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建設経済新聞社
2011/07/28

【京都】鈴塚団地基本計画等の提案概要 ワークショップ方式を提案 新棟は南・東側にL字型で

 「京都市鈴塚市営住宅基本計画策定委託ただし、新棟(仮称)新築工事他基本計画及び基本設計委託」における受託候補者に選定された阿波設計事務所(京都支店(京都市中京区)/本社(大阪市浪速区))の提案概要が本紙調べで明らかになった。ワークショップの手法を採用することを提案。新棟の建物配置は隣接する学校等への日照を考慮して南・東側に面したL字型とし、集会室を団地の「顔」とすることなどを盛り込んでいる。
 築40年以上を中心に最も古いもので築51年の住棟もある鈴塚市営住宅(京都市伏見区深草鈴塚町)の再生にあたり、市は基本計画(新棟新築工事他基本計画及び基本設計)策定で公募型書類審査方式による受託業者の選定を実施。このほど阿波設計事務所を選定した。施設条件は(ア)建築面積[新棟]約510u、[エレベーター棟]約50u(増築部分)、(イ)延べ面積[新棟]約3100u、[エレベーター棟]約130u(増築部分)、(ウ)階数[新棟]6階建て程度、[エレベーター棟]4階建(2棟)、5階建(8棟及び9棟)、(エ)室内改修検討面積(2棟・8棟・9棟)33・3u(1戸あたり住戸専用面積)、2K等。
 受託候補者に選定された同社の提案によると、ワークショップ(WS)の手法を採用し、入居者・発注者・設計者が一体となって対話しプランを練り上げることを提案した。
 WSの準備段階として、メンバー募集や体制、スケジュールづくりを行い、現入居者に対し団地整備に対するアンケートを実施。入居者の思いを確認し、現在の問題点を抽出。将来像をイメージする。模型や写真を使って具体的にイメージをまとめ、提案内容の検討を深める。施設計画の理解、検討内容のフィードバックを通じて最終的な計画書を策定する。
 WSにおけるテーマとして、〈安全な敷地内動線〉〈防犯性の改善〉〈近隣にも寄与する団地計画〉〈敷地内バリアフリー〉を挙げた。現況の敷地内通路は2・9m〜4・5mで、敷地内の車動線を導入する敷地としては歩者分離が保たれていないため、敷地内に車動線を持たない「駐車場の集約化」や「一方通行動線」を確保する駐車場配置を提案。また中央の南北通路は歩行者専用メイン通路とするなど安全な歩行者動線を確保する。防犯面では、適切な街灯照明の配置、塀や植栽計画などに配慮し、道路から視認性を保ち、死角をつくらない団地計画とする。
 敷地北東角の児童遊園は砂川保育所の園児や近隣の児童が利用することから、年齢別の遊具の配置など特色ある計画とするとともに、コミュニティー形成の場としてふさわしいベンチや木陰の設定など快適な遊園設計を行う。住棟と道路には段差があるため、入居者の高齢化等を踏まえ、住棟だけでなく敷地内通路も連続手すりの設置や滑りにくい舗装、雨水の排水整備など完全バリアフリーを図り、安全な団地計画とする。
 新棟(仮称)における提案では、団地全体が利用しやすい場所に集会室を配置。団地のアクティビティーを街に映し出す視認性の良い場所を選定し団地の顔になるよう計画する。
 西側の市立伏見工業高校、北側の住棟8棟への日照に配慮し建物配置は南・東側に面したL字型計画とするとともに、階高設定も日照条件を考慮して決定する。
 南側道路への圧迫感を軽減するため、壁手すり、アルミ手すり、ガラス手すりなど壁面をリズミカルに分けるバルコニーデザインとする。外壁の色彩は団地内他棟と統一し、アースカラーの淡色を基調に団地全体でまとまりのある色彩を採用する。解体される既存住棟3棟〜7棟の街並みを継承するため、地域住民が親しみを感じる勾配屋根形状とする。
 社会ストックとして柔軟に使えるよう、小面積住戸間(40〜45u)の壁は乾式間仕切り壁を採用し、将来改修により2戸一化も可能な計画とする。子育て世代住戸は可動間仕切り壁とし、使い勝手を変えられるようにする。
 階段・廊下は極力使われ易い位置に設け、明るい階段・廊下とし、防犯性を高める。バルコニーから廊下側への間口通風を確保、自然風が抜けるよう住戸設計を行う(居室間仕切り壁への通風ガラリや通風バイパスの確保、換気框付き建具)。各居室は自立性を高めつつ、室内動線を簡略化した計画とし、水まわりの集約化、2WAY動線など使い易い住戸設計とする。
 構造計画は予算に配慮しながら所要の性能を満たし、エキスパンション・ジョイントの形式検討、構造種別・形式の検討を行い、安心安全な住棟計画を行う。
 基本設計段階で詳細な配管経路を検討し階高や構造仮定断面など実施設計での変更を避ける基本計画を行うとともに、設備盛り替え経路やメンテナンス用の掃除口の確保など維持管理に配慮する。
 サステイナブル(持続可能)な市営住宅を目指し、複層ガラスの採用や断熱機種の選定など予算に配慮しながらできる限り環境配慮に努める。
      ◇      
 市は23年4月に鈴塚市営住宅団地再生計画を策定。「持続性のあるうるおいとやすらぎのまちづくり」をコンセプトに掲げ、▽無断駐車車両の解消▽多世代居住が可能な団地づくりの視点、住戸の型別供給▽40uタイプの住戸を取り入れた供給計画−などの考え方をまとめた。
 団地再生計画によると、住棟2棟(4階建)・8棟(5階建)・9棟(5階建)の3棟は残し、エレベーター設置や浴室設置、耐震改修で改善する。北東側の住棟1棟(4階建)は除却。南西側の住棟3棟〜7棟(全て2階建)の計5棟、集会所2棟は除却し、その跡地に新棟(41戸収容の6階建×1棟、40u・55u・70uの3タイプの型別供給、集会所は新棟1階の70uタイプ1室を活用)を建設する。このほか、新棟敷地内に12区画程度の駐車場整備を検討することなどを盛り込んでいる。