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鹿児島建設新聞
2016/06/30

【鹿児島】ジレンマ〜建設業界の憂鬱〜 離島の担い手確保 

 総務省の国勢調査では、15年の本県人口が5年前の調査から約5万7000人減の164万8000人と過去最少を記録。離島のみならず本県における人口減少≠ノよる労働力不足は顕著で、社会構造からみても厳しい状態が続く。 
 来春卒業する大学生の採用活動が3月1日に解禁され、各地で会社説明会が始まったものの、相変わらず建設関連企業の個別ブースは閑古鳥が鳴いている。また、離島企業の求人にも反応はいま一つだという。 
 説明会に訪れた学生は「県外大手は給料や福利厚生など待遇面が魅力的な上に、早くから学生にアピールしている」「インターネットやSNSを駆使して、企業情報を発信する量が多い」と話す。また、ある工業高校の進路指導担当教師は「県外の求人担当者はよく顔を出すが、地元企業は皆無に等しい」とも。裏を返せば、努力もしないで「人手が足りない」と嘆くのは甘いと言われているようである。 
 そのような中、国土交通省はこのほど、中長期的な技能労働者の確保・育成を図る前提となる10年後の技能労働者数を初めて試算。技能労働者が堅調に推移したと仮定しても、10年後の技能労働者は44万人も減少するらしい。 
 この試算結果は、若手の入職促進と定着(離職の防止)を促す処遇改善に産学官の総力を結集して取り組まなければ、建設産業は今後成り立っていかないことを示唆。建設産業全体に対して警鐘を鳴らしているのである。 
 これまでの建設業界は正直、「アピール下手な業界であった」と言わざるを得ないが、いかにして建設産業の魅力や素晴らしさ≠発信していくか。各業界団体の青年部を中心に真剣に取り組む風潮が見え始めてきている。 
 24日に行われた県建設業青年部会では役員を一新。さらに広報部会を立ち上げ、これまで以上の出前講座の実施や業界のアピールに力を注いでいく。また、県内の電気工事業協同組合青年部も地元高校生と意見交換を行ったり、県建築協会青年部も学生らと座談会を開くなど積極的に業界をアピール。 
 県建築士会出水支部青年部では出水工業高校で就職ガイダンスを長年実施。昨年からは小学校高学年まで拡大し、未来の建築家を発掘するプロジェクト「建築の力〜感じよう建築の魅力〜」を開催した。 
 離島における島外流出、県外流出の要因として、賃金や福利厚生の充実度だけでなく、大きな夢やあこがれを持って島立ちする者も少なくない。そのような若者が近い将来、帰島した際に働ける会社を存続させるためにも、業界の垣根を越えて建設業の魅力を一体的にアピールし、入職率を高めることが今こそ求められている。