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建通新聞社(東京)
2017/05/29

都 入契制度改革で低入調査適用範囲縮小

 東京都の小池百合子知事は、5月26日の定例記者会見で入札契約制度改革について触れ、中小建設業への影響に配慮して低入札価格調査制度の適用範囲を縮小することを明らかにした。適用する工事の予定価格(規模)を引き上げ、中小建設業が入札参加する案件は原則として最低制限価格を維持する。また、財務局による試行について、6月26日に公告(公表)する契約案件で開始する考えを示した。
 入札契約制度改革の実施方針に沿った制度改革の第1弾として、都は@予定価格の事後公表AJV結成義務の廃止B1者入札の中止C低入札価格調査制度の運用範囲の拡大―を2017年度に試行する。予定価格の事後公表は原則として全ての知事部局の工事、それ以外は財務局が契約する工事(予定価格が建築3億5000万円以上、土木2億5000万円以上、設備4000万円以上)で実施するとしていた。
 小池知事は、予定価格の事後公表、JV結成義務の撤廃、1者入札の中止の3点については「当初の方針通り実施する」と述べる一方、建設業界へのヒアリングで特に懸念する声が多かった低入札価格調査制度の適用範囲について「中小企業への影響に配慮し、予定していた適用範囲を縮小する」と見直す考えを示した。
 試行開始を前に知事が建設関係など26団体に行ったヒアリングでは、低入札を誘導するかのような制度設計に対して、不安の声や改善を求める意見が続出。品質の確保や人材の確保育成の“足かせ”となる、採算を度外視したような低価格での応札が多発することがないよう、多くの団体が要望した。
 小池知事は「低入札価格調査制度の適用範囲の拡大については最も意見が多かった。当初設定していた適用範囲では中小企業の(入札に参加する)価格帯も含まれていたことから、適用範囲を縮小することで、中小、とりわけ零細企業への影響に配慮した」と見直しの背景を説明。入札契約の透明性、競争を確保しつつ「中小建設業者が活躍できる環境も確保する」と述べ、財務局の契約案件のうち、建築工事の適用額を「4億4000万円」、土木工事を「3億5000万円」、設備工事を「2億5000万円」に引き上げると説明した。
 また、試行の時期について「建設業界の皆さんの準備も必要であり、一定の周知期間が必要」と述べ、1カ月後の「6月26日に(財務局が)公表する案件」で開始することを明らかにした。

「ひとくちメモ」
 都の入札契約制度改革の実施方針に基づく取り組みは、予定価格の事後公表を除き、原則として財務局の契約する比較的規模の大きな案件で試行する。小池知事は団体ヒアリングを通じて「中小企業の入札参加機会が増える」と強調したが、競争性だけを高めれば、低価格入札が頻発することは過去の経験から明らかだ。他の知事部局や公営企業部局での試行拡大や本格実施を不安視した中小建設業団体が、明確に反対の声を上げた。試行を前にした低入札価格調査制度の適用範囲見直しは、一部ではあるもののヒアリングの成果と言えそうだ。

提供:建通新聞社