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北海道建設新聞社
2010/04/06

【北海道】評価ばらつき、難しさ実感−総合評価模擬実験

 北海道土木技術会建設マネジメント研究委員会(伊藤昌勝委員長)は3日、北大工学部で総合評価の技術提案模擬実験の報告会を開催した。企業の提案を、受発注者双方の複数グループで審査し、その結果について検証した。評価結果については、各グループでばらつきが生じ、評価の難しさが浮き彫りとなった。また、今後の在り方については「結果の詳細な通知により、企業側の不満はある程度解消するはず」「各審査項目を詳細に分析することで客観的評価基準ができるのではないか」―などといった提案があり、総合評価方式に関する問題意識を共有化する中で、今後の在り方検討に向けて、前向きな議論が展開された。

 開発局発注工事では、調査基準価格ぎりぎりでの応札が恒常化し、加算点が受注の大きな要因となっている。一方で、評価基準の不透明さやブラックボックス化を指摘する声が企業側から挙がっている。今回の実験では、これまで評価される側の企業に評価作業に参加してもらい、発注者側の評価結果との対比を行うことで、より望ましい評価の在り方を検討する上でのきっかけとすることを狙いとしている。
 今回の実験は、同研究委員会の地方公共調達特別小委員会(委員長・倉内公嘉小樽開建次長)が、小樽建協の協力を得て実施した。

 模擬実験は、まず小樽開建が仮定の橋梁下部工事を標準U型の総合評価方式として設定し、小樽建協会員5社に「冬期の寒中コンクリートの品質管理」をテーマに養生、強度管理と工程、ひび割れ対策、その他の4項目について提案を求めた。
 評価については、小樽開建が評価した上で、複数で構成する道外大手ゼネコン、地元企業A、同B、道庁(道建設技術センター)、コンサルタント、元発注者、事務系の7グループが評価を行い、それぞれのグループごとに提案企業を順位付けした。
 評価結果を見ると、小樽開建が1位とした企業を、道庁と一般事務グループ以外の5グループが同様の順位付けをしている。一方、道庁の評価で1位の企業は、小樽開建で最下位となり、2位から4位については、各グループで順位付けが異なるなど、評価結果のばらつきが顕著に表れている。
 倉内委員長は、評価結果のばらつきについて「開建では仕様書に書いてあることは提案で評価しないが、大手グループでは、仕様書の中であいまいな記述を具体化している場合は評価するなど、グループごとの判断基準の違いが結果に反映されたのでは」と分析。道庁との違いについても「標準型と簡易型の評価基準の違いが表れたのではないか」と指摘した。

 提案した5社からは「企業にとっての財産である技術を、今回の模擬実験でどこまで明らかにすべきか、という点で悩んだ」「会社として自信を持って提案したが、評価が低く打ちのめされた」との声も出ていたが「今回初めて他社の提案を見て、表現に差があることを実感した」「点数の取れない理由の一端が見えた」―など、今回の実験により、これまで不透明さが指摘されていた技術提案の評価基準について、一定の見識を得たことを成果として強調した。
 また、7グループの代表者らと参加者を交えた意見交換会では「評価する立場になって初めて作業の大変さが分かった」「コンクリートの薬液使用の提案は邪道ではないか。しっかりと施工すればそれらは必要がないはず」―などといった声が出た。さらに「品質をテーマにする限り、オーバースペック問題は解消しない。施工体制を確実に審査する方式が望ましいのでは」「各審査項目を詳細に分析することで客観的評価基準ができるのではないか」などといった提案もあった。
 今回の模擬実験に立ち会った高野伸栄北大大学院工学研究科准教授は「今回は技術提案の審査という『パンドラの箱』を開けた。異論もあるだろうが、箱を開けてこそ希望が見いだされる。総合評価は今後もマイナーチェンジが行われるだろうが、今回のような受発注者が一堂に会する場で、問題意識を共有化しながら、望ましい在り方に向けての協議を今後も続けていきたい」と語った。