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北海道建設新聞社
2012/02/09

【北海道】筋力補助スーツで長時間作業の負担緩和−研究会が普及啓発へ

 軽労化研究会(会長・田中孝之北大大学院准教授、事務局・スマートサポート内)は、長時間にわたって中腰などの姿勢で作業する負担を、特殊なゴムバンド織物やストレッチ素地などの筋力補助スーツで緩和する「軽労化技術」の普及啓発に務めている。農業分野で実証し、モニターとなった農家が使い勝手や効果を報告。また、全身にまとうタイプの雪かき用の装具も考案。開発済みのUDスコップとともに除雪作業での身体的な負担軽減も提案した。
 同研究会は2011年7月、スマートスーツ研究会を基に産学官で発足。これまでは、ゴム材の弾性張力で筋力を補助するバンド材、センサー、モーターなどで構成した「スマートスーツ」の技術向上を進めてきた。
 さらにこのスーツのほか、腕を上げたまま姿勢の作業を補助するFRP製デバイス「高所作業用スマートスーツ」、前屈姿勢時に腰部の筋負担を軽減する「アシストスーツ」、S字に曲がった除雪用具の「UDスコップ」などを開発。普及に向けて、軽労化技術の認知度を高めるために組織替えした。
 田中会長が提唱する軽労化は、重い荷物を楽に持てるようなサポートではなく、長時間にわたる中腰作業での負担や労力、疲労の軽減を図る技術で「作業着の延長上にある」という。
 セキュア(安全)、サスティナブル(身体機能の維持)、サブリミナル(自然で感覚が鈍らない)の3Sアシストをコンセプトに掲げ、身体機能を低下させない支援を心掛けている。
 労働環境の改善や広域的な産業分野への応用を目的に、同研究会を通じて技術情報・社会基盤などの調査、インターネットやセミナーなどによる普及、技術交流の3つの活動を展開。介護用や農業用だけでなく、用途を競走馬調教用や除雪用にも広げた。
 雪はね用スーツは、胸部や背部、腰部、膝部にかけて装着するコルセット状の機種。下半身はズボンデザインで防寒機能を持たせた。上半身の部材は、張力や装着性を最適化して、左右が異なる仕様に設計。試作品は、肝となる弾力素材に特殊な織り方を施したゴム材を使用したが、「製品化にはコスト面でネックとなるため、似た効果が期待できる別の部材を考えている」(田中会長)とし、メーカーと調整中だ。
 UDスコップは、柄の部分をSの字にデザインした用具。雪をすくい上げる時の深い前屈姿勢を浅くし、雪を体に近い位置ですくうように機能設定した。作業時の腰や背筋にかかる負担を軽くし、雪側に偏る荷重バランスを改善できる。
 農業分野では、モーターやセンサー部材を外したスマートスーツ・ライトで実証した。このスーツは、3次元動作計測と筋骨格動力学シミュレーターを駆使して最適な補助効果を具現化。中腰姿勢による屈伸運動で腰部をサポートし、25%の筋力補助効果が期待できる。張力効果で上半身を引き起こして後背部の筋力をアシスト。おなか回りを引き締めて体幹の安定性が増すという。
 6日に北大構内で開いた「農業+軽労化セミナー」では、モニターとなった北竜町の水稲農家と南幌町のキャベツ生産農家が使い勝手や効果を報告した。改良を重ねて試した結果、軽労化や装着感については上々だった。
 どちらも女性が使い心地を報告したが、装・脱着性を気にする感想が寄せられた。製品化に向けては、会場から「農作物によって作業が異なる」「防汚効果や抗菌性があった方が良い」「フリーサイズ化は可能か」などの意見が出た。