔跡の遺構表示により史跡の存在を周知する(▽塔跡の遺構を史跡西寺跡の象徴的存在として表示し、現地でなければ見られないもの、感じられないものを伝える施設整備を行う▽史跡西寺跡の価値(意義・特徴)をわかりやすく伝えるとともに、塔跡の壺地業や西大宮大路関連遺構などの発掘調査で見つかった新たな知見を伝える▽臨場感や空間のスケール感を伝えるとともに、発掘時の状況や地下にある(今は見られない)ものを、その場所で表示する手法を検討する▽御前通に面する立地を生かし、誘導標識など史跡への導入口としての機能をもたせる)A活用のための施設整備を検討する(▽遺構周辺においては、遺構の保護を兼ねた盛土および表面舗装を行い、歩きやすい見学環境を整備する▽夏場の暑熱対策として芝生の広場を設けるほか、遺構保存に支障のない範囲で、休憩所やベンチ・縁台等の休憩施設の設置、および緑陰樹・低木等の植栽を行う)B公有化の進展に合わせた段階的整備を実施する(▽塔跡エリアの公有化が完了するまでの期間の段階的な整備として、残存宅地の生活者に配慮した第1期整備(暫定整備)を行う▽第1期整備にあたっては、生活動線となる道路をはじめ、インフラ施設(上下水道・電気)の維持を最優先とする▽安全な利用環境確保のため、車両進入防止柵、防犯カメラ・防犯灯、史跡地近隣住民の住環境に配慮した境界柵等を設置する▽エリア内の未調査箇所を活用し、発掘体験等ができる多目的広場を設置する▽遺構の保存を前提として、史跡地内の維持管理のために給排水設備を整備する)。
唐橋小学校(A−3地区)は、校内における児童向けの説明板やサインの設置を検討。その他の史跡地(食堂院跡等)は、所有者の承諾を得られた箇所については、民有地にも主要な遺構等の説明板を設置する。