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建通新聞社(岡山)
2018/07/23

【岡山】7月豪雨緊急ルポ 岡山県建設業協会の災害対応

 荒木雷太会長が18支部の各支部長にファクスで緊急連絡を送付したのは、県全域に猛烈な雨が降りしきる6日正午。台風7号が九州に接近した3日以降、梅雨前線とも重なり長期的な荒天が続いていた。荒木会長から各支部への連絡は、今後緊急対応の必要がある場合への注意喚起を促すものであり、この時はまだ、それほどの切迫感はなかった。
 不穏な空気が漂い始めたのはそれから数時間後。「大雨特別警報」が発令され、携帯電話からはひっきりなしに避難勧告や避難指示の連絡が鳴り響く中、午後4時30分に岡山県が災害対策本部を立ち上げ、それに呼応して、荒木会長は即座に4人の副会長に電話で連絡を取り、県建協でも午後5時15分に災害対策本部を建設会館内に組織した。荒木本部長をトップに、まずは指示系統の明確化を図り、刻々ともたらされる被害情報の把握にも努めた。
 まずは第一に、会員企業と会員家族の安否状況の確認を最優先。そして、連絡責任者である対策本部の大前進専務理事が、災害時の応急対策に関する協定を結ぶ県からの要請に基づき応急対策業務の実施を指示したことにより、ここから一気に緊張感が高まった。
 災害時の緊急対策は時間との勝負である。しかし、2次被害につながる恐れも十二分にあり、復旧作業は常に命懸けだ。倉敷市真備町では、予想を上回る速さで1級河川の水かさが増し、その支流である小田川の左岸各所などが決壊したことにより、予想をはるかに超える広範囲での浸水被害をもたらした。これ以上の被害拡大を食い止める術は、もはや決壊した堤防を早急に修復する以外はない。このような切羽詰まった状況が、他の河川をはじめ県内各地の用水路やため池など至る所で見られ、あまりの多さに応急復旧は困難を極めていた。7月18日現在の県がまとめた被害状況によると、道路や河川、砂防、下水道などの公共土木施設の被災箇所は1790件で、被害総額は179億2386万円に上る。
 応急復旧の要請は、被災地を管轄する県民局から当該支部に連絡が入る。支部と県民局は応急対策の細目協定を結んでおり、現地を誰よりもよく知る行政と業界団体が直接連絡を取り合うことで、より迅速に復旧活動に当たることができる。要請内容などは県建協対策本部にも各支部からリアルタイムで届けられ、本部からも適切な指示が飛ぶ。
 最初に動きがあったのは7日の午前6時。砂川と国道250号との交差部から上流左岸側で100bにわたり堤防が決壊し大量の水が市街地に流れ出しているとの連絡を県から受け、西大寺支部がその対応に当たった。現場に入ったのは長田建設と村上興業の2社。その後、笠岡・井原・矢掛・浅口の各支部にも支援要請が次々と舞い込み、各支部の会員企業がその都度、倒木の撤去や道路を覆う土砂の除去などに奔走した。中でも被害が甚大だった倉敷市真備町地区の災害対応には吉備支部がその任に就いた。しかし、会員企業の多くも社屋が浸水し、機能が停止している状態が長く続いていた。片岡公省前支部長の会社(オカジュウ)も例外ではない。3階建ての社屋の2階部分まで濁流が押し寄せる惨状であった。
 吉備支部が対応に当たったのは、少し水が引き始めた8日から。しかし現場に資材を運ぶためのダンプが手配できない。なぜなら、災害支援の要請は県からだけではなく国からも地元自治体からも絶え間なく入ってくるからだ。その都度それらの要請に対応する必要に迫られ、結果的にはより緊急性の高い依頼が入っても、車両や資機材の不足により、対応ができないジレンマに陥る。また、現場に行くまでの道路が被災し所々で寸断しており、交通渋滞とも相まって、場所によってはほとんど身動きできない状況にあった。後に県建協が「道路防災計画は主に震災を想定したものであり、今回のような大規模な水害時ではほぼ機能しないことが如実になった」と語った言葉が印象的だ。12日になってようやく、小田川の支流である末政川と真谷川の破堤現場に重機が入った。担当したのは中本工務店、そしてオカジュウの姿もそこにあった。
 市街地から水が引き始め、やや落ち着きを取り戻したと思った瞬間、その爪痕は鮮明になり、今回の被害の大きさをまざまざと見せつける。災害復旧にはこれから多くの時間と労力を要するだろう。11日には安倍晋三首相が岡山県を視察し、甚大な被害の現状を目の当たりにした。避難場所も訪れ、生活必需品や仮設住宅などの確保にしっかりと取り組んでいくことを約束。また、伊原木隆太岡山県知事からの要望も受け、「財政措置をしっかりと講じる。財政上でちゅうちょすることのないように安心して応急・復旧対応に当たってほしい」と県には呼び掛けた。
 今回の災害応急復旧には県建協からは6支部・延べ124社が活動に当たった。応急対応の難しさが露呈する一方、自身が被災しながらも地域のために駆けずり回る建設業の頼もしさも再確認できた。「今回の大災害を教訓に、国や県とも協議し、資機材の確保策や応急復旧現場へ急行する方法などをしっかりと話し合いたい」としている。国からの激甚災害指定のめどが立ち、これからは本格的な復旧活動が始まる。災害協定での一連の活動について、また今後の協会の役割として荒木会長は「今回の大災害をもたらした線状降水帯等による豪雨災害など、新しいタイプの災害が今後も増えるものと予想される。こうした災害に際しても、被害を最小限に食い止める手立てを、今回の大災害を教訓として行政とも十分に協議し検証しておく必要があると考える」と語った。

「提供:建通新聞社」