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日刊建設タイムズ社
2017/05/26

【千葉】「平準化」と「適正利潤確保」/地域貢献の姿勢を明確化/千葉県建設業協会

 (一社)千葉県建設業協会(畔蒜毅会長)の2017年度定時総会が25日、千葉市内のオークラ千葉ホテルで開かれ、17年度事業計画などを全会一致で可決した。5年前の規模とほぼ変わらない水準に留まっている国の公共事業予算などから、地方建設業の受注環境は「じり貧傾向」(同協会)にある。また、首都・東京をはじめとする大都市と地方との「事業量の地域間較差」に加え、中央大手建設業と地方中小建設業の「利益率の企業間較差」が拡大する「両極化傾向」(同)が顕著。畔蒜会長は、地域建設業が将来にわたり、地域の安全・安心を守るという社会的使命を果たしていくためには、「企業経営の安定化」「人員や資機材の確保」「技能と技術の継承」を強調。「そのためにも公共事業予算の確保は不可欠」と訴え、発注機関に対して、受注機会のさらなる拡大をはじめ、年間を通じた「発注と施工の平準化」、改正品確法の目的の一つである「受注者の適正利潤確保」が、末端まで浸透する施策を懇願した。

 ◆「経営安定化」と「人材確保」が喫緊

 総会の冒頭のあいさつで畔蒜会長は、建設業界では今、担い手の確保・育成が喫緊の課題となり、社会保険未加入対策をはじめ設計労務単価のさらなる引き上げ、週休二日制の普及・定着、アイ・コンストラクション等による建設現場の生産性向上など、課題解消への取り組みが進められていることに言及。
 この1年間を振り返り「昨年4月の熊本地震をはじめ、夏には東北地方や北海道に大型台風が上陸するなど、全国各地で自然災害の脅威にさらされた」とし「記憶に新しいところでは、本年3月末に県内の旭市で、鳥インフルエンザが発生した」と報告。鳥インフルに関しては「地元の八日市場支部長をはじめ、会員企業が昼夜を分かたず、72時間以内に処理をし、拡散が防げた状況にある」と述べるとともに「これも地域をよく知る建設業だからこそ成しえたことであり、水位が高く地盤が悪い中で二次災害を起こすことなく、県及び市の行政の要望に応え、我々地域の建設業の役割が如何に大きかったかということを、地域にPR出来たと思う」と振り返った。
 これらを踏まえて畔蒜会長は「こうした自然災害等の猛威から住民の生命・財産を守ることは、地方建設業に与えられた重要な役割の一つ」と強調し「我々は『自然災害対応空白地帯を作らない』ことを念頭に、その思いをより強くしたところである」と言明。今後においても「県民・県土の安全・安心を守るために必要な社会資本整備の重要性をはじめ、日頃から県内各地の住民や行政と密着し、地道な活動を展開している『中小建設業の真の姿を知ってもらうための活動』に努めていきたい」との考えを示した。
 しかし、地域建設業が将来にわたり、地域の安全・安心を守るという社会的使命を果たしていくためには、前述の通り「企業経営の安定化を図るとともに、人員や資機材の確保、技能と技術の継承などが必要になる」と主張。一方、自衛隊や消防等については「常日頃から税金を使って訓練をしている状況にあり、我々建設業の役割とは大きく違う」と述べたうえで「それらの観点からも、建設業の役割が如何に大きいかということを、この場を借りて訴えていきたい」と断言。
 そのためには「成立した担い手3法において、国が企業の末端に至るまで、受注者が適正利潤を得ることが出来るように訴えていきたい」と述べるとともに「建設業界としても企業コンプライアンスを向上させ、地域住民から信頼される存在として、地域に貢献する建設企業の姿勢を一層明確にし、行動していかねばならない」と認識を新たにし、あいさつを結んだ。




 ◆県民の安全安心の「守り手」/森田知事が祝辞

 この日は来賓として、森田健作知事と足立敏之・参議院議員が駆け付け、総会の議案審議を前にあいさつ。この席で森田知事は「畔蒜会長からも話があった3月の鳥インフルエンザにおいては、みなさんに対して本当に感謝しているところである」と謝辞。また「この一報が入った時に建設業のみなさんは、一瞬時にして準備万端とし、県からの要請に対して現地に真っ先に駆けつけ、掘削等を含めて大変な力を賜った」と付け加えた。
 さらに森田知事は「みなさんの建設業は、まさしく県の基幹産業であり、県民の安全安心の『守り手』でもある」と称賛。「今後も千葉県建設業界の発展のために、しっかりと尽力させて頂きたい」と述べ、祝辞とした。

 ◆諸情勢
 政府と日銀による経済・財政政策により、長年続いたデフレ経済を脱却し、回復基調に向かうかにみえた日本経済だったが、中国経済の成長の鈍化が明確になった影響や米国新政権の誕生に伴う政治・経済情勢の流動化により、足下の経済情勢は不透明感を増しており、数ヶ月後の情勢さえ見通すことが難しいという状況に直面している。
 また地方経済についても、依然として活性化する気配はみられず、国の新年度予算の早期執行と合わせて、新たな景気対策を求める声が強まっている。
 そのような情勢下で、千葉県の2017年度当初予算は、3月の知事選に伴う骨格編成予算となり、人件費や社会保障費などの義務的経費や県民生活に密接する事業、県内経済の活性化に資する事業費等の計上に留まり、政策判断を要する事業や新規事業、投資的経費の新規着手分は「肉付け予算」として6月補正予算で対応することになった。
 一方、公共事業を巡る情勢は、2011年10月に発足した安倍政権による大型補正予算の編成により、一時的に事業量は増加したものの、それ以降の単年度予算については、前年度の水準は確保されても、公共事業を用いる形での特段の景気対策には踏み込んで来なかった経緯から、17年度当初の国の公共事業予算も、ほぼ5年前の規模と変わらない水準に留まっている。
 そのため、地方建設業の受注環境はじり貧傾向をたどっており、オリンピック開催等に関連する多くのビッグプロジェクトを抱える首都東京を始めとする大都市と地方での「事業量の地域間較差」と、中央大手建設業と、地方中小建設業の「利益率の企業間較差」が拡大する一方という両極化傾向が顕著になっており、これを食い止めるための施策の導入が待ったなしという状況に直面している。
 こうした状況を受けて国土交通省では、遅ればせながら、建設産業の10年後を見据えた産業政策を議論する方針を打ち出し、当面、建設産業政策会議の中に「地域建設業ワーキンググループ(WG)」を設置し、地域建設業に期待される役割、地域建設業の方向性、地域建設業が今後目指すべき姿など、7テーマについて検討し、地方のインフラ整備を支え、災害時には、最前線で、地域と住民の安全・安心の確保を担う「地域の守り手」である地方中小建設業を評価していく方向に踏み出した。
 本協会を始め地方建設業界には、建設現場の生産性向上に向けたi-Constructionなど、ICT(情報通信技術)化等の先端的な施策の導入を加速させることより、地方経済と地域の安全・安心を守る建設業の活性化対策を優先させるべきという根強い意見があることから、国交省での今後の産業政策に関する議論の帰趨に注目している。
 いずれにしても、地球温暖化等に起因するとみられる大型化、激烈化する一方の気象現象に加えて、地震や火山噴火などの頻発により、人命と社会・経済インフラを喪失し続けている事態は、依然として脆弱な国土整備の実情を露呈しているものであり、災害に強い国づくりを前進させていくことが喫緊の課題になっている。
 また、いわゆる「担い手三法」により、建設産業の担い手を育成・確保していくために、受注者の適正な利潤を確保すること、そのために発注者は適正な予定価格を設定することを始めとする規定を地方公共機関の末端にまで浸透させ、徹底させていくことが、依然として大きな課題として残されている。
 こうした発注者に課せられた責務の一方で、建設業界には、技術・技能者の育成確保と賃金、休暇、社会保険の加入対策の推進など、人材確保と労働環境の改善により、若者が将来を託すことができる魅力ある産業づくりへの一層の取り組みが求められているほか、今後、一層重要になる公共施設の長寿命化対策への貢献や、自然災害発生時の緊急対応と復旧活動を通じた地域住民の安全・安心確保、そして、地域社会と経済の活性化に貢献していくための活動強化が求められている。
 公共工事の受注と施工を主力とする企業で組織する本協会にとって、常に法令順守に基づく適正な企業活動を徹底していく姿勢が求められており、「協会行動規範」により、法令順守を大前提とする企業活動の展開が図られるよう、啓蒙活動の強化に取り組んでいかなければならない。
 本協会としては、以上のような認識の下、次の具体的な事業計画に基づく活動を展開していくこととする。

 ◆具体事業
 【地域社会・公共福祉への寄与】
 ○良質な住宅・社会資本の整備
 ○地震・風水害等、災害時における官民協力体制の推進=@千葉県及び国土交通省関東地方整備局との災害時対応協定に基づく活動A千葉県との防疫協定締結に基づく家畜伝染病発生時の対応
 ○国、県と連携した「水防訓練」「震災対応訓練」等への参加=国や各地域の行政機関が主導する水防訓練や演習への参加、防災の日前後に行われる県土整備部の震災訓練への協力と参加
 ○ボランティア活動の充実と支援=各支部を主体とする清掃活動など地域貢献活動の充実と支援
 ○協会入会規定の明確化と資格審査の厳正化
 ○公共・公益性のある各種行事等への参加協力
 【協会「行動規範」の順守】
  行動規範順守の徹底及び企業コンプライアンス向上に資する講習会等による啓蒙
 【国、県に対する要望】
 ○国土と県土の強靭化促進に向けた国・県等の公共事業予算の安定的・持続的確保と工事執行に関する要望
 ○地方経済の活性化につながる県内建設企業に対する国、独立行政法人等、政府関係機関発注工事の受注機会拡大要望
 ○公共工事の品質確保促進法に基づく運用指針の浸透状況検証及び入札・契約制度の一層の改善に向けた活動の強化、適正金額での受注につながる発注機関に対する設計・積算、適正工期の設定、発注時期・納期の平準化推進に資する要望・提案活動の強化
 ○発注者側若手技術者の資質向上に繋がる現場体験制度等の導入提案
 【建設産業構造改善事業の推進】
 ○労働福祉・賃金体系・雇用管理体制の確立と雇用改善の推進(労働者確保育成事業)
 ○新たな競争の時代における技術力と経営基盤強化への対応=@人材の確保・育成に向けた対応(職業体験学習会への支援)A新入社員研修ほか各種研修会の主催・協賛参加BICT土工をはじめとする新技術・新工法等に関連する研修会、講習会等の開催と参加C国、県の入札・契約方式等に関する講習会D建設キャリアアップシステムへの対応
 ○社会保険未加入問題への対応=@建設業社会保険推進連絡協議会(仮称)(5年間の未加入対策の計画期間を終了し、協議会名を変更)及び千葉県ワーキンググループ活動への参加と対応A会員に対する情報提供と啓蒙活動
 ○CCI活動の推進=現場見学会、重機体験学習会、出前講座、出張授業等によるイメージアップ対策の展開(建築バージョン授業の創設と参加、協力)
 【建設業・福祉共済対策の推進】
 ○勤労者退職金共済事業の推進
 ○千葉県建設業健康保険組合への加入促進
 ○建設業福祉共済団との連携強化と「建設共済保険制度」への加入促進対策の推進
 【公共工事労務費調査並びに資材費調査への適切な対応】
 【建設業に対する暴力団等の徹底排除】
 ○千葉県暴力団追放県民会議との連携強化
 【関連団体との連携の強化】
 ○千葉県建設産業団体連合会との連携
 ○千葉県土木施工管理技士会との連携
 【公共工事中間前払保証事業の推進】
 【広報活動の推進】
 ○広報誌「建設展望」の編集・発行並びにインターネット掲載・配信等による建設業への理解促進につながる効果的な広報活動の展開
 ○公共事業と建設業に対する理解促進に有効なメディアを活用した広報活動の取り組み
 ○県内建設企業の若手技術者確保に資する広報資料の作成とPR活動

 ◆建退共共済制度の優良事業所表彰も

 【表彰式】
 ○永年勤続功労者の表彰
 ○千葉県優良工事表彰施工主任技術者の表彰
 ○雇用改善優良事業所の表彰
 ○建退共共済制度優良事業所の表彰
 【会議等】
 ○三役会議(随時開催)
 ○常任理事会(随時開催)
 ○理事会(年2回開催)
 ○各種委員会(随時開催)
 ○三県連絡協議会(年1回)
 ○関東甲信越地方協会地域懇談会・ブロック会議(年1回)
 ○関東地方整備局及び同出先機関との意見交換会(随時開催)
 ○県土整備部等をはじめとする千葉県関連機関等との意見交換会(随時開催)
 ○その他異業種団体等との連絡会議(随時開催)k_times_comをフォローしましょう
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