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建通新聞社四国
2018/08/21

【愛媛】豪雨による斜面災害の特徴は−。愛大災害調査団が報告

「平成30年7月豪雨」により愛媛県内で発生した斜面災害の多くは、「降雨耐性の低さ」と「多数の深層崩壊」が特徴だった−。豪雨災害の現地調査をしている愛媛大学災害調査団(団長・大橋裕一学長)がまとめた報告によると、斜面災害の発生した箇所は平年降雨量の少ない地区で、今回のような多量の降雨に対する地盤耐性の低い地域が多かった。また、人的被害やインフラ被災の大きかった地域の斜面災害は、表層部の崩壊ではなく基盤層の中から崩れる深層崩壊だったとしている。調査団は、宇和島市吉田町周辺で発災時に「ドーン」という轟音の直後、眼前に土石流が一気に押し寄せる、いわゆる『山津波』が発生したとの複数住民の証言を得ているといい、過去に例のない甚大な被害だったとの認識を改めて示した。
 8月10日の報告会に臨んだ愛媛大学の森伸一郎准教授は、「これほど多数の深層崩壊が一度に発生したことは愛媛県では初めてかもしれない」と述べ、昨今の気象変化の激しさを考えると、「リスク特定の在り方を見直す必要がある」と指摘する。
 今回の豪雨災害で多量の雨が降った地区(宇和島市吉田・三間、西予市宇和・野村)は、平年の降雨量は比較的少ない地区であり、元来は降雨への耐性が低い地域だったと認識する必要があったという。
 また、斜面災害ではミカン山の崩壊が目立ったが、被災規模の大きかったところは基盤と表層の境界が滑る「表層崩壊」ではなく、滑り面が基盤の中に達する「深層崩壊」だったとしている。
 森氏によると、ミカン山の土壌はもともと透水性が高く、風化が進み節理の発達した岩盤では割れ目に雨水が浸透しやすい。間隙への水圧が増し、滑り抵抗が低下したことが崩壊につながったと推察されるという。
 また、吉田町法花津与村井では、複数の地元住民から「岩盤からバケツ大の太さもある大量の水が噴出した」との証言があったとされ、岩盤に雨水が繰り返し浸透することでパイプ状の水筋が形成される、いわゆる「ソイルパイプ」の存在が複数箇所で目視にて確認された。発生メカニズムや形成過程について調査の必要性を示唆している。

提供:建通新聞社