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北海道建設新聞社
2014/10/14

【北海道】任期制自衛隊員に建設業も注目−毎年350人が求職 

 建設業で働く技能労働者の不足が顕在化する中、20代で自衛隊を退官する任期制隊員への注目が集まっている。同隊員の再就職をめぐり、建設業からの求人は増加傾向にあるものの、全産業の2割に届かず、貴重な人材を逃しているのが現状だ。自衛隊札幌地方協力本部は「少なくとも2年間の勤務で人間形成が出来上がっている」と自負し、建設業が職場の魅力をもっとPRして積極的に雇用するよう期待している。
 任期制の自衛隊員は、高校や大学を卒業して入隊し、心身を鍛えるとともに資格取得などの目的を達成して退職する。契約期間は2年。満了するごとに更新できるが、現在は再就職に有利な20代のうちに退官するのが一般的だ。
 道内では、こうした任期制退職自衛隊員が毎年約500人規模で生まれている。このうち進学や自営の希望者を除く7割の約350人が新たな就職先を求める。契約を1回更新した4年勤務が5割、2年勤務が2割などの比率。内訳は、陸上自衛官が9割と大半を占め、これ以外は海上と航空自衛官となっている。
 道内では札幌と帯広、旭川、函館の各地方協力本部が隊員に求人企業を紹介する合同企業説明会を年2回開いている。札幌圏の企業が中心となる札幌会場は人気が高く、ことしの場合、7月中旬の第1回は約330人が参加し、15日に開く第2回には約250人が臨む。
 札幌での第2回説明会に参加する企業は過去最多の204社に上る。業種は、警備業などを含むサービス業が26.2%と最も多く、次いで運輸・通信・電気・ガス・水道が23.7%、建設業が16.6%、製造業が15.6%など。
 札幌本部の札幌地域援護センターによると、参加企業が増加した要因の一つに「建設業と運輸が急増している」(鮫島光徳センター長)を挙げる。建設業は11年の9.2%に比べて7.4ポイントの急増。企業数は地場ゼネコンや型枠、仮設足場、電気など33社に上る。
 参加企業は2回の説明会を通じて人材の採用を見極めるのが通例だが、鮫島センター長は「ことしは第1回で内定を出す企業が4倍に増えた」とし、人材争奪の競争激化をうかがわせる。
 参加隊員は、説明会で志望する業種や企業を固め、翌春の任期満了までに面接や試験を受けて就職する。最終的な就職率は100%という。
 ただ、人生の分岐点を決めるという思いから判断に悩む隊員も多い。鮫島センター長は建設業に対し、「仕事をきちんと理解していない隊員もいる。現場の魅力をPRし、イメージを持たせてくれれば」と話す。
 隊員は、適性などに応じて中型自動車免許や大型特殊免許、移動式クレーン、玉掛けなどの資格を取得している。「自衛隊では安全作業を重視するので、即戦力は難しいかもしれないが、一から育てる覚悟を思えば、教育や訓練で気力や体力を養い、社会人としての基礎は出来上がっている」(鮫島センター長)と太鼓判を押す。
 求人企業となるには、社会保険に加入し、正社員か正社員化への登用があることが条件だ。給与は高卒で4年勤続した隊員であれば、大卒と同等程度の水準。併せて、災害などの有事に出動する即応予備自衛官としての勤務にも理解を求めている。