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建通新聞社四国
2017/10/13

【徳島】方向性議論(JR連続立体化向け)徳島駅周辺まちづくり検討会

 徳島市は6日、「徳島駅周辺まちづくり計画策定検討会」(委員長・近藤光男徳島大学大学院教授)の第2回会合を開催。前回の会合で新たに加えた駅周辺のまちづくりにおける三つの整備方針(案)に対応したまちづくりの方向性について議論した。
 三つの整備方針(案)は「より一層のにぎわいの創出(→都市機能集積による都市のにぎわいの創出)」「都市の魅力づくり(→魅力ある公共空間の創出)」「公共交通機関の利用促進(→駅周辺へのアクセス性・回遊性の高いモビリティ)」。
 都市機能集積による都市のにぎわい創出では、ターゲットを「若者・若年層」「子育て層」「シニア層」「観光客(来訪者)」とし、駅周辺に導入すべき都市機能やにぎわいを創出するためのソフト事業について、▽居住機能▽業務機能▽商業機能▽文化・スポーツ・レクリエーション機能▽観光関連機能▽教育・子育て関連機能▽医療・福祉機能−の七つの都市機能とターゲット層との需給バランスを、現況データなどを基に確認。徳島市や周辺市町村で大きく人口が減る中、まちづくりの方向性(駅周辺にどのような都市機能を備えるべきか)を整理した。
 居住機能については、人口減少・高齢化が進む中「にぎわい創出につながる生産年齢人口や年少人口の割合向上に向け、良好な住宅を供給・誘導し、日常生活に必要な商業機能を充実させ、生活の利便性向上を図る」とした。業務機能については、減少傾向にある事業所数や従業者数ついて、特に駅周辺の減少が顕著であるとし「従来のオフィスビルの供給などは現実的でなく、総合戦略に掲げた大学と連携した企業支援や女性の就業促進に係る機能といった新規性のある機能を誘導する」とした。
 商業機能については、全市的に事業所数や販売額が減少傾向にあり、郊外部への大型店舗の出店も見られ、空き店舗の発生など駅周辺の商業環境は極めて厳しく、駅周辺での日常の買い物利便性が低下する懸念があることから「現在の商業集積を維持しつつ、居住者向けの商業機能を誘導する」とした。ただ、委員からは「物販だけのデータだけでなく、飲食店の現況調査も必要」などの意見もあり、今後実態を調査する。
 文化・スポーツ・レクリエーション機能については、駅西側駐車場に新ホールを計画し、にぎわい創出が期待される他、駅周辺に集積している市立体育館や中央武道館などの施設でいずれも老朽化対策が求められることから「新ホールと周辺施設との連携で駅周辺のにぎわいを面的に広げ、より多くの集客を目指す他、全市的な公共施設との統廃合も視野に施設機能を維持・更新・強化し、多くの人を吸引していく」とした。
 観光関連機能については、市最大の観光資源である阿波踊りへのインバウンド観光を呼び込めていない点、ピーク時の宿泊施設が慢性的に不足している点などを懸念して「観光客の増加に対応する宿泊機能や駅前観光案内所の強化」などを挙げた。特に委員からは「観光案内が不十分」「ホテルとの連携が必要」などの指摘もあり、現在他部署で進めている徳島東部地域DMOの設立に向けた取り組みや観光案内所の整備基本計画などと整合を持たせつつ、連携し進めていくことを確認した。
 教育・子育て関連機能については、県平均に比べ既婚女性の就業率が低い市は保育へのニーズが高く、市内では県内で最大の待機児童数を抱え施設が不足していることなどから「居住機能や業務機能の導入に関連して子育て関連施設を量・質ともに機能強化し、子育て世帯を受け入れていく」とした。委員からは「駅中心に市外の人も利用できる施設があればにぎわい創出につながる」などの意見があった。
 医療・福祉機能については、すでに充足していることから「機能強化や機能誘導は行わない」とした。
 次に魅力ある公共空間の創出では、生かすべき地域資源を緑の資源として「眉山・中央公園」、水の資源として「新町川・助任川」を挙げ、それぞれの有効活用の方向性(機能強化、景観形成、アクセス性向上の3段階)を議論した。
 眉山については、駅周辺に視点場がなく景観阻害要素も多い、また駅から700bほど離れており、歩行者にとって良好なアクセス性が確保されていないことなどから「寺町との連携など年間を通した各種イベントの開催、街路樹や横断歩道橋、ファサードなどの改善による駅周辺での視点場の確保や視点場からの眺望を確保する景観誘導、シンボルゾーン(駅広場や駅前通り)における歩行者動線の整備、コミュニティーサイクルなど新しい回遊手段の確保」を挙げた。
 中央公園については、複数のスポーツ施設を有するなどレクリエーション性を備えるが、鉄道や車両基地で分断され、駅とのつながりが希薄になっている現状を踏まえ「鉄道車両基地跡地を活用した機能強化やスポーツ施設と連携した健康関連機能導入、寺島川の復元の他、駅周辺への視点の確保や視点場からの眺望を確保する景観誘導を図り、駅北口開設・北口への交流広場整備といった連続立体交差事業を視野に入れた動線整備やコミュニティーサイクルなど新しい回遊手段の確保」を挙げた。
 新町川・助任川については、総じて遊歩道(プロムナード)や公園が整備されているが、空間的に連続していない箇所がある他、クルーズ船乗り場が駅から離れているため、有効活用できていない点などを踏まえ「プロムナードの連続的整備、駅周辺での水を感じられる空間整備、シンボルゾーンにおける歩行者動線整備やひょうたん島クルーズ船乗り場の新規整備」を挙げた。
 最後に駅周辺へのアクセス性・回遊性の高いモビリティでは「駅前広場」「ネットワーク」「移動手段」の三つの視点で駅周辺へのアクセス向上と駅周辺の回遊性向上に必要な事項を検討。
 駅前広場については、市内最大で四国有数の交通ターミナルとしての機能強化と鉄道南北の連絡、環境空間や交流機能の拡充を図り「南北一体でとらえる駅前広場」。ネットワークについては、踏切除去などのボトルネックの解消、使い方に合わせた道路空間の形成や動線の連続性の確保により「ボトルネック状況と道路の使われ方の把握」をそれぞれ図り「鉄道高架事業を推進する」とした。
 また、移動手段については、自動車に依存しない公共交通による交通体系のけん引と快適な回遊を促す仕掛けづくりが必要とし「駅周辺を中心とした公共交通利便性回遊の仕掛け」を図る。ただ、委員からは「車社会からの脱却は困難。車社会も含めて考えるべき」「駅周辺にレンタカー、不法駐輪対策も必要」「公共交通の自由度を上げ、補助交通をコントロールすべきではない」などの意見もあった。市は今後、これらの実現に向け、WEB調査や実態調査により駅前広場や駅周辺の使われ方に関するデータを収集し「鉄道高架事業の効果を生かしながら、公共交通を中心としたまちづくりを展開」することにしている。
 同検討会は、連続立体交差事業に関連して、同市が事業主体となり実施する徳島駅周辺のまちづくりについて、現計画の「都市交通の改善」「防災機能の強化」「交流促進、にぎわいの創出」「ユニバーサル機能の強化」の四つの整備方針にこれらを加え、より一層のにぎわいの創出や都市の魅力づくり、公共交通機関の利用促進などの観点から、新たな「徳島駅周辺まちづくり計画(素案)」を策定するもの。今後、月1回のペースで会合を重ね、2018年2月の素案づくりを目指していく。
 次回は11月に開催。「駅周辺のまちづくり上の課題」「まちづくりのコンセプト・将来像・整備方針」について議論することにしている。

提供:建通新聞社