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西日本建設新聞社
2016/07/25

【熊本】連載「熊本地震〜復興の槌音〜H」 3カ月後の被災現場〈上〉

 熊本地震の発生から3カ月以上が経過した。2度にわたる震度7を記録した未曾有の災害は、未だ県内に多くの爪痕を残したままだ。15日に九州地方整備局の被災現場視察に同行し、国道57号阿蘇大橋や村道栃の木〜立野線、県道熊本高森線を取材。現状と復旧に向けたこれまでの動きを追った。

 大規模な土砂災害が発生し、阿蘇大橋が落橋した国道57号立野地区。今も山頂付近から斜面が700bにわたって大きく崩壊したままで、自然の驚異を目の前に、畏怖の念を抱かずにはいられない。現在、斜面上部に残る不安定土砂を除去するため、熊谷組が無人重機を遠隔操作し土留盛土工を施工している。5月5日から作業を開始したものの、6月は雨と霧による視界不良に作業を阻まれ、実質半分以下の作業日数となった。現場の土壌は、黒ボクと呼ばれる火山灰質の粘性土で覆われており、雨を含むとぬかるんで、重機の作業が捗らないという。
 7月に開かれた国交省の技術検討会で示された計画によると、現在進めている土留盛土工の整備後に、滑落崖周辺の不安定土砂の除去に入る方針。土砂が更に崩壊してもおかしくない状況のため、当面は無人重機を使った作業となる。不安定土砂を除去し、リスク低減を図った上で、次のステップとなる有人化施工≠ェ復旧の足取りを速めるキーワードとなりそうだ。
 崩壊した斜面から黒川渓谷に目を向けると、土砂とともに崩落し残骸となった阿蘇大橋の痛々しい姿が飛び込んでくる。その阿蘇大橋は、今月5日に国交省の技術検討会で再架橋計画が示されている。現在地から上・下流に架け替える4案のうち、円滑性、利便性、被災個所の回避などの点で、現在地から600b下流側に架け替えるB案が最も高い評価を得た。
 平成27年の道路交通センサスによると、阿蘇大橋は熊本・大津方面と高千穂方面相互の交通量が約76%を占め、大分・竹田方面と高千穂方面相互の交通量を上回っている。このことから熊本・大津方面に近い下流側に架け替える意味合いは大きい。更に下流側に架けるA案もあったが、阿蘇北向谷原始林の位置をトンネルで通すため、工期や環境への影響があるとして選ばれなかった。ただB案にも課題があり、計画地に想定される推定地表地震断層を避けた構造とするなど、安全性に配慮した橋梁形式を選ぶことが今後の計画に求められる。
 立野側の工事用道路から再架橋計画地を眺め、頭の中で新しく生まれ変わった阿蘇大橋の姿を思い描いた時に、少しずつではあるが着実に前進する復興の息吹のようなものを感じた。

提供:西日本建設新聞社