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日刊建設タイムズ社
2016/03/29

【千葉】人材確保の職場づくり/千葉労働局が雇用管理改善促進事業

 中小建設企業の「人材確保のための職場づくり」を応援するため、千葉労働局職業安定部は2015年度で、新たに「人材不足分野における人材確保のための雇用管理改善促進事業」(啓発実践コース・建設分野)に取り組んだ。「経営環境が良好な今だからこそ、雇用環境を改善して魅力ある職場づくりを進めるチャンス」と捉えるとともに、建設業全体のイメージアップを図り、多くの若者が働きたいと思う魅力ある建設業となるため「業界を挙げて取り組んでいく必要がある」と後押し。千葉労働局の委託事業として受託した労働調査会が、リーフレット配布による普及・啓発や「雇用管理完全啓発セミナー」を開催したのをはじめ、企業訪問での「雇用管理アドバイザーによる相談支援」などを実施した。

  ◇業界の取り組みを後押し

 人材不足分野のうち、今後の復興事業の本格化やアベノミクスによる公共事業の増加、2020年の東京五輪・パラリンピックの開催に伴う需要の拡大が見込まれる建設分野。雇用管理の改善に関する法律に基づき策定される「雇用管理改善計画」においては、少子高齢化が進む中での若年層の構成比率の減少が顕著で、将来的な技能労働者の不足が強く懸念されている。
  その一方で、事業主が取り組むべき雇用管理改善の方向性がある程度示されているものの、業界が抱える構造的な特性の影響もあり、個々の事業主における雇用管理改善の取り組みを通じた「魅力ある職場づくり」に対する意識は「高いとは言えない状況にある」とされる。
  このため、建設分野において、雇用管理改善を通じた魅力ある職場づくりの「必要性やメリット等」をテーマにセミナーを開催。また、個別の企業に対しても積極的な訪問相談により、これらを啓発するなど、具体的な取り組みを促すことで、業界全体による「意識の底上げ」を実施。これにより、高い意欲と能力を持つ労働者が安心して働くことのできる「労働環境のための雇用管理改善」を推進し、現在就業している従業員の職場定着を高めるとともに、将来を担う若年労働者等を含む人材の確保を図る。

  ◇建災防らが共催し改善啓発セミナー

 本県における「雇用管理改善啓発セミナー」は昨年、千葉市内の県経営者会館を会場に、10月21日と30日の2回にわたり無料で行われた。参加企業数は1回目が49社、2回目が37社の合わせて86社。労働調査会が主催し、建設業労働災害防止協会千葉県支部と(公社)千葉県労働基準協会連合会が共催した。
  カリキュラムは、建設企業での雇用管理の担当者が不安や疑問に感じている「雇用管理上の課題」を、建設業の雇用管理に詳しい講師が最新の情報をもとに、わかりやすく説明したもの。セミナーの主な内容は、@建設業の人材不足の現状A社会保険未加入問題の現状と課題B雇用管理責任者の選任とその役割C「魅力ある職場づくり」の必要性とメリットD建設業で活用可能な助成金制度E質疑応答とアンケート――など。講師は、社会保険労務士で労働安全コンサルタント、産業カウンセラーの増山茂雄氏が務めた。

  ◇雇用管理アドバイザー無料相談支援

  一方、「雇用管理アドバイザー」による無料の相談支援は、千葉労働局が「雇用管理の改善の必要性」や「具体的な進め方」に関心を持っている中小建設企業を対象に派遣。「働きやすさ」や「働きがい」を提案するなど、魅力ある職場づくりに役立つ相談支援を行ったもの。前述のセミナー参加者をはじめ、県内41社の建設企業がこの相談支援を活用。雇用管理アドバイザーは、建設業における人事・労務管理に精通した社会保険労務士が務め、中小建設企業からの要請に基づいて企業を訪問。雇用管理の改善を進めるうえでの課題を整理し、課題解決のための手順・方法などについて相談支援を実施した。

  ◇課題整理し解決のための手順と方法

  一例として「A社」が抱える雇用管理上の課題は、@古くに制定した就業規則が法律改定への対応に不十分で、会社の雇用管理の実態と合っていないA中期的な研修計画がないB健康づくりの意識が薄いC組織図が実態に合っていないD「マイナンバー制度」への対応がされていない――など。
  これらの課題に対して、雇用管理アドバイザーがA社に提案した雇用管理制度は、@就業規則、賃金規程の見直しA中期的な研修計画の作成B健康づくりの意識の高揚C組織図の改定Dマイナンバー制度――などで、それぞれ制度概要の説明や提案を実施した。
  このうち「就業規則、賃金規程の見直し」では、現状の就業規則、賃金規程を各法律に合致させ、会社の実態に合わせて改定し、本年2月10日に労働基準監督署への届け出を完了。賃金規程に関しては、割増賃金の計算時の「所定労働時間を超えた場合」と「法定労働時間を超えた場合」の区別や、時間外・深夜等の割増賃金の給与計算の方法を説明した。

  ◇雇用管理で実施すべき項目が明確に

 「中期的な研修計画の作成」では、将来の会社の運営を考えた場合、社員各々が「いつどのような研修を受講」し「どのような資格を取得すべきか」を明確にして周知することが、社員の「自己啓発とやる気に繋がる」との旨を説明。
  「健康づくりの意識の高揚」では、建設業において「腰痛防止対策が重要である」ことに加え「始業前に行う腰痛防止体操の重要性」を説明。「組織図の改定」では、業務上及び安全衛生管理組織図を実態に合うように改定し、特に「安全衛生管理組織図」については、関係者への周知徹底を行うように伝えた。
  「マイナンバー制度」では、会社としての同制度への対応を説明。緊急に取り組む業務として、マイナンバーの取得が必要なことから、「従業員の皆様へのお願い」としてのフォーマットを提示し、社員全員への配付を提案。
  さらに、労働基準法で定められた「労働者名簿」「労働条件通知書」「出勤簿」「賃金台帳」などの書類は整備されていたことから、他の書類で実態に合っていない「就業規則」と「組織図」の改定とともに、より一層の職場の改善として「研修計画の策定」「始業前職場体操」などを提案した。
  これらの雇用管理アドバイザーによる相談支援に対し、A社の「事業主からの感想」としては、「日頃から思っていた不明な点が明瞭となり、また新しい知識を教えてもらえて感謝している」ことに加え、「雇用管理において実施すべき項目が明確となったので、今後は積極的に実践していきたい」との声が聞かれた。

  ◇役割等級制度や知的資産経営を

 同じく、B社が抱える雇用管理上の課題は「賃金体系・退職金の見直し」。この課題に対して、雇用管理アドバイザーがB社に提案した雇用管理制度は「役割等級制度・知的資産経営の導入」。導入支援のポイントとして、賃金が単純に年齢給となっていないかの調査を実施。特記事項として「支援の際に障害となった事例・課題」や「それをどのように解決したのか」などを加えた。
  提案した雇用管理制度の導入状況は、@職務分析による職務給の制度導入及び事業評価を高める経営リポート作成(中小企業庁・知的経営資産報告書)に中期計画を作成A職務能力評価制度の導入B退職金について、勤続年数に縛られない「ポイント制」の導入――など。
  これによるB社の今後の取り組み計画や課題として、退職金については「2〜3か月後」までに、給与については「1年後」を目途に考えるほか、慶弔規程・特定個人情報管理規程の作成、現行育児介護休業規程に関する法改正対応(15年4月1日〜)などを掲げた。
  これらの雇用管理アドバイザーによる相談支援に対し、B社の「事業主からの感想」としては、「(従業員の)平均年齢も高いため、退職金については『喫緊の課題』だと考えている」との意識の変化が表れたという。k_times_comをフォローしましょう
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