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建設経済新聞社
2011/07/29

【京都】伏見区久我・久我の杜・羽束師 地域を5つにゾーニング 農地保全と開発の両立めざす

 広大な農地が残る希少な地域で、小規模宅地開発が近年進行し市内でも有数の人口急増エリアである伏見区久我・久我の杜・羽束師地域について、京都市は今後のまちづくりの指針となるビジョンの素案をまとめ、明らかにした。公共交通網の充実、農地の保全・活用などの基本方針を掲げるとともに、地域を住宅系や産業系など5つのゾーンに設定した。
 伏見区久我・久我の杜・羽束師地域は、久我荘園領地等の歴史を有する京都の近郊農園として形成され、昭和25年に京都市に編入。高度成長期以降、民間主導の小規模宅地開発などで農地の急激な宅地化が進展し、市内でも有数の人口増加地域(人口約3万人、約1万世帯)となっており、若い世代も多い。そうした中、交通の不便さ、地域のコミュニティ力の不足などが指摘されてきた。住民代表や学識経験者からなる検討組織で概ね30年間の中長期的な視点に立ったまちづくりの指針として、まちづくりビジョン素案をまとめた。
 素案によると、まちづくりのテーマとして「多世代が住む 緑豊かな誰もが好きになれるまち」を設定。それを実現すべく、5つの基本方針を定めた。主な取り組み方針は、道路交通網の構築、公共交通優先のまちへの転換、交流の場としての農地の活用、活性化につながる土地利用の推進、まちの防災機能の強化など。
 地域は5つにゾーニング。具体的には、主に府道水垂上桂線と外環状線の沿線を「住み続けたい快適な住宅地ゾーン」に設定。農業集落では敷地内の緑や段倉、社寺等を活かした伝統的な集落景観や環境を有する住宅地の維持を目指す。開発住宅地では、既存の居住環境の維持・改善を進めるとともに、コミュニティ活動の活性化を図り、戸建て住宅を中心とした利便性が高く、緑豊かな住宅地の維持を目指す。
 住み続けたい快適な住宅地ゾーンを挟む形となる、東側及び西側地域を「農に親しむ住宅地ゾーン」とし、農地の無秩序な宅地化を抑え、市民農園などとして計画的に保全する。新たな住宅は菜園付き住宅等を誘導し、ゆとりある居住環境の形成を目指す。
 農に親しむ住宅地ゾーンの西側部分と名神高速道路に挟まれた地域は「農と共存する産業・交流ゾーン」に設定。田園景観や背景の山並み等と一体になった眺望景観を活かし、農と共存する産業・交流ゾーンの形成を目指す。
 府道水垂上桂線と外環状線が交差する菱川交差点の南西側の地域は「都市近郊営農ゾーン」に設定。営農環境を総合的に保全・改善するとともに、広大な田園景観の確保を目指す。都市近郊営農ゾーンの北側は「ものづくり産業ゾーン」とし、緑豊かな環境形成を誘導するとともに、先端産業など付加価値の高いものづくりを支える環境の維持・形成を目指す。
 ビジョンの実現に向けて、行政の役割としては、伏見区役所神川出張所の機能充実を図るとともに移転も含めた利便性向上の早期実現や、ビジョンの趣旨を実現する土地利用推進のため都市計画手法等の活用も含めた有効な方策の検討、桂川堤防道路など既存道路の改善による道路機能の強化に取り組む。