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北陸工業新聞社
2017/12/12

【福井】懐かしい記憶を受け継ぐ建築を/JIA福井恒例の建築文化講演会開く/−(上)−/単なる箱でなく、場所の雰囲気こそ財産

 公益社団法人日本建築家協会北陸支部福井地域会(出田吏市会長)が主催する建築文化講演会は9日開催され、講師にまねく建築家の堀部安嗣氏(50)が「私の考えるパッシブデザイン」と題し話した。福井市下馬の市美術館2階市民ギャラリーで。学生も含む大勢が聴講し、会場は福井地域会の会員作品展が取り囲んだ。
 堀部氏は先ず氾濫する情報に足をすくわれそうになると伊勢神宮や東大寺、薬師寺など日本の古い木造建築を中心に訪ね歩く習慣から披露。「まったく無駄がなく必然性すら感じる建築美は記憶の底を見つめるよう」と気持ちをリセット。また韓国の古い木造建築からも学び「日本とは似て非なる様式で、曲がった木を大らかに使い素朴でエレガント、品格も十分感じる」と率直に。現代の「重箱の隅をつつくよう」な建築から「もっと柔らかく人間的な建築が大切」と実感を込めた。
 氏が考えるパッシブデザインとは、一般的には冬に陽射しを取り入れ、夏に遮蔽するなど断熱や気密関係の技術論で捉えるが、その把握の仕方を狭義と指摘し「元々その場所(周囲)にあるものを最大限に生かす発想で、風土や環境、記憶を継承することにつながる」と広義の視点を力説した。「建築は単なる箱ではない。場所が持つ雰囲気やたたずまいこそが財産で、それらを確保した上でのアプローチが大切」であり、歴史(懐かしさ)の文脈を受け継ぐ貴重な行為とも。かつて建築家の林昌二氏から木造建築の優秀性は「移築や増改築、曳ける」点で、自身も日々「新築はこれまでの手癖(経験の延長線上)でできるが増改築にあっては手癖を封印し、新たな工夫が求められ発見がある」と強調。新築に負けない増改築の魅力を様々に紹介して、最後に「木造は軽視されがちだったが、今後は建築全体の中心に戻ってくる時代の到来」と予見し確信を示した。

 客船プロジェクトを通じ、海と縁側の相性の良さを発見した等々、さまざまな創意工夫を披露する講師の建築家・堀部安嗣氏

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