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建設経済新聞社
2011/10/04

【京都】新総合資料館の設計コンペ 最優秀作品の飯田案 大小の傾斜屋根を組み合わせ

 京都府は新総合資料館(仮称)公募型設計競技第2次審査について、最優秀作品に飯田善彦氏(株ム田善彦建築工房(横浜市中区))の作品を特定した。
 講評によると、飯田案は、「京都の町のたたずまいを良く読み込み、それに連携するグリッドを平面の基本形とし、低層・分節化し細い鉄骨の骨組みと大小の傾斜屋根を組み合わせた大屋根で、繊細で柔らかい表情を持った外観にまとめ上げている」「屋根は単なる形の上の提案を超えて、環境装置として利用し、現代的に意味のある建築として成立させた。平面計画も、複合化した機能をゾーンで分節化して整理し、中庭を配して、閉鎖的でなく明るい空間にしている」「さらに今後起こりうる機能の進化などに柔軟に対応できる空間構成となっている」「ラチス構造が繁雑に見えることや若干ガラスが多く、視覚上、音響上の懸念が指摘されたが、容易に改良される程度のものである」「今後の京都的現代建築の一つの方向性を示したものとして高い評価を得た」とした。
 9月20日の第2次審査のヒアリングで飯田氏は、〈収蔵品を守る〉〈魅力ある教育環境をつくる〉〈開く〉の3つをテーマに設定しプレゼンテーション。飯田氏は、「収蔵庫は地下に置くことで上部が軽くなる」と説明し、懸念される湿気については「50p空けドライエリアを設ける」という対策を提示。新資料館のシンボルとして設ける大屋根は「5つの角度を持たせる」「光を制御するなどの機能を持たせる」「素材はアルミにする」などと説明した。飯田氏は、「照明なしで本が読めるようにしたい」「できるだけパッシブなエネルギー(自然エネルギー)を使いたい」などと考え方を説明した。飯田案は地下1階が収蔵庫、1階がオープンスペース、2階が府立図書館、3〜4階が府立大学文学部研究室等。
 優秀作品(次点)は平田晃久氏(平田晃久建築設計事務所(東京都港区))の作品。講評では、「BOX状の空間を構造エレメントとして積み上げ、内側にできるドーム状のボイドとBOX内部の空間を巧みに組み合わせ、大小様々な空間を用意した。特に1階に無柱の開架閲覧エリアを配し、利用しやすい総合空間とするなど優れた平面計画になっている」「BOXとBOXの間にできる間隙にガラスのトップライトを組み込み、マッスと光の交錯したユニークな空間をつくり、さらに屋上部に植栽豊かな庭園を用意し、日本建築特有の庭と空間の関係に見立て、京都的空間の提案とした」「以上特化した優れた提案をしながらも、構造上の強い拘束が、平面機能の柔軟な対応を妨げる疑問を持たれたこと、上階に多人数を収容する公開ゼミ室を置き、避難上の問題があることなどについて、審査委員の懸念を払拭できなかった」とした。
 入賞作品は、第2次審査のヒアリングに参加した、金子敬輔氏(エンジンアーキテクツ一級建築士事務所(東京都世田谷区))、武井誠氏(鰍sNA(東京都世田谷区))、丸山剛史氏(HopkinsArchitects(イギリス・ロンドン))。
 コンペは5月20日に公募開始。第1次審査には国外3名を含む106名が応募し、このうち第2次審査に進出する5名を選出。9月20日の第2次審査のヒアリングを経て、最優秀作品と優秀作品を決定した。9月20日の第2次審査は、審査委員長の川ア清京都大学名誉教授(建築家)、井口和起京都府特別参与、建築家の出江寛氏、竹山聖京都大学准教授(建築家)、建築家の藤本壮介氏、山内修一京都府副知事、建築家の山本理顕氏、渡辺信一郎京都府立大学学長の8名で行った。
 新総合資料館(仮称)建設工事は、老朽化等が著しい総合資料館の建替えに伴い、隣接する京都府立大学の文学部や図書館との連携を強化し、新たに「国際京都学センター」を設置するなど、文化や環境、学術の交流・発信拠点として再構築し整備するもの。「教養教育共同化施設(仮称)整備事業」、「植物園再生事業費」とともに北山文化環境ゾーンで計画されている3大事業の目玉事業。
 計画規模はRC造地下1階地上3階建、延約2万4000u程度を想定。新資料館では、資料館と府立大学文学部附属図書館との閲覧提供のワンフロアー化を図る。建物本体建設工事費は税込みで約73億円程度を見込む(電動移動式書棚や集密書架、造り付け家具以外の備品類及び資料館と府立大学文学部附属図書館との機能連携に係るシステム構築費用等は含まない)。
 基本設計・実施設計の履行期間は契約後10ヵ月を予定していることから、10月中に契約したとすると、履行期間は24年8月頃までとなる見通し。そのため、建設工事の着手は早くても、24年度後半以降になるとみられる。
 建設予定地は京都市左京区下鴨半木町の京都市コンサートホールの南側、府立大学農学部付属農場跡地。
 北山文化環境ゾーンでは、北山通から南に抜ける並木道のプロムナード(遊歩道)を将来整備する構想があり、新資料館が開館した後の現・総合資料館の活用も注目されるところ。現・総合資料館は、RC造一部S造地下1階地上4階建、延1万3743・33u(建築面積4501・57u)。将来解体されることになれば大型案件となりそうだ。