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日本工業経済新聞社(茨城)
2015/12/05

【茨城】 鬼怒川緊急対策プロジェクト 6年間に600億円投入

 9月の関東・東北豪雨で甚大な被害を受けた鬼怒川下流域の再度災害を防止するため、国土交通省関東地方整備局と県、沿川7市町は4日、「鬼怒川緊急対策プロジェクト」を発表した。ハード対策では、直轄事業による鬼怒川の堤防整備などに2020年度までの6年間、総額580億円を投入。県が事業主体となり実施する八間堀(はちけんぼり)川などの治水対策は2017年度までの3年間に23億円を見込む。常総市三坂町の決壊区間の本復旧工事は来年度内の完成を目指していく。
 関東・東北豪雨により鬼怒川では、常総市三坂町、左岸21k付近で200mにおよび堤防が決壊。溢水も7カ所発生した。八間堀川でも3カ所で堤防決壊や護岸崩壊が発生。これにより、常総市の3分の1にあたる約40へいほうqが浸水。鬼怒川沿川で9281戸の家屋浸水被害が出るに至った。このため、再度災害防止を目的として国、県、鬼怒川沿川7市町が主体となり、ハード対策に加え、ソフト対策も一体となった治水対策を展開する。
 ハード対策の内容をみると、まず国交省による鬼怒川対策は3つの事業を実施。堤防決壊区間の本復旧と漏水が発生した19カ所の対策を行う河川災害復旧事業は66億円を投入。来年度までに工事を終える。
 決壊区間については10月の鬼怒川堤防調査委員会第3回会合で、堤防の高さ(破堤前は平均約4m)を最大1・4mかさ上げし、堤防の幅も天端部(同3m)で6m、堤防敷部(同30m)で50m規模に広げる本復旧案が了承済み。本年度内には工事が始まる見通し。
 河川激甚災害対策特別緊急事業は15〜20年度の6年間に448億円。対象区間に点在する弱小堤防のかさ上げ・拡幅や漏水対策を行う。河川大規模災害関連事業は同じく6年間に64億円。河道掘削などにより流下能力の向上を図る。
 一方、県が事業主体となり行う八間堀川などの対策は4つの事業を実施。河川災害復旧事業は15〜17年度の3年間に2億1000万円、河川等災害関連事業は同じく3年間に約1億2000万円を試算し、堤防のかさ上げ・拡幅や河道拡幅を進める。
 本年度災害対策等緊急事業推進費による河川改修事業費は17億円。堤防の法崩れなどの復旧を行う県単河川災害復旧事業費は2億2000万円。ともに実施期間は本年度。
 また、ソフト対策としては、国と県、鬼怒川沿川の結城市、下妻市、常総市、守谷市、筑西市、つくばみらい市、八千代町の7市町が連携し、タイムラインの整備や訓練の実施、地域住民も参加する危険箇所の共同点検、広域避難に関する仕組みづくりに着手し、継続的に取り組む。
 石井啓一国交大臣は4日の会見で、「国、県、沿川市町が一体となった取り組みは今後の他の河川での取り組みのモデルになると考えている。施設の能力を上回る大洪水は発生し得るという発想に立って『水防災意識社会』をつくることが重要。従来のハード整備と、なるべく迅速な避難が行えるようなソフト対策を組み合わせて、命を守り国民の安全・安心を確保するための先行的なプロジェクトになる」と話した。