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北海道建設新聞社
2011/07/19

【北海道】被災地復興で道内ゼネコン出番なし−現地とパイプなく

 東日本大震災の被災地で、復旧・復興に向けてがれき処理や仮設住宅などの工事が活発化している。東北地方と古くから付き合いがある本道の一部の地場ゼネコンや専門工事会社が現地入りしているが、大半の建設会社は現地とのパイプがなく、向こうの動きをうかがうばかり。被災地への集中投資が進む見通しの中、北海道は疲労の色を濃くし、焦りの色は隠せない。
 北海道建設業協会の坂敏弘会長代行は2日、民主党北海道の政策懇談会で「国難といえる緊急事態を乗り切るには、被災地を支援する北海道の景気回復なくして実現しない」と語り、大幅な公共投資の増額を要請した。
 今回の大震災では、本道も十勝管内や釧路、函館などで漁港や養殖施設などが被害を受けている。岩手や宮城、福島県と同じ被災地として支援の準備は進めるものの、長引く景気低迷が複雑に浸透し、経済基盤が揺らぎ始めている。
 道労働局職業安定課によると、被災地に出向く人材を求める震災復興関連求人は7月14日現在、73件(1862人)。がれき処理と仮設住宅の求人が最も多く、下請け建設会社がとび・土工や重機オペレーター、配管工、建築大工などを求めている。
 沿岸部に比べて被害が小さかった内陸部の市街地では、電気や水道などのライフラインが復旧してから、被災したオフィスビルや商業施設、病院、住宅など建物の修繕、補強工事が急ピッチで進む。
 大手ゼネコンなどは本社・支店から技術者を100人規模で集め、被災地に派遣している。あるゼネコンは「やがて始まる復旧・復興工事に向けて、民間のリニューアル工事を行っている」と語った。
 「重宝がられている」と話すのは、札幌市内の内装工事会社。天井や床の修繕に各社が内装工を送り出している。本来は修繕に入る地元の大工が仮設住宅に集中し、市街地のリフォーム現場は人材不足に陥り、建物の施工者であるゼネコンが呼び寄せた。
 しかし沿岸部のがれき処理は、住民の生活再建を優先するため、県内業者が引き受けている。地元の建設業団体は「地元の企業で間に合っている。震災以降は施工中の公共工事が中止になり、各社とも資金繰りに困っていた」と窮状を訴える。
 未曽有の被害が象徴するようにトラブルも浮上している。がれき処理の下請けで札幌市内から現地入りした専門工事会社は「宿舎が用意できない」などの理由で門前払いされてから、再三引き延ばされたあげく「県外からの応援は要らない」と断られた。
 札幌に本社を置くゼネコンは、東北支店を拠点に対策室を設置し、民間工事を中心に受注活動に専念している。しかし一方、大半の本道ゼネコンは「東北から要請がないので出向きようがない」とあきらめ顔で語り、被災地とのパイプがない現実を痛感している。
 東北の関連会社を通じて公共施設の応急復旧に携わった道内の別のゼネコンは「東北は地元と大手が激しくせめぎ合っている。食い込むのは難しいと感じた」と声を潜めて明かした。
 東北への進出を検討した道内のゼネコンは「片手間ではできないし、本道と東北の受注を両にらみするほど経営的に余裕はない」と頭を悩ませている。公共事業の削減で本道の受注環境が激変し、大震災の影響でさらに見通しがつかない中、東北を支えるはずの北海道は沈没の危機にある。