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建通新聞社(中部)
2012/08/08

【愛知】広がるかPFI 愛知県内の導入状況は?

 政府は公共施設の整備・運営について、PFI事業の導入が可能か事前に検討するように国や地方自治体に義務付ける。1日に開かれた民間資金等活用事業推進会議(会長・野田佳彦首相)が示したもので、2014年度の予算編成から導入する。7月31日に閣議決定された「日本再生戦略」では、PFI事業の市場規模を20年度までに10兆円以上にする目標を掲げており、愛知県内でも今後PFIが広がる可能性がある。
 愛知県はこれまで、森林公園のゴルフ場施設整備(尾張旭市)、産業労働センターウインクあいちの整備・運営(名古屋市中村区)にPFIを導入した。また企業庁の水道事業で、愛知用水地域と三河地域の浄水場の排水処理施設にPFIを導入した。
 現在は尾張地域の尾張西部浄水場(稲沢市祖父江町祖父江柳原86)と犬山浄水場(犬山市犬山字東洞15)の排水処理施設でPFIの導入を検討している。浄水処理に直接影響を与えない汚泥の脱水処理から発生土の有効利用間までの工程にPFIを導入する方針だ。具体的な実施年度は、今後決める。
 豊川浄化センター(豊橋市新西浜町1ノ3)では、下水汚泥を利用したバイオガス精製設備の導入を検討している。官民連携(PPP)による事業化を前提にしているため、12年度にPFIやDBOなど事業手法の検討を進める。民間企業にアンケートを実施し、事業化を前提とした4システムを抽出。現在の汚泥処理よりコストが安くなり、かつCO2排出量も減らすことができることを確認した。
 名古屋市は、循環型社会対応住宅「エコビレッジ志段味」の整備、ごみ処理施設の北名古屋工場(仮称)の整備、小中学校の普通教室への冷房整備について、PFIの導入を検討している。
 エコビレッジ志段味は、守山区下志段味地区に建設するもので、第1工区はすでに完成。残る第2工区と第3工区についてPFIの導入可能性を検討する。当初は、第2・3工区合わせて126戸を建設する計画だったが、現在は地域優良賃貸住宅15〜30戸を建設する方針だ。
 北名古屋工場は、名古屋市と北名古屋衛生組合が共同で、同組合の環境美化センターの敷地を拡張して建設する。所在地は北名古屋市二子四反地。12年度は基本計画の策定と環境影響評価方法書の作成を行う。PFIによる整備手法と事業スキームの策定業務を8月中に委託する。
 小中学校の普通教室の冷房は、現在未整備の小学校223校4434室、中学校93校1740室に整備する。PFIのほか、直接施工やリース方式も検討する。11年度に開かれた教育子ども委員会は、冷房の導入費について、直接施工が約171億円、PFIが123億円と試算した。
 犬山市などが進めている尾張北部地域ごみ焼却処理広域化事業でもPFIの導入を検討しており、12年度に導入可能性調査を委託する方針だ。今後、犬山市、江南市、扶桑町、大口町の2市2町で一部事務組合を設立し、新ごみ処理施設を建設する。18年度の稼働開始を目指す。建設地は犬山市字喜六屋敷。
 岡崎市は、火葬場の建て替えにPFIを導入する。13年度に事業者を公募・選定し、16年度の供用開始を目指す。既存の待合棟の一部を解体し、駐車場を含めたエリアに新斎場を建設する。建設事業費は35億5400万円を見込む。所在地は岡崎市才栗町字佐世保田1ノ3。
 安城市は、JR安城駅南側の更生病院跡地で計画している「中心市街地拠点施設」の整備にPFIの導入を検討する。基本計画では、図書館(延べ約8100平方b)と、スポーツクラブや医科・歯科診療所などの民間施設(延べ3000〜8000平方b)を複合して建設する案を示した。今後、具体的な事業スケジュールや手法をまとめ、9月にパブリックコメントを実施する予定だ。
 PFIとPPPの普及啓発活動に取り組む中部PFI/PPP研究会の加納白一事務局長は、PFIの普及状況について「各自治体とも少しずつ実績を積み上げているが、ここにきて小休止状態になっている。しかし財政が厳しい自治体は、民間活力を活用する手法に取り組まざるを得ないだろう」と話す。DBOや包括的民間委託など、PFIと類似した事業方式も含め、今後少しずつ広がっていくとみている。

提供:建通新聞社