昨年7月の天竜川水系流域委員会で事業再評価を行い、総事業費を約790億円から約1900億円に増額し、工期を7年延伸して2038年度までとすることになった天竜川ダム再編事業。これから本格的な工事が始まる同事業を所管する天竜川ダム再編工事事務所の新所長として4月に着任した岩田信隆所長に話を聞いた。
―就任の抱負を聞きたい。
「事業は既存ダムである佐久間ダムの洪水調節機能を確保して下流側の洪水被害を軽減し、堆砂対策として土砂を下流側に還元することが目的。これから本格的な工事が始まるし、地質調査も急峻(きゅうしゅん)な斜面で行うこともある。事業を着実に進めるためには、何よりも安全第一で進めていかなくてはならない」
―所管エリアの印象は。
「遠州地域は初めての赴任になる。事業を行っている佐久間ダムは山間地で自然豊か、自然と地域住民が共生しながら生活している印象。一方で中下流部の扇状地域は、大企業の工場があり、国内でも有数のモノづくりの中心地。自然もモノづくりも川の恵みが支えている。事業を行い、浸水などを防ぐことが、この地域を守っていくことになる」
―建設省(現国土交通省)に入省したきっかけは。
「実家の近くに天白川があり、子どもの頃に遊び場にしていた。高校生になると、河川を管理する仕事があることに気付き、地域を守る仕事がしたいと入省した。これまで河川、海岸、ダム、砂防と幅広く携わってきたが、特に河川で工事を行い、実際に事業効果が発揮できたことは大きな経験になっている」
―これまでに印象に残っている仕事を聞きたい。
「東日本大震災の復旧時、仙台河川国道事務所で海岸堤防の復旧工事に携わった。もともとはTECフォースとして現地に派遣、現場を見てショックを受け、自分に何かできることがないか考え、すぐに希望して転勤した。復旧、復興することにより地域の生活が戻っていく。公務員の仕事は縁の下の力持ちが基本だが、地域の皆さんに感謝の言葉をいただくこともあり、やりがいを感じた」
―業務を進める上で重視することは。
「土砂を流すことに対し、さまざまな立場の人がいる。ダム周辺だけでなく、中下流部も含め、さまざまな地域の方とコミュニケーションをとり、寄り添った形、全体で最適な形で事業を進めなくてはならない。また、できるだけコストを抑え、決められた工期や事業費を守っていくこと、整備することによる効果など事業の認知度を上げていくことも重要と考えている」
【略歴】1989年4月建設省(現国土交通省)入省。仙台国道河川事務所建設監督官、木曽川下流河川事務所工務課長、三峰川総合開発工事事務所長、中部地方整備局河川部総合土砂管理官などを経て、今年4月に現職。名古屋市出身、名城大学卒、56歳。
(提供:褐囃ハ新聞社)