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西日本建設新聞社
2016/05/17

【熊本】熊本地震で5市町舎が損壊

 熊本地震で宇土市、八代市、人吉市、益城町、大津町の庁舎が深刻な被害を受けた。庁舎が使用できない、もしくは安全確保が困難な事態に陥っており、他の市・町有施設等に行政サービス機能を移転。災害時拠点となる庁舎の耐震補強や建て替えなどの対応が急がれる。
 宇土市は、本庁舎の本館に4月14日の前震で亀裂が入り、16日の本震で4階部分が押し潰され倒壊寸前となった。15日以降は立入禁止にしていたため人的被害はなかったが、必要な機材や資料が取り出せないなど業務に支障を来している状態だ。
 現在は、本館の行政機能を市民体育館、宇土終末処理場、市民会館などに移している。市は、市民体育館を市民に開放するためにも仮庁舎が必要としており、本庁舎駐車場に建設する準備を進めている。
 本館(昭和40年建設)は耐震強度不足などを理由に、建て替えに向け検討を重ねていた。新庁舎建設を担当する企画課では「早めに動き出したい」としており、28年度に基本構想、29年度に基本設計、30年度に実施設計を予定している。
 八代市は、本庁舎(行政棟・議会棟、RC造地下1階地上5階・塔屋3階建、延べ1万1519平方b、昭和47年建設)の3階以上で柱や壁に多数の損傷が発生した。4月17日に設計士の目視点検で「崩壊の恐れがある」とされ、行政機能を千丁支所や鏡支所など14カ所に分散。26日に構造の専門家が確認し、「3階以上は余震などで崩れる可能性がある」との見解が示されていた。
 市民の利便性を考え、本庁舎と千丁支所を結ぶ無料シャトルバスを運行しているが、市民からは不便との苦情も出ており、本庁舎近くに仮庁舎を設ける計画。現在、移転先の選定や仮庁舎の規模、仮庁舎に移す機能などを検討している。
 現庁舎の耐震強度不足もあり、市では建て替えに向け準備を進めていた。新庁舎建設課では「災害復興の拠点整備のため、早急な建設を目指す」と話している。
 人吉市の本庁舎は、昭和37年に建設されたRC一部S造3階建延べ4050平方b。震度5弱を観測した本震後、平成13年の耐震診断結果を基に建物を調査したところ、梁や壁などにクラックの増加と幅の広がりが見られ「震度5の地震で危険にさらされる」との報告を受けた。このため2日に本庁舎を閉鎖、カルチャーパレス、スポーツパレス、庁舎別館の3カ所に機能を分散し9日から業務を開始した。
 市政にとって庁舎の移転建設問題は、熊本地震以前から最大の課題の一つ。今年2月には市役所別館一帯(西間下町)を建設地に位置や事業費が異なる新庁舎2案を示し、校区説明会を終えたばかりだった。市では今回の地震を教訓に、一層の防災機能の強化なども含め今年度内に新庁舎の規模や建設スケジュールを確定させたい考え。
 益城町は現在、一部の窓口に限って庁舎内業務を再開したものの、正面玄関の庇やエレベーターの損傷などが確認され、関係者以外の立ち入りを禁止している。
 庁舎は、昭和56年に建設されたRC造3階建延べ3748平方b。平成23年度に実施した耐震調査でIS値が0・43未満と診断されたため翌年、フレーム工法等の耐震改修を行っていた。町は、行政サービスを早急に機能させるため、近くの町有地にプレハブの仮庁舎建設を計画したいとしている。
 大津町は、庁舎内の天井や壁材の一部が落下し、クラックが発生。平成8年に増築した庁舎のジョイント部分の損傷なども確認されている。
 現庁舎は、昭和44年に完成したRC造4階建延べ3866平方b(増築部分含む)で、平成19年に「震度5弱で倒壊の恐れがある」と診断された。26年度には庁舎建設基金を創設し、これまで4億円を積立。昨年からは建設比較検討業務に入り、補強や建て替えなどの方向性を模索していた矢先だった。町総合政策課は「建て替えを検討する」と話しており、当面は、庁舎南側のオークスプラザ駐車場にプレハブ仮設庁舎(延べ床面積約1600平方b)を建設して窓口業務を行う予定だ。

提供:西日本建設新聞社