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建通新聞社(中部)
2016/06/08

【岐阜】県古川土木 2016年度事業展望

 岐阜県の最北部に位置し、飛騨市と高山市の一部(国府町、上宝町、奥飛騨温泉郷)を管轄している岐阜県古川土木事務所。とても広い総面積のうちの94%を山地林野が占めるとともに、管内全域が積雪寒冷地域に指定されており、県内でも極めて雪が多い地域だ。この地域の住民の安全・安心の確保と活力ある地域づくりのため、強靱(きょうじん)な社会資本の整備が求められている。管内の物流を支える交通網整備のほか、河川整備、防災整備など重要な事業の推進へ舵取りをする坂口達也所長に2016年度事業計画を聞いた。
(聞き手は岐阜支局=村松衡)
 ――管内の現状と課題について伺いたい。坂口達也所長
 「高速交通網の整備による交通事情の変化に伴い、当管内の各地域が岐阜県の北の玄関口≠ニして、また、飛騨の観光地として今後発展していくことが期待される。そこで北陸新幹線富山駅と富山空港に直結し国道41号のバイパス(BP)機能を果たす国道360号や、飛騨市街地と東海北陸道飛騨清見インターチェンジ(IC)とを最短で結ぶ主要地方道古川清見線などの管内の道路網の早期整備が急務だ」
 「一方、管内の道路の多くが険しい山地と河川沿いを走り、地域を行き来するには峠越えの道路も多く、降雨等による落石、山腹崩壊や路側決壊など、災害を受けやすい環境にあるため、防災・減災対策や冬季通行の安全確保を早期に進める必要がある」
 「また、04年の台風23号による豪雨災害、14年の豪雨災害等、短期的・局地的な集中豪雨による災害が頻発しているため、これに対応した管内河川の整備水準の向上、土砂災害の軽減対策をハード・ソフト両面から進める必要がある」 
 ――16年度の予算規模、編成や基本方針について伺いたい。
 「当初予算の総事業費は約18億円だが、別途、昨年度末(3月)に国補正分として約4億円余りの工事を発注している。事業別では、道路建設事業が約7億1000万円、道路維持事業が約8億円、河川事業が約1億1000万円、砂防事業が約1億9000万円となっている」
 「限られた予算の中ではあるが、引き続き安全で安心、活力ある地域づくり≠着実に進めていきたい。また、国は景気を下支えするために予算の早期実施を図るとしており、これと歩調を合わせて上半期に80%以上の工事発注を進めていきたい」
 ――主要事業として道路建設事業はどうか。
 「管内の特徴として、山岳道路が多いうえに、道路改良率(幅員5・5b以上)は49・3%と岐阜県の平均65・0%を下回り、道路インフラの整備が遅れているのが現状だ。16年度は国道360号種蔵・打保BP(飛騨市宮川町巣之内)で、宮川3号トンネル(仮称)のトンネル照明、取り付け道路等の工事を進め、年度内にトンネルを含む約550b区間を部分供用し、隘路の解消・安全で円滑な交通の確保を図る予定だ」
 「また、主要地方道古川清見線平岩BP工区(飛騨市古川町平岩)では、平岩1号橋(仮称)の上部工のほか、改良区間の改良工事、舗装工事を引き続き進め、早期の供用開始へ事業を推進する。さらに、主要地方道神岡河合線杉崎・太江BP2工区(飛騨市古川町細江)では、用地取得に向けた調査を進め、主要地方道国府見座線八日町工区(高山市国府町八日町)の道路改良工事を継続する予定」
 ――道路維持事業はどうか。
 「防災対策としては、緊急輸送道路の雨量規制区間内である国道360号(飛騨市宮川町)の落石防止事業を継続するとともに、国道471号笹島トンネル(高山市奥飛騨温泉郷)で補修工事を継続し本年度完了する予定だ。また、歩道整備では一般県道谷高山線(飛騨市古川町上野)で、通学路交通安全プログラムに基づき歩道整備に向けた用地取得を進めるほか、一般県道鼠餅古川線(飛騨市古川町上気多)で、新たに歩道整備事業に着手する。主要地方道国府見座線(高山市上宝町蔵柱)では、冬期の積雪時には道路幅員が狭くなり車両の摺れ違いが困難になっているため、堆雪幅確保事業による用地取得を実施し早期の工事着手に備えるとともに、新たに国道471号の冬季での安全で円滑な交通を確保するため融雪施設の設置事業に着手する予定だ。そのほか、計画に基づき橋梁、トンネル、洞門等の点検を進める」
 ――河川事業はどうか。
 「本年度も引き続き、一級河川宮川(飛騨市古川町谷付近)で、河川改修工事に向けた調査・設計を進め、河道計画を確定させる予定だ」
 ――砂防事業はどうか。
 「前年度に引き続き、岡前谷(飛騨市古川町袈裟丸)や出しケ谷(飛騨市河合町稲越)などで、えん堤工の整備事業を継続する予定。また砂防事業では芦ケ洞(飛騨市古川町上野)、急傾斜地崩壊対策事業では瓜巣4(高山市国府町瓜巣)が新規事業採択となり、調査・測量・設計などを実施する予定だ」
 ――建設業界へのメッセージをお願いしたい。
 「昨年度は当管内では幸い大きな災害などはなかったが、14年度は04年度の台風23号による豪雨災害以来の大きな災害が発生した。また、降雪による倒木などで一部の県道で通行止めが発生した。その際、昼夜を問わず多大なご協力をいただいた建設業者の皆さんには大変感謝している。特に本地域は山間地域であり、また降雪が多く寒冷な地域であることもあり、安全で円滑な冬季通行のを保するための除雪など、建設業界の協力は不可欠だ。強靱な県土整備を進めるためにも、引き続き迅速な対応とご協力をお願いしたい。また、建設工事での事故防止対策に取り組んでいただいているものの、工事関係者の事故や公衆損害事故が発生しているため、県内の事故発生事例の水平展開を図り、事故撲滅を目指したいと考えている。建設業界は社会資本の整備・維持管理の担い手であるとともに、地域の貴重な雇用の受け皿として極めて重要だ。地元に密着した住民の安全・安心を守る信頼される業界として、災害時の応援協力や除雪、そしてボランティア活動など一層のご協力をお願いしたい」

提供:建通新聞社