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建通新聞社(神奈川)
2014/03/10

【神奈川】神奈川県公契約に関する協議会 報告書案をまとめる 最低制限価格率見直しなど検討課題指摘 公契約に関しては両論併記

 神奈川県の「公契約に関する協議会」(会長・小池治横浜国立大学大学院教授)は10日、第6回協議会を開き、協議会の報告書案をまとめた。今後、県が検討すべき課題として最低制限価格率などの入札制度の見直し検討、賃金実態調査の継続と蓄積などを指摘。公契約導入に関する委員の意見は、「導入に積極的」なものと、「条例の効果を疑問視する」ものの両方があり、「意見の一致は見られなかった」として、両方の声を併記した。
 協議会の開催は今回が最終。報告書案に対する意見を参考に、事務局と小池会長が原案を策定。これを委員が確認した後、3月末までに正式な報告書として県に提出する。県側は、「報告書を真摯(しんし)に受け止め、改善に取り組みたい」とした。
 報告書案の概要は次の通り。
■意見の概要
【現状認識】
 工事については、労務費や一部資材の高騰などもあり、依然として厳しい。賃金実態については、「おおむね満足できる水準」という意見と、「対応が必要」という意見に分かれる。
 過度な競争を強いる入札制度が労務費を圧迫し、結果として技能労働者の賃金の低下を招いている。一方で、2014年2月1日の設計労務単価の改訂などで、労働者の賃金は改善されつつある。
 一般業務委託では、清掃業務などに年齢の高い者が多く、最低賃金に近い賃金水準。積算儀準、積算単価がルール化されていないため、仕様が変わらないのに予定価格が下がる、前年度の落札額が予定価格となっているなどの例がある。
【県としての対応策】
 労働者の賃金改善に向け、県として何らかの対応を図ることが必要という点では意見が一致した。しかし、公契約条例に積極的な意見と、条例導入は適切でないとする意見があり、意見の一致は見られなかった。
 積極的な意見としては、@公共事業でのワーキングプアをつくらないためA賃金の下支えの基準として報酬下限額を設定することが必要B県内3市で条例が導入され、未実施地域との格差を埋める必要があるC一般業務委託では、適正な仕様・積算基準・設計単価に基づく入札ならば公契約条例にも対応できる−など。
 効果を疑問視する意見は主に工事に関してで、@公契約条例を導入する前に、まず、最低制限価格率の見直しや積算基準の設定など入札契約制度を改善すべきA同一会社で公契約物件と一般物件で支払い賃金のずれが生じるB膨大な事務量が発生するC県内の建設投資のうち県発注は2〜3%で、条例は賃金の改善につながらないD国の対策などの成果を見守るべきE見習い工の賃金引き上げが熟練工の賃金引き下げになどにつながる−など。
【公契約条例以外の対応策】
 最低制限価格率の見直しなどにより契約額が増額すれば労働者に支払える賃金も上がるので、入札・契約制度の見直しも効果がある。地域経済への貢献、障害者の雇用に積極的といったことに着目した総合評価により、そういう企業を県が育てるという視点もあるのではないか。一般業務委託では、積算基準、積算単価をルール化し、適正な仕様書、予算に基づく入札を行うべき。
【公契約条例に関する課題】
 仮に、公契約条例を検討する場合には、条例の対象となる契約の範囲、適正な賃金下限額の設定(県内の地域差対応)などの検討課題がある。
【今後の方向】
 次の必要性を指摘する。
 ▽労働者の賃金の原資を確保するために、最低制限価格価格率など入札契約制度の見直し検討▽一般業務委託について適正な契約額での契約を促進するため、積算基準、設計単価のルール化、仕様の適正化▽公契約条例の必要性を検証するため、賃金実態調査を継続し、データを蓄積▽公契約条例の効果や課題を検証するため、施行自治体の運用状況を継続調査する