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北海道建設新聞社
2018/04/18

【北海道】培った土木技術生かし 被災地復興に5年間

石巻市派遣の千歳市OB富樫さん
 「少しは役に立てたかな」。こう語るのは東日本大震災からの復興のため、北海道市長会を通じて宮城県石巻市の任期付き派遣から無事戻ってきた千歳市土木技術職員OBの富樫省三さん(67)。事業量の急増で技術職員が足りないとう現状を目の当たりにし、OBには長年培った技術を生かしぜひ足を運んでほしいと訴える。団地の造成や下水道の復旧に携わった5年間を振り返ってもらった。
 建設部都市整備課区画整理係長として、定年退職を控えた2011年3月11日の出来事。黒い津波がまちを襲う映像に衝撃を受けた。自分にできることがあれば、少しでも手助けしたい。その後、父親を見送って生活が落ち着いた頃、「がれき処理に行こうかな」と妻の澄子さんに話していた時、ちょうど派遣要請が届いた。
 期間は13年4月1日から18年3月31日まで。石巻に派遣となったのは、一番初めに電話が来たから。軽自動車で苫小牧から仙台までのフェリーに乗った。市内に入ると魚が腐ったような臭い。市街地のがれきは撤去されていたが、震災の影響はまちに色濃かった。
 最初に配属されたのは震災復興部の集団移転対策課。山を削った高台に住宅団地を造成し、海岸部から住民を移転させる。業務は設計、積算、監督。これまでの経験がそのまま生きた。
 苦労したのは、何十万立法mもの残土処理。航空写真を見て、土を置けそうな谷あいを探した。土地所有者に連絡しても、江戸時代から名義変更がされないままだったり、適地を見つけるのに何カ月も掛かった。
 最初、地元の人々の浜言葉に慣れず、怒られているような気がした。住宅地の完成が待てず「まだできないのか」と言われたことも。だが、親や子どもを亡くし、狭い仮設住宅に住んでいる状況を目にして、どこか納得した。
 15年度から建設部下水道管理課に移り、3年働いた。市内全域の管渠や開水路の改修に携わった。人口14万人を超える石巻市だが、下水道の普及率は7割未満で驚いた。完成検査で何百カ所とマンホールに潜る日々だった。
 市の借り上げアパートに住み、気晴らしは映画館に足を運ぶこと。盆と正月は帰省したし、澄子さんは2週間程度の滞在を年4、5回してくれた。娘4人、孫7人も「頑張って」と励ましてくれた。
 石巻をたつ日、防災集団移転促進事業の竣工式に参加した。主に担当した本庁半島部地区を含め、全部で46地区65団地、面積は計216・48ha、全2639区画の大事業。最後に整備された河北地区の二子団地での合同竣工式だった。「少しは役に立てたかな」。家が建ち始めた様子を見て、そう思った。
 任期付き職員は最長5年という決まりがあるので帰ってきたが、本当はもっとやりたかった。震災前に約600億円だった市の一般会計は、震災後に数千億円に膨れた。全国から業者は詰め掛けるものの、事業量の急増で人が足りず、入札不調も多く発生。いまだに技術職員が足りていない。若い人は難しいかもしれないが、OBにはぜひ行ってほしい。