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鹿児島建設新聞
2015/12/18

【鹿児島】ジレンマ〜建設業の憂鬱〜 工業系学生の実態

  建設投資の減少や激化する受注競争によって企業が疲弊。さらに著しい少子高齢化の影響もあり、建設産業全般で若年の「労働者、技術者、技能者」の確保と育成が問題視されている。さまざまな手を講じる前に「いま」を知る実態把握は必要不可欠。工業系学生らの本音を探り、現状をどのように捉えているのか実態を追った。 
 「求人を出しても問い合わせすらない」「今の学生らは建設業にどのようなイメージを持っているのだろうか…」。ここ最近、取材先でよく耳にするようになった。 
 これらの声を受けて本紙では、現役学生らの実態を把握するために「生徒・学生らが抱く建設産業の意識・実態調査」と題し、11月1日から30日までの期間で緊急アンケートを実施。独自に抜粋した県内の工業系(建築系、土木系、電気系、デザイン系など含む)の学科がある高校、大学、専門学校、高等専門学校、高等技術専門校の24校約5100人を対象に無記名方式でアンケートを行い、16校から3133人もの回答を得た(回答率約61・4%)。 
 学生らが住む地域の内訳は、北薩906人、姶良・伊佐681人、大隅664人、鹿児島465人、南薩216人、離島200人で、学年は1年生903人、2年生1157人、3年生1026人、その他47人。 
 最初に進学する際に工業系の高校を選んだ理由を複数回答で尋ねると、「興味があり、自分で決めた」が43・2%、「手に職をつけたかった」も13・2%と、全体の半数以上を占めた。多くの学生らが、中学・高校時から建設産業に対して興味≠竍いきがい≠抱いていた結果となった。 
 一方で、親の勧め(9・5%)、教師の勧め(4・6%)など家族や周囲の影響も少なくない。とある意見交換会で「子どもが進学や就職を決める際、親や教師の影響力も大きい」「ものづくりへの夢を閉ざしているのは親だ」と発する社長がいた。「親や教師向けに現場見学会を開き、建設業に理解を図るべきだ」との意見もある。これまでの子どもや学生向けだけでなく、矛先を変えてみることで建設業の意義や必要性≠ェ見直されるきっかけになるかもしれない。 
 入学後の感想としては、「よかった」が2009人(64・1%)と多数を占め、工業系学校の学生ライフを満喫している様子がうかがえる。 
 今後の進路についての質問では、「進学」が646人、「就職」が2487人で、8割近い学生らが卒業後に就職を希望。しかし、就職先の業種を問うと、建設産業分野への就職は1369人(55%)で、半数近い1118人がその他の分野を見据えている。 
 進学や就職で建設産業の道を選ばなかった理由を問うと、「興味がない」「自分の興味が変わった」「他業種に興味を持った」が7割を超えた。 
 せっかく「手に職」を育む工業系で学んでいながら、半数近くの学生が他分野へ方向転換し、7割を超す学生が建設業に興味を失っている現実に驚きを隠せない。 
 その理由は、建設業に抱くイメージを聞いて、随所に垣間見ることができる。3K(きつい、汚い、危険)はもちろんのこと、「給料がやすそう」「重労働」「休みがない」といったイメージが相変わらず強い。さらに、横浜市のマンション傾斜問題などが大きく報道されたことから、建設業全体に負のイメージ≠抱く学生も少なくない。 
 最近の建設業は、安全第一を掲げ、機械化も進み、現場もきれいに整頓されており、3Kのイメージは払しょくされつつある。それにも関わらず、いつもでもマイナスイメージが抱かれている現状にわれわれは真摯に向き合い、変わりつつある建設業の好イメージや失い始めている信用回復≠ノ向けてアピールしなければ、人材不足にあえいでいる建設業界に未来はない。 
 もちろん、「日本を支えている」「世のため、人のために貢献している」「かっこいい」といったイメージを抱く学生も多いことは言うまでもない。