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日刊建設タイムズ社
2016/12/15

【千葉】「年末年始無災害」へ/ベルトコンベアで「コストより安全」/福澤・千葉労働局長らが安全パト/千葉県産業

 ――無事故で締めよう行く年を 無事故を誓おう来る年に――をテーマに展開する「2016年度年末年始無災害運動」が15日、全国一斉にスタート。「働く人たちが年末年始を無事故で過ごし、明るい新年を迎えることができるように」という趣旨から、厚生労働省の後援のもとに中央労働災害防止協会が主唱する全国的な運動で、来年1月15日までの1か月にわたり実施する。県内では、千葉労働局(福澤義行局長)及び各労働基準監督署、並びに建設業労働災害防止協会千葉県支部(尾頭博行支部長)らで構成する「千葉県産業安全衛生会議」(議長=福澤・千葉労働局長)が主催。これに先立ち同会議では、福澤議長を先頭に、準備期間にあたる今月7日、富津市不入斗地先の「館山自動車道天羽工事」(施工・五洋建設滑ル山道天羽工事事務所)の現場の「安全パトロール」を実施。同事業場の日頃の取り組み内容から、参加者は安全管理に対する多くを学んだ。

 ◆ダンプ往来と粉塵を回避

 この日の安全パトロールは、それらの運動がより活性化されることを目的とし、県内において毎年、安全衛生管理水準が高く、他社の模範となる工事現場を選出して実施するもの。館山道天羽工事事務所で福澤議長は、千葉労働局では「すべての人が安心・安全・安定して働ける千葉を目指して」のスローガンを掲げて労働行政を展開していることに言及したうえで「安全は魅力ある職場をつくるうえで必要不可欠なもの」と言明。昨今の労働災害状況については「死亡災害は減っている。建設業においても11月末現在で10件と、昨年同期に比べて4件減った」とする一方、「それでも県内建設業で10人の尊い命が失われているという現実がある」と厳しく指摘。さらに「私どもは『数字が減って良かったね』で終わらせる気持ちはまったくない。安全衛生なくして働き方改革はないと思っている」と強調。この日のパトロールについては「若手の新人監督官も帯同させたので、良い現場の見本を期待している」と述べ、あいさつとした。
 これを受けて同工事事務所の松村紀甫・現場代理人は「我々としては、日頃の安全活動に対しての誇示、新たな刺激といった意味合いもあり、本日のパトロールを快くお受けさせて頂いた。さらなるご指摘を頂ければと思う」とあいさつ。

 ◆40万時間の無災害を継続中

 引き続き、同じく福與智・監理技術者が、館山道天羽工事の概要に加え、この日のパトロール個所と作業内容について、まず、3か所ある工事用進入路は「富津中央側で張りブロック基礎型枠組立、砕石敷均し、法面整形。富津竹岡側では路床盛土、整形のほか、ズリ処理を行い、トンネルで掘削した残土を処分場に持っていく」と説明。トンネル内(昼勤)については「上下半掘削、トンネル下側掘削のインバート掘削とコンクリートの打設のほか、漏水がトンネル内に入らないように防水工と坑内整備中」とし、さらに、富津竹岡インターに最も近い竹岡坑口側では「切土法面整形と両排水溝のコンクリートの打設、配合試験用土壌サンプリングを行っている」とした。この日の作業員の合計は76人で、残土出し用ダンプは54台。これまで工事開始以来、40万時間無災害を継続している。

 ◆高い安全意識で全工期無災害を

 安全パトロール終了後に館山道天羽工事事務所では、木更津労働基準監督署の花坂泰秀署長が「敷鉄板の溶接やダンプのシート掛けの作業台などの細かい点にも配慮が行き届いており、以前にも増して感心した」と述べるとともに、トンネル工事では「ベルトコンベアで掘削土を外まで搬出するなど、新しい取り組みとして我々も勉強になった。トンネル工事と聞くと、暗く狭い場所で重機類が錯綜して作業をするイメージだが、ベルトコンベアの活用により、トンネル内でのダンプの往来がなく、すれ違いによる交通上の危険が回避され粉塵も抑えられることから、非常に視界が良好で、照度も十分に確保されていた」と解説。また、現場の至る所で五洋建設鞄ニ自のスローガンなどの安全標識が掲示してあったことには「入場者や協力会社の方々にも、現場の安全に対する意識の高さの動機づけにもなるので、今後もこの活動と状況を維持し、全工期無災害を達成して頂きたい」とエールを送り、講評に代えた。
 福與・監理技術者によると、前述のベルトコンベアの活用は設計書にはなく、総合評価における独自の提案で実施したという。トンネル内でのダンプの往来に比べて「コスト面では高くつくが、交通上の安全や粉塵による作業環境面を考慮すると、現時点ではこの方法がベストだと確信している」と話す。

 ◆安全とは企業にとって最も重視すべき対象/千葉労働局長 福澤 良行

 本日の年末年始無災害運動安全パトロールの実施についてご理解いただき、このような場を設定していただいた元請けの五洋建設株式会社をはじめとする関係者各位にはこの場をお借りし、厚くお礼申し上げます。
 また、ここにお集まりの皆様方におかれましても日頃から様々な作業を行う中で安全衛生について常にご留意いただき、災害を決して起こさず、快適な職場環境を作るために一人一人が意識を持って取り組んでいただいていることにつきまして併せてお礼申し上げます。
 さて、私ども千葉労働局では、すべての人が安心、安全、安定して働ける社会(ちば)をめざして、各般の労働行政を展開しておりますが、その中でも労働災害の防止については、働く人の命と健康に関わる問題であり、最重要課題の一つに位置付け取り組んでいるところです。
 このような中、本年の千葉県内の労働災害発生状況を見ますと、死亡者数は11月末現在28人と前年同期比で8人減少したものの、休業4日以上の死傷者数は10月末日現在3620人と前年比で1・6%増加しており、「死亡者数及び死傷者数の15%以上の減少」という第12次労働災害防止計画の目標達成が厳しい状況にあります。
 建設業では、死亡者数は10人と前年同期比で4人の減少、死傷者数は402人と、前年(418人)に比べ3・8%、12次防の目標の基準年の平成24年(493人)と比べても18・5%の減少となりました。これは皆様の日頃の取り組みの成果と考えております。
 しかし、死亡災害は本来あってはならないものであり、数字の増減に一喜一憂することなく、「これ以上の死亡災害・死傷災害を絶対に発生させない」との強い意志で、今一度、安全衛生管理・活動が有効に機能しているか、形骸化していないか確認をお願いします。特に、既に報道でご承知とは思いますが、ごく最近の今月3日、岐阜県のトンネル工事現場において1名の方が亡くなる災害が発生したところであり、一層の注意をお願いします。
 また、これも既に報道でご承知とは思いますが、先月は16日に山口県で、19日に長崎県で、トンネル内で作業を行っていた方が一酸化炭素中毒とみられる症状で搬出されるという災害が立て続けに発生し、長崎県の災害では、1名の方が亡くなっております。トンネル内の作業に当たっては、確実に換気、測定を行うようよろしくお願いします。
 最後に、今月から年末年始の労働災害防止強調期間が始まっておりますが、皆様方におかれては、本日のパトロール及び本期間を機に、改めて、安全とは企業にとって最も重視すべき対象であることを強くご認識いただき、トップから現場で作業を行う皆さんに至るまで、それぞれの立場で労働災害防止活動に積極的に取り組んでいただくようお願いし、私からの挨拶とさせていただきます。

 ◆「無事故の歳末」「明るい正月」合い言葉に/建設業労働災害防止協会千葉県支部長 尾頭 博行

 例年どおり、本年も年末年始労働災害防止強調期間を迎えることとなりました。
 千葉県内建設業における死亡災害は、平成23年に過去最少の11件を記録した後、3年連続で増加し、昨年は24件の発生をみています。本年は年初以来極めて少ない数字で推移し、7月7日の当支部労働災害防止大会の時点では2件と最小記録の更新、初の一桁台は確実視されていましたが、8月1か月で6件発生するなど、11月末現在で14件を数えるに至っております。
 墜落災害・交通災害が大幅に減少するなか、特に注意を引くのが伐木及び造材作業中に伐倒木に激突されるなどの死亡災害が4件も発生していることです。そのいずれも被災者はチェーンソーで伐木または枝払いの作業中でした。これら災害は過去には林業において集中的に発生していた災害ですが、林業の活動量が圧倒的に減少するなか、災害も減少していますが、建設工事に伴い障害となった立木を建設業者が処理する過程での災害は相当あるようです。
 ただ、千葉県内でこれほど集中的に死亡災害が発生した例はないように思います。被災者の方々が伐木等及びチェーンソーの取り扱いについて、必要な知識と事前の準備が万全であったか心配になります。
 また、7月と8月に1件ずつ熱中症による死亡災害が発生しました。これまで機会ある毎に熱中症への注意喚起が行われ、以前に比べ熱中症対策は全般的に浸透して来た印象があるなか、大変残念な結果となっています。
 いずれにしても、県内建設業の死亡災害が大幅に減少するよう関係者一同が「無事故の歳末・明るい正月」を合い言葉に、建設現場における無災害を目指しましょう。k_times_comをフォローしましょう
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