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建通新聞社(中部)
2016/06/22

【岐阜】国交省神通川水系砂防 2016年度事業展望

 神通川の源流部は、3000b級の山々が連なる北アルプス連峰と呼ばれる高山地帯のため、植生が乏しく日本有数の山地荒廃地であり、下流域に流出土砂による災害をもたらしてきた。神通川上流域は、中部山岳国立公園の一角をなす豊かな自然と、奥飛騨温泉郷などの資源に恵まれているため、毎年多くの観光客が訪れている。こうした観光資源とこの地で生活している人の安全・安心・生業を守り続けている国土交通省北陸地方整備局神通川水系砂防事務所は飛騨の砂守(すなもり)≠ニして先人の意思を受け継ぐ。直轄砂防事業が着手から100周年を迎えようという中、これまで以上に地元建設業と一丸となり、土砂防災啓発はもちろんのこと、事業効果のアピールや砂防事業の新たな取り組みを推進していく。2016年度、新たに飛騨の砂守≠ニしての誇りを胸に事務所の舵取り役となった岩舘知哉所長に事業展望を聞いた。(聞き手は岐阜支局=村松衡)岩舘知哉所長
―16年度の予算規模は。
 「事業費については、16億3900万円(前年度当初比1・01%増)で、内訳は、直轄砂防事業費が8億0760万円、直轄火山砂防事業費が8億3140万円となっている。
 ―事業実施の基本方針を。
 「16年度の事業実施方針については@引き続き土砂災害対策の着実な進捗A流木対策による下流域での被害防止B大規模土砂災害・深層崩壊対策Cソフト・ハード両輪とした災害に強いしなやかな地域づくり―を念頭に進めたいと考えている」
 ―主要事業について。
 「四つの方針に基づき、まずは土砂災害対策の着実な進捗を図るべく、砂防堰堤(えんてい)を主とした設備の整備を着実に進めるとともに、既存施設の適切なメンテナンスを行う」
 「新穂高渓流保全工および平湯川砂防樹林帯については、引き続き実施し、新穂高渓流保全工では、床固工と護岸工の延伸を、また、平湯川砂防樹林帯では、護岸工の延伸と合わせ、村上橋の架け替えを17年度に完了させる予定だ」
 「また、小鍋谷第11号上流砂防堰堤群では、砂防堰堤3基を計画しているが、工事用道路の整備とともに、最上部の14号砂防堰堤の整備を進め、江馬東町砂防堰堤群では、寺ナギ砂防堰堤の整備を進める。その他、白谷砂防堰堤群では、工事用道路の整備とあわせ、白谷第3号堰堤の整備を進める」
 「さらに、神通川流域では1919年より直轄砂防事業が展開されているが、脆弱(ぜいじゃく)かつ急流河川のため、常に大量の土砂が生産される厳しい環境下にある。このため整備された設備へのダメージも大きく、当該流域の安全・安心の確保のために各種設備の適切なメンテナンスは欠かせない。そこで、既存施設の点検を行うとともに、緊急性などを勘案し、優先度の高い施設より順次、機能回復や向上を付加しつつ対策を実施していく。16年度については、蒲田川流域の中尾第4号堰堤において、補強工事を実施する」
 「次に、流木対策については引き続き、高原川流木対策工として、既設の右俣谷第1号砂防堰堤の副堰堤部に鋼製スリットを設置することとしている」
 「また、大規模土砂災害・深層崩壊対策については、全国でも有数の活断層である跡津川断層が存在し、深層崩壊の危険性が高く土砂生産も著しい跡津川流域において、砂防堰堤の整備を進め、土砂災害に関する安全度を向上させる」
 ―課題解決に向けた取り組みは。
 「高原川上流に位置する北アルプスでは、不安定な地質構造で土砂流出が著しい。また、同事務所管内は多雨・多雪地帯であり、これまでも、大規模な土砂災害が繰り返し発生してきた。近年においても、平湯川や蒲田川を中心に豪雨により大量の土砂が生産され続けているほか、管内下流域には跡津川断層を抱えるなど、今なお、土砂災害発生のポテンシャルは高い状況にある」
 「こうした中、まずは、計画規模の災害に対してのハード対策を着実に実施することが重要。加えて、火山噴火や地震、局地的豪雨等により激甚化する土砂災害への備え、増大する災害リスクへの対応についても怠ることはできない。さらに、防災教育・啓発、防災訓練等を通じた地域防災力の向上を図ることや、災害発生時に、円滑な初動と被害軽減対策が確実に実施できるよう備えること、そのために、『焼岳火山防災協議会』や、14年度に立ち上げた神通川・庄川上流域大規模土砂災害対策連絡協議会、合同防災訓練の実施などを通じ、常日頃から関係機関との顔の見える関係をしっかり構築することなど、減災のための取り組み、ソフト対策の推進が必要不可欠だ」
 ―建設業界への要望を。
 「防災・減災のための着実なハード対策の実施、また、有事、土砂災害が発生してしまった場合における災害応急対策、災害復旧対策といった、いずれのフェーズにおいても、建設業の果たす役割は大きい」
 「飛騨の砂防は、地域の建設業とともに土砂災害と闘い続け現在に至っており、3年後の19年には神通川水系直轄砂防100周年を迎える。土砂災害から生命・財産、生活・生業を守り、当該流域がもたらす豊かな自然の恵みを次世代に享受できるよう、飛騨の砂守≠ニしての誇りを胸に、通常事業の実施はもとより、災害時の対応や防災啓発等も含め、引き続きご協力をお願いしたい」

提供:建通新聞社