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福島建設工業新聞社
2017/01/16

【福島】インフラマネジメント技術者育成を要請/県内学界が県に

 中村晋日本大学工学部地震防災研究室教授らは12日、県土木部に対して、産学官が連携して社会インフラマネジメント技術者の育成・確保に取り組むよう要請した。社会インフラや地域建設業分野に携わる県内学識者の立場から、社会資本の本格的な維持更新時代に対応するためには行政、建設業双方で維持修繕・更新技術の人材確保とスキルアップが不可欠だとして、資格認定制度の創設を含めて、官民による推進組織の立ち上げを訴えた。大河原聡県土木部長は「メンテナンス技術者育成に重点を置くことが重要。しっかり取り組んでいく」と前向きな姿勢を示した。
 要望したのは、中村教授と岩城一郎日本大学工学部コンクリート工学研究室教授、奥本英樹福島大学経済経営学類教授、芥川一則福島工業高等専門学校ビジネスコミュニケーション学科長教授。県建設業審議会が県に今後の県内建設業の在り方を答申したことを受けて、中村教授らが県土木部を訪れ、大河原部長、室井良文技監、中村修二政策監、杉明彦企画技術担当次長に要望書を提出した。
 高度経済成長期に集中的に整備されたインフラストックの維持更新については、インフラメンテナンス国民会議を昨年設立するなど、国が社会全体で取り組む姿勢を鮮明にしている。一方で維持・修繕分野の技術者不足が深刻化しており、長崎県や岐阜県、新潟県などは、独自のME(メンテナンス・エキスパート)認定制度による技術者育成を展開している。
 県建設業審議会の答申でも、維持管理・更新の適切な対応の施策として、官民連携プラットフォームの設置を提案。産学官の連携を強化するため、情報共有の場の創設や技術者育成のための研修会等の開催、MEやMMR(メンテナンス・マネージャー)の育成スキーム構築などを行政の取り組みとして盛り込んだ。
 要望では、こうした状況を踏まえ、県土が広大で管理施設が多い本県では、官民の技術者不足がより深刻になると危惧。行政が安全なインフラサービスを継続的に提供していくためには「地域のインフラは地域で守る」の考え方の下、橋梁やトンネルだけでなく、舗装、斜面、上下水道、河川構造物など社会基盤施設全般におけるME、MMRなどの人材育成に向けて、産学官が連携した戦略的な取り組みが必要だと訴えた。
 中村教授は、地域建設業が維持管理分野で事業量を安定的に確保する仕組みづくりに対応するための技術力や、県におけるメンテナンス技術者の資格認定制度の創設なども課題に挙げた上で、技術者育成の実施体制構築に理解を求めた。
 要望を受けて、大河原部長は「老朽化する社会資本や震災復興に伴い増加する管理施設の維持管理を限られた予算で進めていくためには、効率的・計画的に点検・診断、更新を図っていくことが重要」と述べ、審議会の答申内容も踏まえて、技術者育成に前向きに取り組む考えを示した。