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建通新聞社(東京)
2018/03/12

【東京】都検討委 沿道建築物耐震化で新たな方策

 東京都が設置している特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化促進に向けた検討委員会(委員長・加藤孝明東京大学准教授)は、3月9日に開いた6回目の会合で、都が今後展開すべき施策の素案をまとめた。耐震化の意思を持つ建物所有者に対する継続的な助言ができる仕組みの整備や段階的な耐震改修工事の推進、賃貸建築物の占有者から協力を引き出すための移転費用に対する支援などを打ち出している。3月28日に開く最終会合で報告書をまとめて都に提出。都が都民意見の反映手続きなどを経て行政計画として確定する。
 検討委員会では、@耐震化の意思を有していない建物所有者への実効ある対応A建物所有者の取り組み対するさらなる支援B賃貸建築物などの占有者から協力を引き出すための方策―の三つの視点から、都が取り組むべき具体的な方策をまとめた。
 耐震化の意思のない建物所有者に対しては、耐震診断結果を公表することで自主的な耐震改修を促すとともに、指導や指示なども行う。
 耐震化を目指す建物所有者に対しては、継続的に助言できる仕組みを整備する。建物所有者の抱える課題を的確に把握し、助言に適した専門家を検討・判断した上で、耐震化が完了するまで継続的に助言できるようにする。建物所有者からの要請に応じ、都と協定を結んでいる相談窓口を通じて建築士などのアドバイザーを派遣する現在の「耐震化アドバイザー制度」を拡充する格好で、相談内容に応じて弁護士やファイナンシャルプランナーなども派遣できるような仕組みを想定している。
 また、耐震改修費用に関するデータの情報提供も行う。パンフレットやホームページに掲載している耐震改修事例などを都がリーフレットにまとめ、個別訪問時に提供する他、都がこれまでに把握した特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震改修工事のデータを基に、用途や規模、改修前の耐震化指標(Is値)ごとの耐震改修費用に関する情報を提供する。
 さらに、段階的な耐震改修工事も推進する。Is値0・3未満の耐震性の低い建築物では、一度の工事でIs値0・6以上にすることが困難なケースが多く見られるという。区市町村が実施している耐震化助成の大半は、Is値を0・6以上に引き上げることを条件としているが、例えば段階的な工事によってIs値を0・4に引き上げるだけでも、倒壊による道路閉塞(へいそく)の可能性が低くなるため、その利点を建物所有者に周知するとともに、区市町村に対して段階的改修に対しても助成を行うよう働き掛ける。
 占有者からの協力を引き出すため「占有者の責務」を位置付けるとともに、移転費用などに対する支援を新たに用意する。

提供:建通新聞社