静岡県は、沼川流域の浸水被害軽減に向けた新放水路の整備について、2012年度の事業化を目指す方針を明らかにした。JRから海岸までの区間(延長約700b)の施工を先行し、並行して上流区間の用地買収などを進める方針。これに先立ち11年度、沼川の河川整備計画を策定する。6月30日に開かれた県議会6月定例会で、櫻町宏毅氏(民主党・ふじのくに県議団)の質問に森山誠二交通基盤部長が答えた。
沼川の流域は、雨水が愛鷹南麓の急斜面を短時間に下り、山すそに広がる低地帯に至る。低地帯は海岸に沿って非常に緩い勾配となっているほか、洪水の海への出口が限られているため、浸水被害が多発している。一方、流域の市街化が進み河道の拡幅や掘削が困難で、ポンプを大きくして排水することも地形上難しい。
そこで、高橋川から沼川を経て駿河湾(沼津市青野〜大塚)に放流する延長約2400bの放水路を建設する計画。これまでに、国道1号からJR東海道線までの区間の用地買収を完了、開水路(掘割)部を暫定掘削し、1万5000立方bの容量の暫定調整池として活用している。
櫻町氏は、県内で最も浸水被害が多発している沼川流域の治水対策について、「対症療法的な措置ではなく、抜本的な対策が必要ではないか」と指摘し、新放水路の整備の見通しを尋ねた。
これに対し森山部長は、「多額の事業費や、(放水路の吐口が沿岸漂砂を阻害することなどによる)海岸侵食や環境影響に配慮する必要があったが、これまでの調査や検討の結果から事業化が可能と判断した」と述べた上で、「新放水路の12年度の事業着手に向け、11年度中に河川整備計画を策定する」との方針を明らかにした。
想定する降雨量を安全に流すための具体的な取り組みを示す河川整備計画については、沿川の住民や有識者、沼津市などと構成する流域委員会で策定作業を進めており、この中に大まかな構造などを含めた新放水路の計画を盛り込む。現段階で、JR東海道線から下流部を暗渠(トンネル)、上流部を掘割で構築することを想定している。
11年度中にまとめる河川整備計画を踏まえ、12年度に新放水路の建設を事業化。下流側から詳細な調査や設計を順次行う。これらの作業と並行して上流側の用地買収などを進めていく方針だ。
(2011/7/4)
建通新聞社 静岡支社