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日刊岩手建設工業新聞社
2015/07/14

【岩手】法律は改正されたけど…

日刊岩手建設工業新聞社 「時評」

 「随分低いなあ」。入札結果を見てため息が出た。
 県営建設工事でも予定価格の81%で落札している物件がある。事情もあろうが、2割引きは働く者に気の毒だ。
 「はて、ダンピング受注の防止というけれど、何%がダンピングなのか」と疑問に思う。
 4月1日、@公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)A公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)B建設業法|の一部を改正する、いわゆる「担い手三法」が施行された。
 「公共工事の品質確保」「公共工事の入札契約の適正化」「建設工事の適正な施工確保と建設業の健全な発達」が、それぞれの主な目的だが、その実現のために「ダンピング防止」対策の強化が第一の重要課題となっている。
 品確法が中心だが、実現するための発注関係事務運用指針は、担当者には重責な業務に思えた。また罰則はないものの、「国は、本指針に基づき発注関係業務が適切に実施されているか定期的に調査を行い、その結果を取りまとめて公表する」としている。
 指針での「必ず実施すべき事項」として、@適正な利潤を確保できる予定価格の適正な設定A歩切りの根絶B低入札調査基準または最低制限価格の設定・活用を徹底し、原則として予定価格は事後公表C適切な設計変更D発注者間で必要な連携や調整を行う体制の構築|の5項目。
 「実施に努める事項」としては、E工事の性格等に応じた入札契約方式の選択・活用F週休2日の確保等不稼働日等を踏まえた適切な工期を設定した上での発注・施工時期等の平準化G入札者または落札者がなかった場合、見積もりを活用することにより、予定価格を適切に見直すH各発注者は受注者からの協議等に、速やかかつ適切な回答に努めるI必要に応じて、完成後の一定期間を経過した後において施工状況の確認及び評価を実施する|となっている。
 この10項目について、定期的に調査してその結果を公表しなければならない。必ず実施すべき事項では、「歩切りの根絶」が、発注関係事務の当事者の意識改革で解決できそうだ。
 「歩切り」は、昨年9月30日閣議決定された入札契約適正化指針で、「品確法に違反する」と明文化されている。
 近頃は、「だから最近の本紙には、歩切り調査の記事が多く掲載されるのか」と納得したりする。
 また、運用指針に使用される文言としては、「適正な」とか「適切な」と、ややあいまいな記述が多く、これらを総括して「ダンピング防止」につなげるためには、低入札価格調査制度や最低制限価格制度の数値を今一度再確認し、受発注者間で協議する必要があると強く思っている。
 ある全国組織の専門工事団体は、「最低制限価格は適正な予定価格の95%が必要」と、数値を入れて発注者に呼びかけていた。
 しかし、発注関係事務がどんなに適切に指針を運用しても、工事を請け負う建設業界が、価格競争だけに明け暮れ、健全な会社経営ができなければ、「担い手三法」の意味がない。
 全国的には、大型プロジェクトや自然災害からの復旧工事がすでに終了し、数年前の会社規模を維持できない状況に陥っている地域も多くある。また今後、公共事業費が増えていくという予測は全くない。
 数年後の岩手県も復興工事は終了間近となろう。他県の事例をかんがみ、発注者施策改善と建設業界の意識の改革が必要だ。
 制度や施策だけでなく、本来の役割を自覚し、同業者が互いの技術力を尊重し合う建設業界になっていくことが、今回改正された法律の本当の目的とも思っている。
 「法律は改正されたけど、何も良いことがない」「自分だけは」ではなく、高く広い目線でこれから数年後を見据えた「地域を維持する建設業の姿」を、担い手三法に照らし合わせて、業界全体で考えたい。
 岩手では、今が一番良いチャンスと思うのだが。
 (宮野)