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建通新聞社(中部)
2016/06/02

【岐阜】県郡上土木 2016年度事業展望

 岐阜県の北西部に位置し、豊富な観光資源を持つ郡上市を管轄する岐阜県郡上土木事務所。管内の総面積1030平方`のうち約9割が山林で、急峻(きゅうしゅん)な山地、流れが早い渓流など高低差の厳しい地形が多く、多雨で、近年頻発する豪雨、洪水などの災害対策が急務となっている。また、観光資源の開発や森林資源の活用などによる産業振興のため、管内を走る国道156号や国道256号などの幹線道路を中心とした道路整備に対する地元の期待は大きい。また、3月24日には内ケ谷治水ダムの本体工事を発注するなど注目が集まっている。飯島昭憲所長に2016年度の事業計画などを聞いた。(聞き手は岐阜支局=滝秀紀)
飯島昭憲所長 ――道路建設事業について伺いたい。管内の道路改良率は約55%と県内平均の約65%と比べて低い。まず岐阜県の高速交通体系を補完する地域高規格道路である濃飛横断自動車道の整備はどうなっているか。
 「郡上市和良町と下呂市金山町を結ぶ国道256号のバイパス(BP)『和良金山道路』の延長は約2700bで、このうち郡上土木事務所分の延長約1200bについては08年度から整備を進め、16年3月25日に、延長約1830bの『和良金山トンネル』や橋長80bの『方須大橋』が開通した。これまで濃飛横断自動車道の開通区間は、下呂市の『ささゆりトンネル』周辺の約5100b区間だけであったが、今回のトンネルと下呂市側の『乙原大橋』を含む約3000b区間が開通したことにより、計約8100bが通行可能となり、時間にして約25分の短縮効果が得られる」
 ――その他の道路整備についてはどうか。
 「主要地方道の金山明宝線で旧明宝村の小川地区と畑佐地区を結ぶ総延長3380bのBP道路の整備を進めている。14年度末に、小川峠に計画している延長約1650bの『めいほうトンネル』(仮称)のうち、延長約850bの第1期工事に着手しており、16年度も引き続きトンネル掘削を進めている」
 ――次に、道路維持管理事業はどのように進めるか。
 「橋梁耐震対策を順次進めており、一般国道472号明方大橋の橋脚補強を実施する。これにより県計画を2年前倒して、緊急輸送道路の耐震対策が完了する見込み。また、岐阜県橋梁長寿命化修繕計画に基づき、点検・補修工事を実施していく。道路災害防除では、14年度に県が策定した県土強靱(きょうじん)化計画に則り、主要な骨格幹線道路ネットワーク上の道路に加え、熊本地震に鑑み、南海トラフ巨大地震や内陸型地震などで震度6弱以上が想定される道路である国道256号の八幡町旭地区等の落石対策事業を実施する」
 「歩道整備については、通学路交通安全プログラムにて対策が必要とされた国道156号の白鳥町二日町ほか5カ所の整備を進めていく」
 ――洪水や土砂災害への対策はどうか。
 「洪水対策としては、長良川において04年の台風23号により浸水被害が発生した美並町木尾地区、深戸地区で、広域河川改修事業を行っており、用地買収、築堤工事を順次進める」
 「土砂災害対策としては、砂防事業で八幡町小野の高垣洞など4カ所において堰堤(えんてい)工などを実施する。急傾斜地崩壊対策事業では、16年度から新たに八幡町相生地区の腰細1工区と白鳥町中津屋地区の大中小学校工区に着手し、継続箇所と合わせて5カ所にて擁壁工などを実施する。また、ソフト対策では13年度までに土砂災害防止法に基づき、土石流、急傾斜、地滑りについて管内において警戒区域1516カ所と特別警戒区域1429カ所の指定を完了した。また、郡上市が作成する土砂災害ハザードマップについては、14年度に八幡町と美並町のハザードマップを作成し、市内全域の作成が完了している」
 「一昨年は、8月からの豪雨などにより、県内では飛騨地域から中濃地域を中心に土砂災害や橋の流出、床上・床下浸水など、甚大な被害が発生し、郡上管内でも、白鳥町を中心に土木施設の災害が発生した。被災箇所の復旧を鋭意進めた結果、15年度末をもって、道路は8件で約1億円、河川は22件で約12億円、砂防は8件で約2億円を要し概成した。また、15年度の災害の件数と災害決定額については、河川災2件で0・5億円、道路災7件で0・8億円となり、早期復旧を目指し、鋭意工事を進めている」
 ――清流の国ぎふを目標にした河川環境整備はどうか。
 「郡上市大和町地内の万場橋から西河橋までの約3・9`区間について、09年度から魚類などの生物生息環境に配慮した河床低下対策を実施している。15年12月15日には、『清流長良川の鮎』が世界農業遺産に認定された。また、16年2月22日は『清流長良川漁場の再生への取り組み』が評価され、郡上漁業協同組合と伴に郡上土木事務所が、国土交通大臣表彰の『手づくり郷土賞(一般部門)』を受賞した」
 ――内ケ谷治水ダム建設事業の状況はどうか。
 「内ケ谷治水ダムは、堤高84・2b、堤頂長270b、堤体積約32万8000立方b、重力式コンクリートダムで、有効貯水量910万dとなり、岐阜県が建設・管理するダムでは最大となる。1983年に建設採択され、これまでに工事用道路や付け替え道路工事を進めてきたが、15年度末に本体工事契約を締結し、いよいよダム本体工事に着手することとなった。23年の完成に向け、夏ごろから掘削工事を開始する」
 ――地元建設業に期待することは。
 「災害時や冬期の除雪など、緊急時に迅速かつ臨機応変に対応していただいている。また、3月末日に県の管理する国道でトレーラーの横転事故があり、この際には郡上建設業協会と郡上土木事務所とで締結している災害応援協定に基づき迅速に対応いただき、地域住民への影響を最小限にとどめることができた。地域を支える建設業の皆さまには非常に感謝している。最近の建設業を取り巻く環境は郡上地域も例外なく厳しいが、われわれとしても、現場の実態を踏まえた適切な積算や工事の平準化、書類簡素化の徹底など建設産業の現場改善に向けた取り組みを進めていく。15年には管内において、当事務所の工事で3件の人身事故が発生するなど現場の安全管理に課題の残る1年であり、地元建設業の方々には、若い世代が安心して入職できる現場環境づくりに努めていただき、ことしこそ事故の無い1年として欲しい」

提供:建通新聞社