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鹿児島建設新聞
2015/09/01

【鹿児島】災害時での存在価値(下)(鹿児島建設新聞 ジレンマ・建設業界の憂鬱)

 建設業は「レスキュー隊」でもなければ「何でも屋」でもない。しかし、有事の際の献身的な取り組み≠ノ光が当たらない現状に不満があっても、嘆いてばかりはいられない。一般市民に「貢献度」をいかに理解してもらうか。今まさに重要な転換期に差し掛かっている。

■貢献度/アピール不足顕著

イメージ 災害発生の第一報が行政サイドに入ると、初動訓練やマニュアルに沿って対応。災害対策本部が設置され、地元建設業者に対しても災害協定に基づいて応急・復旧の要請が発令される。しかし、活動が活発な桜島を身近に持つ本県では、一概にそうとは限らない一面も。

 今回、桜島が火山噴火警戒レベル4(避難準備)への引き上げられたことを受けて、県建設業協会鹿児島支部、県港湾漁港建設協会、道路降灰除去協会は、万が一に備えて万全な対応が取れるように事前に協議。資機材や土のう等の把握、指揮連絡体系や緊急時の出動態勢の在り方など確認作業は多岐に及んだ。川畑俊彦支部長は「噴火していない中、最悪の場合に備えることも重要」とその意義を話す。

 建設業の持つ機動力は「有事の際に必要不可欠」。いつ起こるか分からない自然災害に備えて初動体制を敷いたり、要請に応じたりするが、不満の声も散見する。

 頻繁に襲来する台風においては、万が一に備えて待機する業者が多い。出動要請がない肩透かし≠くらう場合もあり、「余分な人件費がかさんだ」と嘆く経営者も少なくない。

 また、現場からは手持ち現場の進捗を懸念する声も上がる。2011年2月に新燃岳噴火による路面清掃支援に出向いたある業者は「要請を受けて行ったのに、工期延長等を見てもらえなかった」と不満を口にする。

 人手不足が著しくなり、手持ちの資機材も手放した業者も多い。人材のみならず、重機などの資機材も現場からやり繰りして投入するなど、限界が見え隠れする。

桜島大爆発を想定した総合防災訓練 先の桜島火山噴火警戒レベル4による協議においても、桜島に事務所を構える竃添組の野添正文社長は「みんなが出払うと、肝心な時に年老いた身内を助ける人がいなくなる」と憂う。

■メディア使い広報強化を

 以前、日経コンストラクション(日経BP社、2012年3月27日号)で「建設業界の被災地支援はなぜ自衛隊に"完敗"したのか」との見出しが躍った。東日本大震災における建設業界の支援活動が、世間一般的には伝わっていないことが露骨に記された。

 海外からの支援部隊と同じ水準のインフラ応急復旧に取り組んだ建設業の貢献度が、市民ボランティアやNPOなどよりも「低い」とのアンケート結果に、多くの建設業界人は憤慨。「報道する側にも責任がある」との指摘がある一方、建設業界側の不十分な情報発信とともに、「貢献度を裏付ける基礎的なデータが整備されていない」との厳しい意見も。

 これまでは、災害現場で黙々と作業を行うのが本業であった建設業だが、そろそろ考え方を変える転換期に来ている。

 今ではスマートフォンで誰もが写真や動画を撮れる時代になった。マスメディアよりも先乗りする建設業の特殊性を生かし、リアルで悲惨な状況や活動の様子を広報用≠ニして記録。それをメディアに提供するなど、業界のひたむきな「貢献度」イメージをアピールしていく必要がある。

 それがおのずと市民の目に届き、建設業を見る目が変わり、次世代を担う若者に「建設業ってかっこいい」と思ってもらうきっかけにもなり得る。