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鹿児島建設新聞
2018/08/02

【鹿児島】ジレンマ〜建設業界の憂鬱〜担い手三法改正から4年/「適正な利潤確保」に目を

 品確法と入契法、建設業法を一体的に改正した担い手三法の運用から4年目を迎えた。公共工事の品質確保と担い手の中長期的な育成・確保をキーワードに、建設産業の「適正な利潤確保」を発注者責務として明文化した画期的な法整備だ。実態を反映した予定価格の設定やダンピング受注の防止など、地方自治体の取り組みが今後どう進んでいくか。業界はその動きを注視している。
 そもそも担い手不足はどう数字に表れているのか。国の労働力調査によると、建設業就業者数は1997年の685万人をピークに、減少基調が続いている。2017年は498万人と前年を若干上回ったものの、最盛期と比べると200万人近く減っている状況だ。
 将来への危機感は、年齢構成からも見てとれる。ピーク時(1997年)に55歳以上24%、29歳以下22%となっていたベテランと若手の比率は、この20年で55歳以上34%、29歳以下11%と差が広がり、高齢化の進行を裏付けている。
 こうした背景も踏まえて整備されたのが担い手三法だ。その中心となる品確法では、発注者の責務についても明確化。必須事項として、@予定価格の設定に当たっては、(受注者が)適正な利潤を確保できるよう、市場の最新単価や施工の実態等を反映した積算を行うA歩切りの根絶B低入札価格調査・最低制限価格制度の活用徹底(ダンピング受注の防止)C施工条件と実際の現場の状態が一致しない場合、適切に設計図書を変更(請負額や工期も変更)する−などがある。

■業界団体は運用検証へ
 ただ、これらの責務を各自治体がどこまで真剣に受け止めているかは微妙なところだ。設計変更の対応は徐々に進んでいるように感じるが、ダンピング防止に関しては設計・コンサル分野の立ち遅れ感が否めない。実際、県内市町村でも最低制限価格を導入しているのは2割程度。関係団体からは「適正な利潤を確保できなければ、会社の経営を圧迫し、処遇悪化を招く。品質や担い手確保のためにも導入が必要」といった声が目立つ。
 県建設業協会(野添正文会長)もその動きを注視する。今年度の事業計画には「担い手三法改正の趣旨を徹底していくことが業界の命運を左右する」と明記し、入札・契約制度の運用状況などを検証していく方針だ。
 品確法が示す責務は、発注者だけでなく、受注者にもある。主に挙げられるのは、適正な請負金額での下請契約の締結や社会保険等への加入徹底、学校における職業教育の支援、女性も働きやすい現場環境の整備−など。もちろん、取り組みを推進するには双方の連携が欠かせない。
 担い手三法は、業界が声を上げていくための根拠となり得る。発注者もこれまで以上に厳しい目が向けられることを理解し、スピード感を持って対応してほしい。

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