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北海道建設新聞社
2010/10/27

【北海道】国交省北海道局存続・強化を―道内市町村長アンケート結果

 日本の持続的発展のために国交省北海道局は不可欠―。北海道建設新聞などが加盟する北海道建設記者会は、道内179市町村長に対して、北海道局存続に関するアンケート調査を実施した。局の定数問題などで北海道局の廃止が決定することに対しては96%の首長が「納得できない。反対」と回答。北海道開発体制の必要性では「維持・強化」が96%を占めた。北海道局に関しては、各地の経済団体が存続を決議し、高橋はるみ知事も20日の記者会見で「北海道局の存続が道自身の強い主張だ」と発言している。今回のアンケート結果により、北海道の総意が北海道局存続であることがあらためて明確となった。
 今回のアンケート調査は、国土交通省の2011年度組織改正に際して、局の定数問題などから、北海道局の廃止・格下げの可能性が高まる中、同局の廃止・格下げが北海道開発体制の急激な弱体化をもたらし、北海道特例や一括計上権などの近い時期での廃止が濃厚となる可能性を指摘した上で、現状への認識と北海道が日本の課題解決のために果たす役割や、それを支える北海道開発の意義、そして北海道局の存廃についての考えなど、自由意見を含め計7問を設定した。
 10月上旬に市町村長あてにアンケート用紙を送付。26日までに96%に相当する171市町村長から回答を得た。振興局管内別に見ると、石狩、後志、上川、留萌、日高、十勝、根室は100%の回答率だった。
 質問1では、国際局新設に伴う局の定数問題で、道局存続が非常に厳しい状況になっていることの認識を聞き、81%が「知っている」と回答。「知らなかった」との答えは15%だった。質問2では、北海道開発体制の成果や今後果たすべき役割などを検証せずに、国交省の組織再編と局の定数問題で、北海道局の廃止・格下げが決定する可能性を指摘し、見解を尋ねたが「納得できない。反対」が96%を占め「納得できる。賛成」はゼロだった。
 また質問3の「北海道局の廃止・格下げは、北海道を特別扱いする必要はない、という中央の意思の表れとも考えられるが、特別扱いする必要はないとの指摘についてどう考えるか」に対しても、質問2と同様の回答傾向となった。
 質問4では、食料や観光、環境・エネルギーなど、日本の課題解決と国際競争力強化のための北海道の役割を聞き、すべての市町村長が「重要な役割を担う」と回答。この点を踏まえて、質問5では、北海道が日本の課題解決などの役割を果たすために、北海道局など北海道開発体制の必要性を尋ねた。57%が「必要であり今後も維持すべき」と回答。「必要であり今後は強化すべき」も66市町村長と約4割を占めた。「必要性は薄い・必要ない」との回答はゼロだった。
 質問6では、北海道局の存廃は、北海道開発体制全体にかかわる問題であり、結果として地域の経済と雇用など多方面に影響が生じることが想定される、と指摘した上で、存廃についての考えを質問。97%が「廃止・格下げに反対」と回答した。
 自由意見では「北海道の役割は今後も大きく、単なる北海道局の存廃ということにとらわれずに北海道の役割、重要性を議論することが重要」(北良治奈井江町長)、「国は、求める北海道の役割を明確にし、それを果たすためには現状の社会基盤整備の水準で良いのか、このことをしっかりと検証した上で存廃を考えるべき」(飴谷長蔵白老町長)―など、北海道の役割と可能性を検証した上で、北海道開発体制の在り方を議論すべき、との意見が数多く見られた。
 また「わが国が持続的に発展していく上で重要な課題となっている食料の安定供給や自然環境の保全、国内外の観光交流促進に対し、北海道の果たすべき役割は極めて大きい。課題克服に向けた基盤整備もまだまだ道半ばであることから、北海道局の使命は終えるどころか、今後さらに重要性が増すものと考えられる」(宮川良一紋別市長)、「北海道局が廃局となれば、今後の日本の中の北海道の重要性(環境・農業・水産)を見通した戦略をどこが担うのかが問題」(桜庭誠二月形町長)など、国の成長戦略を念頭に、その実現に寄与する北海道開発と北海道局の存在意義を指摘する意見も出ていた。
 今回のアンケート結果と意見について、小磯修二釧路公立大学長は「数字はほぼ予想された結果だが、今回の問題を契機に北海道開発政策の在り方を議論し、地元からの提案を目指していく機運につなげてほしい」とコメント。一方で、特例と一括計上さえ残ればいい、という意見が一部に見られる点について「少し厳しい見方かもしれないが、一括計上などの機能を安定的に維持していくためには、それを支える権限ある組織が不可欠。今回の北海道局問題の本質がそこにあることへの認識がないのは残念だ」と指摘している。
 また、山崎幹根北大公共政策大学院教授は「先の見えない経済状況、公共事業の方向性の中、北海道の既得権ともいえる開発体制の維持が多数意見となったのは自然の成り行きだろう」と述べ、「北海道の方向性を考え、制度設計することができるのは、中央の政治家や官僚ではなく、北海道に根差している地域の関係者だ。今後、北海道局、さらには開発体制の意義を内外に示すような政策づくりをしていくと同時に、現行の問題点を変えていくことにも大胆に着手すべきだ。北海道のあるべき開発の仕組みは北海道の側から提案していかなければならない」と、北海道開発施策の進化に向けた北海道自らの積極的な取り組みを求めている。