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建通新聞社(神奈川)
2017/06/28

【神奈川】工場立地、都市間競争激しく 統計で見る神奈川

 製造業が工場を立地する際に重視するのは、「本社や他の自社工場との近接性」に「地価」、それに「工業団地」だという。近年、これら3要素に関わる優位性を武器に茨城県、栃木県、群馬県での立地が増えている。経済産業省の工場立地動向調査によると、2014年立地件数の全国上位を北関東3県が占めた。北関東自動車道の全線開通が大きく影響したとみられる。全国順位が33位だった神奈川県内でも、県央や臨海といったアクセスなどに恵まれた地域での立地が目立つ。今回の「統計で見る神奈川」は、工場立地の動向を探る。
 高崎市を起点とする北関東自動車道は、宇都宮市や水戸市などを経由して茨城県ひたちなか市に至る145`。11年3月の全線開通を契機として沿線に数多くの工業団地が整備されたことで、工場の立地件数は急増。14年は各県とも100件を超え、リーマンショック以前の水準を大きく上回った。
 これに対して神奈川県は、過去10年間(07〜16年度)で08年の45件が最多。11年の9件を底に、以降は増加傾向にあるものの、同じく首都圏に位置する埼玉県や千葉県と比べても低調に推移している。
 県内の傾向を探るため、工場立地と完全には一致しないものの、国土交通省の建築着工統計調査で「製造業用建築物」の推移を調べてみた。12〜16年度に着工した棟数を市町村別(政令市は区単位)に見たところ、トップは川崎市川崎区の165棟で、以下、平塚市110棟、横浜市鶴見区90棟、藤沢市73棟、厚木市70棟となった。上位10市町村にはこの他、相模原市緑区や秦野市、愛川町なども入る。
 これらのエリアは、臨海部であったり、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)県内区間の開通に伴ってアクセスが改善されたところだ。床面積ベースでも同様な傾向にあることが分かった。
 北関東3県、そして神奈川県の着工上位エリアに共通するのは、道路をはじめとするインフラ整備の進展が影響したということだろう。県内では、今後も横浜湘南道路や高速横浜環状南線(いずれも20年度予定)、県道603号・上粕屋厚木(18年度予定)などの開通が見込まれ、工場や物流関係施設の整備が期待されている。
 さらに、神奈川県では、これまでの「ものづくり」分野に加え、未病やロボット、エネルギー、先端医療、ITエレクトロニクスといった、「成長産業」への支援に力を入れている。海外企業の誘致を見据えた、産業用地・賃貸オフィス情報サイトも今年4月に開設したばかり。
 近隣県に比べて高水準にある地価など課題はあるが、道路をはじめとするインフラ整備、また、新たな産業も視野に入れた企業誘致によって、北関東などとの都市間競争に活路を見いだしたいところだ。
 提供:建通新聞社