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建設経済新聞社
2012/01/18

【京都】京都会館の建物価値継承 検討委員会を1回追加へ 3月中のとりまとめは堅持

 京都会館の建物価値継承に係る検討委員会(石田潤一郎京都工芸繊維大学工芸科学研究科教授)が16日開催され、第1ホール舞台内高さを27mとした理由を市側が説明。基本設計案についての意見交換も行った。まだ検討課題が多く、あと数回の検討が必要とする委員からの意見を踏まえ、市は残り1回としていた検討委員会を1回追加し2回とする意向を示した。ただし3月中に検討委員会としての方針をとりまとめるスケジュールは堅持する考え。
 同検討委員会は、第1ホールの建替えなど再整備する京都会館について、外観デザインなどを23年10月から検討している。第3回検討委員会では、第1ホール舞台内高さを27mとした理由について、「セットが大型化し、京都会館を公演先から除外するケースが増えている」との実態を踏まえ、市は「プロセニアム(舞台間口)高さは利用団体等から12m以上の要望があった。また近年他都市で建設された同規模のホールにおける標準的な高さ」とし、「プロセニアム高さが12mの場合、吊り上げた舞台装置が客席から見えないようにするために必要な高さを確保すること及び同規模ホールの舞台内高さは27m程度が標準的な高さ」とした。市は「この高さを確保することで国内を巡回するような公演が行われる際に支障なく演出が可能」とした。「スノコ裏の作業スペース及び構造体スペース等を考慮すると、建物高さは30m程度になる」と説明した。
 委員からは「こういう公演がしたいから、この高さが必要という具体的な考え方を示してほしい」「市民にわかりやすくシミュレーションが必要」「建物価値を継承するのであれば今の建物から1mでも下げるべき」「何の演目をしたいのかを示すべき。公演はコスト面でシビアになってきており、コストアップになると公演先に選定される際の土俵にも立てない」「京都会館が(公演先の選定で)スルーされないようもう少し高くすべき」などの意見が出た。市は「オペラやバレエもできるようにしたい。現在の標準的な舞台高さは27m程度になる」と考えを説明した。
 香山壽夫建築研究所(東京都文京区)が担当した基本設計案について、市側が〈大庇とその陰影を守る。第1ホールの壁面を継承する〉〈共通ロビーを設け、「抜け」「透明感」を保存する〉〈フライタワーは面を分節し、景観に溶け込むようにデザイン〉〈第1ホール舞台の壁面位置は第2ホールに揃える〉などポイントを説明。既存意匠の継承に関する項目としては、▽大庇(新設第1ホール部分も現況と同位置同形状の大庇を設置)▽RC柱・梁(耐震基準を満たしておらず、耐震壁の平面的配置も問題があり、第2ホールホワイエに耐震ブレース等を設置する必要がある)▽壁・ブリックタイル(タイルの浮きや膨れが見られ、ピンディング、樹脂注入等による落下防止策が必要等)▽スチールサッシ・カーテンウォール(サッシの交換が必要。アルミ等材料への変更も含め検討)▽コンクリートルーバー(撤去の方向で検討中)▽床・ブリックタイル(既存材を利用し、目地詰めによる平滑化検討を行う。バリアフリー化へ対応させる)▽小判型御影石ピンコロ床(「二条通りから冷泉通りへの抜け」である床舗装部分は竣工当初の意匠を回復させる検討をする。現況素材を利用し凹凸の平滑化、バリアフリー化へ対応させる)▽PC手摺(欄干)(三日月の形状を守る等)▽PC階段(会議棟テラスから中庭へ続く階段は高さ3m超のため踊り場の設置が必要。階段そのものの交換、形状変更の必要有り)▽パーライトコンクリートパネル(スプリンクラー等天井設備を追加する必要があり、開口処理が可能か確認が必要。並行して復元保存のコストを確認し、ともに現実性が無い場合は異素材へ交換する)−など示した。
 基本設計案に対する意見交換では、「二条通り〜冷泉通りの抜けが良くなっている」「PC欄干のイメージが消えるのは違和感がある」「2階までガラスがはまるのはどうか」などの意見が出た。
 京都会館再整備の総事業費は概算89億円を見込む。再整備後の京都会館の命名権売却について、市はローム梶i京都市右京区)と23年9月13日に契約を締結した。契約金額は52億5000万円(税込)。期間は新京都会館の開館の日から50年間。