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建設新聞社
2017/12/19

【東北】ICT活用工事の見える化など推進/復興係数の継続を表明/国交省・復興加速化会議

 国土交通省は16日、復旧・復興事業の円滑な施工対策の在り方などを話し合う復興加速化会議を仙台市内で開いた。この中で国交省の石井啓一大臣は、被災3県に適用している復興係数を2018年度も継続することを表明。建設業の担い手不足に対応するため、「東北復興働き方・人づくり革命プロジェクト」と銘打ち、ICT活用工事の見える化や設計・施工・維持管理分野へのCIM導入などを推進していく考えも打ち出した。
 復興加速化会議は、復旧・復興事業の施工確保対策を検討する場として2013年3月に初会合を開催。それ以降、国交相出席のもとで会合を開き、復興係数による間接工事費の補正、発注見通しの統合化、公共工事設計労務単価などの適用前倒しといった対策を打ち出してきた。
 8回目を迎えた今回は、国交省から石井大臣のほか、五道仁実大臣官房技術審議官、青木由行大臣官房建設流通政策審議官、川元茂大臣官房官庁営繕部長、津田修一東北地方整備局長らが出席。被災自治体からは千葉茂樹岩手県副知事、村井嘉浩宮城県知事、内堀雅雄福島県知事、郡和子仙台市長らが顔をそろえた。
 石井大臣は冒頭、「基幹インフラの復旧・復興や住宅再建は着実に進んでいる。ただし、依然として不自由な生活を強いられている被災者も多い。一刻も早く生活、なりわいを再建させ、実感できる復興につなげていきたい」との決意を示した上で、「13年3月以来、復興加速化会議で最新の現場の状況を踏まえ施工確保対策などを講じてきた。きょうも地域の実情を直接伺い、必要な対策を打っていきたい」と力を込めた。
 被災自治体からは「被災地の復興は着実に進んでいるが、早期復興に向けて、復旧・復興事業の確実な予算措置とともに、復興係数などの特例措置を継続してほしい。技術難易度が高い工事に対応するため、国による支援もお願いしたい」(岩手県・千葉副知事)、「復旧・復興を進めるためには確実な予算措置が重要。入札不調は16年度からふたたび増加傾向となっており、引き続き施工確保対策が必要」(宮城県土木部・櫻井雅之部長)、「福島復興再生道路や復興祈念公園の整備は今後本格化するため、施工確保対策を継続するとともに、復興を成し遂げるまで確実な予算確保が不可欠」(福島県・内堀知事)、「多重防御のかさ上げ道路、避難道路の整備を円滑・着実に進めていくためには、復興係数などの施工確保対策が労働者確保や資材調達の面から大変有効であり、ぜひ継続してほしい。安定的な予算確保も欠かせない」(仙台市・郡市長)などと、施工確保対策の継続や復興に必要な予算の確保を求める声が相次いだ。
 これを受けて石井大臣は「被災3県・仙台市の皆さんから、復興を着実に進めるために復興係数の継続が重要という声が寄せられた。私も復興係数は継続させたいと思っている」と明言。さらに「昨年の会議で打ち出した『東北復興働き方改革プロジェクト』の柱の一つであるICT土工では、約3割の時間短縮効果が確認された。その成果を休日の確保につなげることも可能だ。こうした動きを東北全体に浸透させていくためには自治体とのさらなる連携が必要であり、新たな対策を加えながら引き続き推進する」と強調し、新たに「東北復興働き方・人づくり改革プロジェクト」として、自治体や中小企業対策を含めたパッケージ施策を展開する意向を示した。
 具体的には、ICT活用工事推進「見える化」プロジェクトとして、自治体やNEXCO分を含めたICT工事発注予定統合版の運用を始めるほか、ICT工事初受注者を発注者がサポートするチャレンジ型工事や、ICT全面活用を担当した技術者に対して「活用証明書」を発行し、次回の総合評価入札時に加点する方式の試行などを想定。また、CIMの導入に向けて、調査・設計分野では、予備設計・詳細設計で受注者希望型、特に重要構造物は発注者指定型で発注し、導入に伴う業務量の増加に対して適切な費用を計上するとともに、総合評価での加点、成績に反映する方式も採用する。工事施工分野では重要構造物などを対象に発注者指定型、受注者希望型でのCIM活用工事の発注を推進。維持管理分野では活用可能な分野への導入に加え、設計・施工で蓄積されたCIMデータの効果的な活用方法について検討を進めていく。
 提出書類などの簡素化・簡略化に当たっては、入札申込資料を大幅に削減する簡易確認方式を段階選抜方式の全工事に適用。工事作成書類の内容や簡素化の概要を明確化した「工事書類簡素化のポイント」をまとめるとともに、18年度上半期を目標として、東北整備局が独自で設定している工事関係書類の簡素化や、国と自治体の工事書類様式の共通化などを進める。ウェアラブルカメラなどを活用した現場監督も試行件数を17年度の約30カ所から倍増させる方針だ。
 人材育成の観点からは、ことし3月に設置した東北土木技術人材育成協議会のメンバーに自治体を加え、官民共同の技術講習会に自治体職員も参加する仕組みを整える。また、女性技術者を主任(監理)技術者、現場代理人、担当技術者として専任配置した場合に総合評価で加点する工事を新たに試行する。
 自治体(特に市町村)の復興事業を円滑化するため、東北整備局の専門技術者らで構成する「復興促進アドバイザーチーム」を派遣し、用地確保・施工方法・関係機関協議などを技術的に支援する仕組みも新設する。
 ワーク・ライフ・バランスの改善に向けては、週間を通じて時間外労働を避ける取り組みである「ウィークリースタンス」を、災害復旧工事などを除いた全ての工事で徹底する。
 東日本震災を風化させない取り組みとして、復興加速化会議の構成団体などが連携して、震災の記録・記憶をネットワーク化・見える化することも視野に入れている。

早期復興、働き方改革の決意新たに
建設関係団体が意見表明

 復興加速化会議には、▽東北建設業協会連合会▽日本建設業連合会東北支部▽全国生コンクリート工業組合連合会東北地区本部▽宮城県地域型復興住宅推進協議会▽建設コンサルタンツ協会東北支部▽日本補償コンサルタント協会東北支部▽建設産業専門団体東北地区連合会―など建設関係団体のトップも参加し、石井国交相が表明した復興係数の継続に謝意を示した上で、早期復興に加え、働き方・人づくり改革などを積極的に進めていく決意を表明した。
 東北建協連の千葉嘉春会長は「10年後の建設産業を見据えた『建設産業政策2017+10』が提言された。また、政府の働き方改革実行計画で、建設業も他産業と同様に罰則付き時間外労働規制が設けられる。こうした中、担い手確保のためには、屋外で働く建設従事者が他産業に見劣りしない生活給を加味し、生涯を託せる労働賃金の確保対策が不可欠。建設業が適正な利潤を得て経営基盤を盤石なものとし、将来的な見通しを持って労働環境の改善、人材確保に取り組むことで、夢ある産業として魅力を高め、好循環を構築していきたい」などと述べた。
 日建連東北の伊藤昌昭支部長は「i―Construction推進に向け、東北支部では昨年3月に生産性向上推進特別委員会を立ち上げ、ICT土工現場の実態調査や現場視察などを通じ、さまざまな条件下でのICT技術の普及を推進している。ICT導入により生産性はもちろん、安全性の向上にも大きな成果を挙げている。これからもCIM導入などICTの適用の幅を広げ、i―Constructionへの取り組みを促進していく」と強調。また、担い手の確保・育成に関しては「今月末の本部理事会で週休2日実現行動計画が正式に決定されれば、労務賃金の改善、適正な工期の設定などの具体的な方策が打ち出され、業界の意識改革につながる。東北支部としても地域に即した独自の方策を織り込むなど、東北地域での建設産業・従事者の労働環境改善のけん引役を自覚して取り組んでいく」と話した。
 全生連東北の永田茂男副本部長は「岩手県沿岸部や宮城県気仙沼地区、福島県相双地区では、海岸工事の本格化に伴い生コンの出荷量が依然増加傾向にある。地域レベルできめ細かに対応するため、引き続き建設資材対策東北地方連絡会や各地区の資材対策会議を通じて情報を共有していかなければならない」と訴えた。
 宮城地域型復興住宅推進協の栗原憲昭会長は「被災3県の地域型復興住宅推進協議会では、被災者が住宅を自力再建できるよう支援してきた。これからは廉価で質が高い健康・省エネ型住宅が求められており、これを量産できるよう活動を継続していく」との方針を示した。

提供:建設新聞社