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北海道建設新聞社
2010/08/17

【北海道】低賃金で技能者流出−型枠大工不足に現場悲鳴 

 道内で型枠大工の不足がレッドゾーン≠ノ突入し、専門工事業者が技能者のやりくりに悲鳴を上げている。建築工事量が減少する以上に業界に見切りを付けた技能者の流出が著しく、最も繁忙となる9月をピークに「どの現場にも職人を満足に回せなくなり、工期を守れない現場が相次ぐのではないか」(業界関係者)と危機感を募らせている。北海道建設躯体工事業協同組合は「賃金の適正化など抜本的な解決がない限り、この問題は続く」と語り、低価格受注がもたらす「負の連鎖」が最悪のシナリオを描き始めている。

 専門工事業者でつくる建設産業専門団体北海道地区連合会が開いた6月の通常総会。前理事長の佐藤孝氏は「単価の切り下げや指し値が横行している。このままでは建設現場が崩壊する」と警鐘を鳴らした。
 元請けの現場に型枠大工を送り出した型枠工事会社の責任者が朝からひっきりなしに携帯電話で話す。
 その若い責任者は「職人が足りないという苦情。だが、いくら集めても限界がある。職人のやりくりがつかず、現場はパンク寸前」と声を潜める。
 同業他社も技能者の不足に頭を悩ませている。「繁忙期となるお盆明けから9月にかけては、工事が止まったり、工期を守れない現場が相次ぐのではないか。だが、どうしようもない段階にきている」と開き直る。
 まさに目が回るような忙しさだが、業界にとっては手放しで喜べない事態だ。なぜなら、万一工期が遅れるようなことになれば、元請けだけでなく下請けにとっても信用問題や賠償問題に発展しかねないからだ。
 躯体協の会員企業アンケート調査によると、全道の型枠大工の人数は2010年6月現在で、直用と2次、3次下請けを含めて2557人。人数は減少の一途をたどり3年前の07年より28.7%、1030人減少した。
 その一方、年間施工数量は10年6月現在で527万m²にとどまり、07年に比べて37%、310万m²減少している。
 特に札幌地区だけを見ると、人数は33.3%減の1747人、施工数量は43.2%減の367万m²と大きな落ち込み傾向にある。
 流出の背景について、沢田信彦理事長は「冬期間に仕事がなくなるという特殊事情と併せ、工事量の減少によって本道の職人が稼げなくなった。年収は生活がやっとの平均約200万円。寝ないで走るトラックドライバーでも月収30万円となれば、転職の対象となる」と打ち明ける。
 技能者の年齢構成を見ると、相変わらず20代若者の定着率が低いものの、まだ働き盛りの50代が急速に業界を去り始め、ベテランの60代が大量に残るという、いびつな現象が出現している。
 工事量の激減と受注競争の激化で賃金が下がり、その結果技能者が離れ、瞬間的に忙しいわりには収入が少なく、不安定な生活を嫌い、さらに技能者離れが進むという格好だ。
 その上「分譲マンションが枯渇し、工事再開の5月に継続工事がなく1カ月ずれて工事が始まる。そうなると9月に工事が集中する。逆に官庁の建築工事は冬期間の休止が当たり前となり、職人が行き場を失っている。負のスパイラルが渦巻き、加速している」(業界関係者)という。
 沢田理事長は「放っておくとこの状況はずっと続く。複合的な問題であり、全体で危機感を共有し、連携して立ち向かわなければ解決できない」と呼び掛けている。