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北海道建設新聞社
2018/09/10

【北海道】厚真など地震被害深刻 大規模停電 復旧に支障

 厚真町で最大震度7を観測した北海道地震の発生から丸一日が経過した7日、現地調査による被害報告が続々と入り、深刻な状況が明らかになってきた。厚真川沿いなどで発生した土砂崩れは広範囲に及び、富里地区などでは土砂に巻き込まれたと思われる住民の捜索が続く。揺れが激しかった同町や周辺の町では道路や河川も被災し、道道は16路線43カ所で決壊や橋梁損傷が出ている。北海道災害対策本部長の高橋はるみ知事は7日、厚真町を訪れ被災状況を確認し、人命最優先の対応を指示した。長引く停電は全道各地の住民生活や経済活動に大きな影響を及ぼしていて、応急復旧の進捗(しんちょく)にも支障を来している。そんな中、道道などでは地元建設業者が協力して応急復旧作業を鋭意進めている。住家被害が大きかった札幌市清田区では応急危険度判定士による点検が始まるなど復旧に向けた動きも見えている。一方で、厚真町の土砂崩れの復旧には相当の時間を要するとみられ、今後の降雨による被害拡大も懸念される。
 ■土砂崩れ甚大、続く懸命の救助作業。
 厚真町での大規模な土砂崩れは吉野、富里、朝日地区などで発生した。道建設部は上空などから現地調査を進めていて、被災規模を含め全容把握に全力を注いでいる。
 また、国土交通省では被害状況を迅速、的確に把握するとともに、公共土木施設に対する応急措置や復旧工法などの指導・助言を行うため、8―17日の日程で災害査定官を派遣し、災害緊急調査を行う。8日は厚真町吉野地区を調査する。
 厚真町を訪れた高橋知事は、避難所になっている同町総合福祉センターと土砂崩れの被災地を視察。自衛隊のヘリコプターで上空から被災現場を確認した高橋知事は土砂の崩落現場に衝撃を受けたと述べ、「人命最優先で、一人でも多くの方々に元気に生還してもらえるよう、最大限でやっていく」と強調した。
 大規模な土砂崩れで住宅が埋まった吉野地区では、自衛隊らによる懸命な救助作業が続けられていた。土砂で埋まった道路では1車線分の土砂が取り除かれ、自衛隊車両などが頻繁に通行。東和地区を通る町道では地震による道路の亀裂や段差が多数見られ、東和生活館近くでは崩落した土砂に押しつぶされた家屋も見られた。
 総合福祉センターを訪れた高橋知事は、宮坂尚市朗厚真町長と共に「いましばらく、一緒に支え合っていこう、頑張ろう」と被災者に呼び掛けた。
 ■土木、公共施設の被害も浮き彫りに。
 土砂崩れ以外でも、公共土木施設が大きな被害を受けている。道路は厚真や安平、むかわの3町の道道や町道が被災。道道は厚真町吉野地区に通じる上幌内早来停線で土砂崩れが発生したほか、千歳鵡川線では道路決壊や橋梁損傷、平取厚真線と豊川遠浅停線でも橋梁被害が出ている。
 道管理河川は、厚真川と入鹿別川の計14カ所。土砂崩れに伴う河道埋そくが複数箇所で確認され、堤防天端に亀裂が入った箇所もある。
 建物被害は61件に上っている。全壊は厚真町19件、安平町4件、むかわ町5件の計28件。このほか、半壊が24件、一部損壊が9件という状況だ。
 住宅・建築物に関しては、被災建築物応急危険度判定で道庁に支援本部を設置。札幌市には実施本部を設置し、7日から応急危険度判定士6人をむかわ町に派遣した。厚真、安平両町への派遣は、引き続き協議を続ける。
 最初の地震直後から全道ほぼ全部の約295万戸で発生した大規模停電は、6日昼ごろから徐々に回復し7日朝までに4割以上の約131万戸が復旧した。北電では7日中には312万`hを確保する計画だが、5日ピーク時だった380万`hの8割にとどまり、道内最大級の苫東厚真火力発電所が復旧するまで1週間程度は十分な電力供給ができない状況が続く。
 水道は、ピークで道内6万1000戸以上が断水した。管路破損の影響で、7日午前11時現在で安平町の約5900戸、厚真町の約2100戸に水が供給できない状況が続いている。
 公立学校施設は札幌市、苫小牧市、安平町、むかわ町、日高町などで被害が出た。軽微な被害が多く、壁や天井の一部破損、窓ガラス破損、渡り廊下の損傷、敷地陥没など。
 人的被害は、7日午後4時現在で378人に上り、厚真町などで計12人の死亡が確認された。
 ■TEC―FORCEの調査進む。
 北海道開発局は、本局、札幌、室蘭の2開建が6日午前3時の地震発生直後に災害対策本部を設置。その他の8開建は応援対策本部を立ち上げ、各開建が給水支援のための散水車やバックホー、電源供給できる照明車などの機械類の貸し出し、道、市町村へのリエゾン(災害対策現地情報連絡員)派遣などを実施中。
 7日午前5時30分現在のまとめでは、緊急災害対策派遣隊(TEC―FORCE)は本局から厚真、安平町などに調査班など70人を派遣。また東北、関東、北陸の3地方整備局から22人の隊員が現地入りしている。
 直轄管理施設は7日午前8時現在、453号千歳市幌美内―支笏湖温泉間8`が台風21号と地震動による2カ所の土砂崩れで依然通行止めとなっているほか、37号白鳥大橋が電気不通により夜間通行止めの方針。また日高自動車道は沼ノ端西IC―厚真IC間を開通させたが、厚真IC―日高厚賀IC間40・9`は道路損傷のため通行止めとし、緊急車両以外の走行を制限している。
 河川は堤防天端舗装のクラック、法崩れ、天端沈下などの被害を鵡川で18カ所、沙流川で2カ所確認。このうち鵡川河口付近の左岸堤防の亀裂は応急対策を完了した。
 札幌開建管内でも茨戸川、石狩川放水路、豊平川、嶮淵(けぬふち)川でクラックや法崩れが確認されている。直轄ダムは二風谷で管理用道路の土砂崩れ、夕張シューパロダム貯水池の法崩れが発生したがダム管理上の支障はないとしている。
 農業用ダムの厚真ダムは、洪水吐きの中に土砂が流入。同ダムへと向かう道路にも土砂が流出していることから、道路啓開や洪水吐き内の土砂撤去、ダム湖水位の観測を進めて、今後予測される降雨に備えている。
 同ダムはロックフィル式で提体を植生が覆っているため、洪水吐きからの越水による本体浸食に備えて提体の洪水吐き側3分の1程度に養生用ブルーシートを敷く応急対策に着手。今後は室蘭開建、自衛隊のほか、北海道建設業協会や北海道土地改良建設協会会員企業の協力も得て進める。
 7日午前中に札幌第1号同庁舎の同局対策本部で開かれた会議後、水島徹治局長は「厚真ダム下流に厚幌ダムがあるとはいえ、土砂災害対策に万全を期す。道と市町村に対する支援にも注力する」と話した。
 ■札幌市内では復旧への動きも徐々に。
 札幌市は7日、液状化による地盤沈下で家屋などに被害が発生していた清田区里塚地区で、被災した建物の危険度を判断する応急危険度判定に着手した。対象は全体で200棟を上回る見通し。
 清田区と厚別区で続いている断水は7日、管の洗浄作業に入り、9日夕方までには回復の運び。
 通行止めが続いている道道、市道は、仮復旧した一部路線で解除。被害の大きかった東15丁目屯田通、西4丁目線は、早朝から本格的な復旧作業に着手したが、開通のめどはたっていない。
 負傷者は午後3時現在で207人。公共交通は市電が午前、地下鉄各線が午後に運行を開始。路面バスは信号復旧まで当面運休。停電は午後4時段階で一部解消され、復旧が進んでいる。