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北海道建設新聞社
2010/06/21

【北海道】公共事業削減が企業の安全管理に悪影響−北海道建設新聞社調査

 安全ノウハウの継承に強い不安―。北海道建設新聞社は、全道の建設企業安全指導者を対象に、各企業の安全管理体制についてアンケート調査を行った。公共事業費の大幅削減が企業の安全管理体制に悪影響を与えているか、との質問に対し9割近くが「影響している」と回答。組織の弱体化と人材育成が困難となり、安全ノウハウの継承に強い不安を覚えている実態が明らかになった。また、発注者に対しては、安全経費の適切な計上を求める声が最も多く、次いで工事成績における安全対策の適切な評価を要望する声が続いている。
 今回の調査は、2010年度の公共事業費が大幅に削減され、各企業の経営環境が極めて厳しいものとなる中、安全管理体制への影響や、公共事業における安全経費の計上、コスモスやリスクアセスメントの導入状況とその課題など16問を設定し、回答してもらった。全体の56%に相当する101社から回答を得た。
 公共事業費削減が、企業の組織や人材などの安全管理体制に与える悪影響については「大きく影響している」との回答が約4割に達し、「やや影響」との答えと合わせると、全体の84%に上っている。
 「影響がある」と回答した企業に、その分野を聞いたところ、スタッフの減少や担当部署の格下げなど「組織面での弱体化」との回答が45%とほぼ半数に達し、未経験者の配置や育成費用の削減など「安全ノウハウの未継承」と「現場における経費削減」がともに全体の約4分の1を占めた。
 公共事業における安全経費の計上は「国、自治体ともに不適切」との答えが8割近くに上った。適切な計上がされていない場合の対応としては、一般管理費の圧縮を選択する企業が過半数を占めるなど、本業の利益を削減し、安全経費に充てている実態が浮き彫りとなった。
 労働局や建災防が推奨している建設業労働安全衛生マネジメントシステム(コスモス)などの導入に関しては、導入済みは27%(27社)、「導入を準備中」「導入を検討中」も合わせて全体の3分の1となったが、「導入は予定せず」も4割近くに達している。
 コスモスなどの導入効果については「大きな効果がある」との回答が約2割、「多少効果あり」も全体の3分の2を占めている。導入済みの企業に限定すると「効果大」は41%に達し、「多少の効果」との解答と合わせ、ほぼすべての企業が導入の効果を実感している。一方、導入を予定していない企業についても、約8割が「効果あり」と回答している。
 導入の課題に関しては経費の増大が3割と最も多く、継続や現場での定着、人材不足が各2割を占めた。導入済み企業が上げた課題の最多は「現場での定着」(34%)。「人材不足」は11%にとどまったが、導入予定なし企業では「経費」が32%、これに「人材不足」が26%で続き、導入をためらう企業が経費と人材を問題視している状況が明らかになった。
 リスクアセスメントについては、約9割の企業が「導入済み」。効果に関しても、肯定的な評価が97%に達した。課題では「現場での定着」が過半数を占めたが、「問題なし」との回答も13%に上っている。
 安全管理全般への質問で、労災防止に向けて企業の最も効果的な取り組みを聞いたところ、「安全管理者や現場代理人の再教育などによる人的充実」と回答した企業が48%と最も多く、これに「専門工事業界に対する効果的教育」(29%)、「コスモス導入など元請け企業の組織的対応」(19%)と続いた。
 発注者に対する要望では「安全経費の適切な計上」が41%と最多。続いて「工事成績評定における安全対策の適切な評価」が32%、「労災の度合いに応じた適切な対応」が18%となっている。国などの総合評価方式では、工事成績が加点に大きく影響することから、工事成績評定で大きな要素となる安全対策に対する感心の高さを示す結果となった。
 安全全般に関する要望・意見では「リスクアセスメントは施工時だけではなく、設計段階でも実施の必要があるのでは」「安全対策は本体工事と切り離し、受注決定後の打ち合わせで追加発注すべき」―など、発注者側により効果的な安全対策を求める声が挙がっている。
 また「工事量減少や低価格入札により、工事原価の採算割れが生じ、非生産部門である安全管理担当部署の人員減、予算減を引き起こしている。そしてこれらが災害発生に結び付くといった、負のスパイラルに陥る懸念がある」「法規制の重層化、厳格化そしてシステム化により、現場の負担が著しく増大している。『災害、事故を起こさない』という基準をベースとしたシンプル化あるいは棚卸しが必要な時期ではないか」との指摘・提言も出ている。