トップページお知らせ >地方ニュース

お知らせ

地方ニュース

北海道建設新聞社
2011/02/02

【北海道】豪雪で除排雪パンク寸前―生活支える道路を直撃 

 背丈をはるかに上回る雪山、延々と続く渋滞の列―。正月明けから集中的に降り続いた大雪の影響で、北海道の石狩地方や留萌・空知地方を中心に混乱が生じ、命と暮らしを支える道路が危機的状況に陥った。道路の維持管理費が削減される中、異常気象の突発的な豪雪≠ヨの対応は十分なのか。周辺をリポートする。

 ◆石狩から札幌まで2時間半

 大雪が連日降った1月中旬、札幌市中心部に通勤する団体職員は「バスとJRは2倍以上の時間がかかり、帰りのバスは30分待たされて定員オーバー」と、うんざり顔で語った。
 全道各地とも、年末年始は雪が少なく穏やかな正月を過ごした。しかし、間もなく寒気を伴う低気圧が日本海側に接近し、天候が急変する。
 羽幌は6日、1日当たりの降雪量が35cmを記録し、雪深さで知られる岩見沢でも8日から20―30cmの降雪が断続的に襲った。札幌も例年にない大雪が降り続いた。
 降り積もる雪に除排雪が追い付かず、道路は2車線が1車線に減少。緊急車両はスピードを落とし、ダンプやトラック、マイカーのドライバーがいらいらを募らせた。
 北海道開発局はこの大雪による渋滞で車両の平均スピードが最大で約4割遅くなったと調査結果をまとめた。しかし、市民の実感はそれをはるかに上回り、生活を直撃している。
 石狩市内から札幌市内にマイカーで通う建設会社の社員は「最もひどい日で通勤に2時間半もかかった」。灯油配送会社では「渋滞で時間ロスが起き、残業続きだった」と対応に追われた。
 生コン会社は「時間ロスを補うための増車がコストアップになった」と言い、建設資材の運送会社は「のろのろ運転でアイドリング時間が長くなると燃費が悪くなる。石油も値上がりし頭が痛い」と悩む。
 建築途中のビル屋上には雪がうずたかく降り積もった。とび・土工の建設会社は「養生屋根なので40cmになるとクレーンで雪下ろしを行う。工事前のひと仕事と作業員確保が大変」と雪雲をにらみつけた。
 道財務局の渥美恭弘局長は1月の定例記者会見で「1月の大雪は景気にプラスとマイナスの影響をもたらした」と語った。
 自動車ディーラーの敷地内除雪をシーズン契約する解体会社は「月50万円の契約が1月だけで金額が2倍になった」と思わぬ収入に驚き、個人宅の除雪を請け負う除雪会社は「この大雪で会社の電話は鳴りっぱなし。社員、バイトはフル稼働」と社長。道内大手のホームセンターを訪れると、昨年末には店頭にずらりと並んでいた手押し型の除雪器具が数えるほどになっている。「年明けから急に売れはじめ、店頭にあるだけで終わり。在庫はない。雪の多い北区や東区には他の店から回している。異常な売れ行きだ」と語る。
 大手運送会社は「慣れているので支障はない」と通常通りの業務をこなし、都市間バスの運行会社は「事前に遅れをアナウンスしたので、乗客には理解してもらった」と乗り切ったものの、いずれも、あと少し降雪が続けば混乱は避けられなかったとの認識だ。
 札幌市消防本部によると、消火に向かう消防車の所要時間は平均5・8分(1月1―21日)と前年1月と同じ。だが、患者やけが人を運ぶ救急車は平均7・2分(同)かかり、前年1月に比べて0・7分遅れ。「雪道の影響が大きいが、病院に着く前に容態が急変したという報告はない」と除雪や排雪の素早い対応に願いを込める。

 ◆オペレーター43時間休みなし

 羽幌で道路除雪を請け負う建設会社は「こんなすごい雪は初めて。動くドーザの屋根にもどんどん雪が積もり、風速26m近くの猛吹雪になった。オペレーターは43時間休みなく働いた」と当時の豪雪を振り返る。この業者は、今回の豪雪について「この地方は風が強く、雪が降っても風に流されて積もることはさほどなかったが、ことしはまったく違う」と、ことしの異常気象に驚く。
 札幌市内の除雪業者は「除雪基準が引き下げられたが、出動は控えていない。雪がどんどん降れば『今出ないと大変だ』と役所に掛け合った」と語るが、今後再び豪雪に見舞われた場合の予算ショートを危惧している。
 ゲリラ豪雪≠ノ襲われた留萌管内のある除雪業者は「排雪基準の見直しにより、歩道に一部雪を残すことになったが、留萌開建の判断で、全て排雪した。住民からも『本当に助かった』という声を聞いている」と開建の柔軟な対応を歓迎する。
 札幌市内で国道除雪を担当する建設会社は「1日に4―5回出動した日もあった。苦情は平年より多い。市街地の排雪は維持費の削減で1回かもしれない」と見通しを語り、江別市内を担当する建設会社は「排雪は当初から1回の予定。大雪が降り続ければ間に合わない」と不安を語る。
 開発局幹部は「1月は役所も企業も必死に対応した。今シーズンは12月の降雪が少なかったので、予算的にはまだ大丈夫だが、再び大雪があれば厳しい」と頭を痛めている。
 経済界の関係者は「冷え切った道内の景気浮揚を考えれば、公共事業を削るべきではないし、まして住民生活と経済に直結する除雪費用を減らすべきではない」と政府の対応に疑問を投げ掛けている。