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建通新聞社(中部)
2015/06/09

【三重】熊野建設事務所 井戸坂威所長インタビュー

 ことし3月末に県道七色峡線と県道小船紀宝線の通行止めが解除されるなど、熊野建設事務所の最優先課題だった紀伊半島大水害からの災害復旧は概成した。しかし、近年、頻発して起こる異常気象による集中豪雨などから住民の暮らしを守るための社会基盤整備が遅れている地域であることは否めない。また、海岸線が長く、大規模地震発生時には津波による大きな被害が想定されている地域でもある。最優先課題が解決しつつあるいま、自然災害に対する備えを着実に進めていくことが求められている。そこで、紀南地域には「20年ぶりの勤務」となった三重県熊野建設事務所の井戸坂威所長に管内の整備課題や2015年度の展望などを聞いた。
――まずは、所長就任に当たっての抱負を伺いたい。
 「当事務所へは20年ぶりの勤務となり、懐かしい気持ちで業務に取り組んでいる。11年災害の復旧工事もひと段落のところまできたが、異常気象による被害が全国で頻発しており、予防防災として引き続き、地震、津波、洪水、土砂災害などの自然災害に対する備えを進めていくとともに、既存施設の適切な維持管理を行っていくことが必要であると考えている。また、紀勢自動車道と熊野尾鷲道路の整備により、熊野古道などへの観光をはじめ、産業・経済の面でも発展が期待されており、紀南地域の活性化や安全・安心で住みやすい街づくりにしっかりと取り組んでいきたい」
――管内の課題をどのように捉えているか。
「熊野地域は山と海に囲まれた風光明媚(めいび)な土地柄であるが、道路をはじめさまざまな社会基盤施設の整備がまだまだ遅れており、ひとたび、異常気象が発生すると、道路の寸断や土砂災害などにより住民の生活が脅かされる環境にある。このため、有事における孤立解消のための道路啓開基地の整備を図るとともに、住民生活を支える道路整備を進める必要がある。また、大規模地震発生時には津波がいち早く到達し、甚大な被害を及ぼすことが懸念されていることから、安全・安心に暮らせるよう、異常気象発生時の被害を防止・軽減するための河川や海岸、砂防、急傾斜などの整備を進めていく必要があると考えている」
――建設業界についての考えを。
「紀伊半島大水害では発災時から復旧工事まで最大限の協力と対応をいただき感謝している。今後とも、紀南地域の安全・安心や活性化に寄与するパートナーとしての関係を維持していくことが大事であると考えている」
――それでは、15年度の事業について、道路事業から教えてほしい。
「国道169号土場バイパスでは橋梁下部工を発注し現場に着手したところで、15年度は引き続き、下部工工事を進めるとともに、橋梁上部工の発注を予定している。国道311号は唯一の生活道路であるにもかかわらず未改良区間があることから、解消に向けて順次整備を進めており、15年度は熊野市甫母町で道路設計を実施する。紀宝町高岡の県道紀宝川瀬線では異常気象時における住民の避難時間を確保するため、道路の嵩上げに着手する。また、これら抜本的な道路整備に加え、早期に事業効果が発現できる局所的な改良などの柔軟整備を進めるとともに、熊野市飛鳥町の国道309号や紀宝町神内の鵜殿熊野線などで歩行者の安全・安心な通行を確保する歩道整備を進める」
――次に河川、海岸事業について。
「河川では、御浜町志原の志原川や御浜町阿田和の尾呂志川、紀宝町井田の井田川で護岸整備や用地買収を実施する。地元要望の強い河川堆積土砂の撤去は、河川の適正な管理と流下能力を確保するため、計画的に実施していく」
 「海岸では、熊野市有馬の有馬地区海岸と御浜町萩内の阿田和地区海岸の無堤区間で堤防の整備を進め、紀宝町井田の井田地区海岸では、海岸の侵食を防止するための人工リーフの設置を継続するとともに、国土交通省から熊野川の浚渫砂利の提供を受け養浜を進める」
――砂防事業では。
「熊野市新鹿町の奥西谷川や紀宝町浅里の大和谷川で砂防堰(えん)堤工事を継続するとともに、熊野市五郷町の桑谷川では、砂防施設の設計や用地測量を実施する。また、御浜町阿田和の阿田和地区や熊野市木本町の馬留地区などの急傾斜地区で法枠などの整備と用地買収を進める」
「土砂災害防止法に基づく土砂災害危険箇所の基礎調査を熊野市、紀宝町で計画的に進めており、新たに御浜町内の危険箇所の調査に着手する」
――最後に紀伊半島大水害の復旧状況について。
「紀宝町浅里から熊野市紀和町和気の間で長期間にわたり通行止めとなり、ご迷惑をお掛けした県道小船紀宝線は、15年3月に小鹿橋の復旧工事が完了したことから、3月31日に通行止めを解除させていただいた。災害復旧事業については昨年度に概成したところであるが、残る熊野市井戸町の井戸川流域における工事中の箇所は早期の復旧完了に向け整備を進めていく」

提供:建通新聞社中部支社三重支局