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日本工業経済新聞社(群馬)
2013/05/15

【群馬】県議会の須藤産経土木常任委員長へインタビュー

 昨年末の政権交代を機に、大型補正予算の編成や公共工事設計労務単価の上昇など建設業への風が大きく変わりつつある。こうした中、県議会産経土木常任委員会では業界の現状や今後を見据え、県県土整備部の施策などを方向付けするとともに、下降し続ける労務単価の改善に向けた意見書を政府や国へ発議するなど活発な提言を行っている。そこで、本紙は産経土木常任委員会を牽引する須藤和臣委員長へ緊急インタビューを敢行。大型補正に対する県執行部側の対応や労務単価の上昇、将来に向けた建設業のあり方などを聞いた。

 −産経土木常任委員長として、公共事業費の増大に伴う県執行部側の対応をどう見ているのか。
 須藤 県土整備部は技術系の職員が多く、堅実に仕事をこなす印象を持っている。今回の安倍政権の大型補正予算に対しても大澤知事の指示のもと、全国トップクラスの予算要望を行った。その結果、対前年度比約1・5倍の当初予算を組むことができた。7つの交通軸構想のもと、すでに用地買収を進めていたのも運が良かった。公共事業費の増大は疲弊しつつあった県内建設業に良い影響を与えるとともに、地方経済の活性化に寄与するものと考える。一方、県土整備部においては『はばたけ群馬・県土整備プラン2013−2022』を新たに策定した。これは10年計画である前プランを5年の半ばで見直し、さらに10年計画とするなど労作だったと思う。(プランには)完成年度が明示されることで関係者の共通認識が生まれ、無駄の無い、効率的な事業が進捗していくものと期待している。
 −ばらまき批判とともに、今回の公共事業の大幅増は本年度限りといった冷ややかな声もある。業界には一過性のものではなく、継続した投資が必要と思うが。
 須藤 政権交代もあり、まずは景気対策という面から大型補正予算が組まれた側面もあるかと思う。しかし、金融政策など他のアベノミクスの政策と合わせ、株価も上昇し、円安へと誘導され、景気回復の兆しが出てきた。景気回復が軌道に乗れば税収も上がる。地方都市では、いまだ社会資本が不足しており、継続的な投資が必要である。そうしたニーズに対応できるよう、安定的な予算確保が求められていると思う。来年度以降はアップダウンの激しい予算編成ではなく、業界全体が『巡航速度』で走れるような予算編成が望ましいのではないか。
 −政府による国土強靱化法の提出が今後見込まれるが、これによって本当に建設業は潤うのか。
 須藤 誤解のないように申し上げるが、国土強靱化法は建設業を潤すことが目的ではないと考える。その基本理念は◇一極集中の是正◇複数国土軸の形成◇国家社会機能の代替性の確保−などが第一の柱であると理解する。一極集中した都市機能を地方に分散すべく、まずは地震のリスクが比較的少ないと言われる群馬県がその役割を果たすべく、今こそ国に対してアピールすべきではないか。さらに基本理念の第二の柱は大規模災害の未然防止や発生時の被害拡大の防止であり、こうした取り組みはソフト、ハード両面から必要である。最近、国土地理院で明治時代前期の地図が公表されたが、そこにはかつての沼や川が記されている。近代化の中で埋め立てられ、住宅などが立地しているが、そうした地域は大地震の際、液状化などが発生しやすい。自然環境と共生する、しなやかな国土強靱化が求められている。一方で、中央自動車道笹子トンネルの天井崩落事故に見られるように1970年代ごろから建設されたトンネル、道路、橋梁などの老朽化の問題が今後出てくる。群馬県においても自然災害対策やインフラの老朽化対策を含め、都道府県強靱化計画の策定が義務付けられてくると思うが、事業執行の際には建設業に頼るところは大である。こうした結果として潤うこともあるのではないか。
 −労務単価などの改善を求める意見書を発議したが、その真意をお聞かせいただきたい。そして実際、2013年度の労務単価が発表され、全国平均で15%上昇したことに対しては。
 須藤 昨年秋の自民党政調会(産経土木部会)において、各種関係団体より政策要望に関するヒアリングを行ったが、その際に鉄筋業の関係者から「今の労務単価では若い方々を新たに雇い、育てることは困難」だと訴えられた。また、ことしに入って建設業関係団体から自民党社会資本整備議連に対しても労務単価の見直しに関する要望を頂いた。機運は熟し、産経土木常任委員会にて国へ意見書発議の運びとなった。国への意見書提出後、全国平均で15%の労務単価の上昇が公表され、群馬県でも平均して17%を超える上昇となった。下がり続けてきた労務単価を反転させることができたことは成果であり、群馬県がその先鞭をつけることができたことに意義を感じる。ただし、今回の上昇幅は社会保険料などの上乗せであり、県議会が求めるところの構造的な改善までには至っていないため、今後より一層の改善を求めたい。
 −魅力ある産業として存続するためには、今後の建設業はどうあるべきか。
 須藤 従来、建設業に求められたものは土木技術や建築技術を駆使した社会資本整備だった。加えて、近年は環境技術や都市工学といったニーズも出てきており、こうした分野の対応ができれば建設業の魅力はさらに高まると思う。また、災害時などの緊急的な対応にも期待がかかる。イギリスに『もっとも信頼できるのは、大地の子である』といったことわざがある。本来は農業者を意味する言葉であるが、わたしの実感から申し上げれば、この言葉は建設業従事者にも当てはまる。日本は地震など災害で悩まされる国であるが、その分、土木・建築技術は世界最高水準である。自信と誇りを持って事業に携わっていただきたい。