名古屋市観光文化局名古屋城総合事務所は6月5日、特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議石垣・埋蔵文化財部会(第71回)を開き、名古屋城跡の補修方針と、観光施設の整備について議論を交わした。市からは本丸搦手馬出の天端整備におけるスロープ設置案や、布団かごによる鵜の首(小天守西)周辺部の前押さえ対策案などが提示。専門家からは「遺構復元とサービス性のバランスをとるための議論を深めるべき」といった意見が出た。
本丸搦手馬出周辺では、石垣の補修が進められているとともに、天端の整備が計画されている。今回の部会で名古屋市が提示したのは、観覧施設として活用する石垣上面の舗装構成と転落防止柵の仕様案、そこに至るまでのスロープ設置案の三つ。スロープ設置案では、構造物設置と法面活用の二つに、それぞれ6%と8%の勾配を付けた合計4案を提示。市からは、法面を活用した場合はスロープの幅員確保のために追加の盛り土が必要になる可能性があるとして「(再現性のために)構造物設置の2案の方が良いのではないか」と説明があった。
石垣上面の舗装構成については3案が提示。土系固化舗装と遮水シートによる案と、脱色アスファルト(As)舗装案、As舗装の上に薄層As舗装を施す案が示された。市はこの3案の中では、施工性と資材確保の容易さから「土系固化舗装と遮水シートによる案が望ましいのでは」とした。転落防止柵は、石垣上面の全体を囲む形で鋼製の6案が示されている。
この、石垣上面全体を転落防止柵で囲う案について、専門家らは「石垣上面に柵を設置する場合は基本的に外側のみの設置となっており、内側への柵の設置は再現性を損なう」と指摘。合わせて、復元時代として設定している江戸時代後期には鋼製の柵が無く、本来存在しなったスロープの設置することについても「歴史的な空間のため、一定の線引きは必要。サービス過剰になってはいけない」との意見があった。
鵜の首(小天守西)周辺部の地震対策では、石垣U66とS10に設置する布団かごの形状案が示された。形状は角型と俵型、円筒型の三つ。市の説明では「全体のボリュームを抑えることができ、石垣への荷重を極力小さくしている」として角型の格子型網(連結タイプ)とする方針が示されたものの、専門家からは「石垣にもたれかかる形での設置」が布団かごとしては正しく、また今回の対策が、恒常的か暫定的かも示されていないと指摘。改めて案を示すよう求めた。
その他には、名勝名古屋城二之丸庭園での発掘調査や、同会の運営方針の変更、県の担当者による愛知県体育館の取り壊しについての説明などがあった。
今回の検討会の内容について、専門家らは、整備の目的や遺構保全の重要性などの前提条件が「事務所内部で統一されていない」と意見。今後に向け「全体的に議論の組み立てなおしが必要だ」と要望した。
提供:建通新聞社