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北陸工業新聞社
2018/11/06

【石川】「昭和」から「平成」、そして次の時代へ(1)/「境界を越え、新たな価値観を創造」/県建築士事務所協会会長西川英治氏 

 「昭和」から「平成」に移って30年が経ち、来年5月から元号が変わり、新たな時代がスタートする。第4次産業革命を迎え、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)が叫ばれる今、次はどんな世の中が訪れるのか。シリーズで考えてみたい。第1回は、石川県建築士事務所協会会長で五井建築研究所(金沢市)の代表取締役を務める西川英治氏に、建築界を取り巻く環境の変化などを聞いた。
 −AIやIoTの進展で様々な変革が起こり、社会全体が新しい時代に突入していく。今後、どうなっていくのかを、現実的に捉えていかなければならない

 「建築関係でAIをどう生かすのかという研究が進んでいる。例えば、安藤忠雄氏や伊東豊雄氏が設計した建物を徹底的にAIに覚えさせ、その上で敷地などの諸条件を入力すると、数分間のうちに安藤風、伊東風のプランが200通りぐらいできるという。下手をすると、設計者がAIに使われる時代になっていく可能性がある。今後、5年ぐらいでかなり実用化されていくのではないか」

 −そんな時代になると、設計者とは何なのかをしっかり捉えていないと、建築家の成すべきことがなくなってしまう

 「AIは今、ツールだが、ツールがものを考え始めると、どういう世界になっていくのか。人間ができることは、設計者として、しっかりとした価値観を持つことが大事。何の目的でその建築をつくるのか、それをつくることで社会にどういう貢献をしたいのか。建築以前の基本的な人間としての生きる姿勢そのものが、問われてくるように思う」
 「もう一つは人と人とのつながりだ。建築を通して価値観を共有できる、そういう仲間や相手がどれだけいるかということ。建築は経済活動の一環ではあるが、私たちは地域の文化を守り継承していくことに大きな意味があると考えており、そうした価値観を共有できる人たちと共に建築をつくっていきたい。そうした継続的な活動が社会を変えていくように思う」
 −次世代の建築設計事務所は「経営が順調」「仕事がたくさんある」ということが「すべてではない」というところに難しさが生じてくる

 「当社の3代目の代表取締役に就任した際、プロポーザル競技の時代になり、幸運なスタートを切れたが、当時は単体の建築しか考えていなかったような気がしている。ここ数年、社会福祉法人佛子園の仕事を通じて、建築と人、まちとの関係について、より深く考えるようになった。金沢工大白山麓キャンパスでは、まちづくりの一環としての提案を行った。過疎地に工大ができるということはどういう可能性が広がるのか。単に空から舞い降りる建築ではいけないと考えた」

 −建築をつくるシステムも、これまでのような建築設計事務所がいて、施工者に入札してもらうという発注の仕方そのものも変わってくる

 「国交省が力を入れているのは、コンストラクション・マネージメント(CM)で、今、法整備をしようとしている。これも設計や施工といった従来の(分業型の)境界を越えないといけないし、そうでなければ、世の中の動きにしっかりと対応できない。近代建築思想のような欧米の建築をものづくりの手本としていた時代とは違うような気がする」
 「最近、まちづくりにより深く関わる仕事が増えてきた。佛子園の『輪島カブーレ』では、当社の若いスタッフが2年間、輪島に常駐し、住民票も移して市民の立場になってまちづくりに携わった。今夏、金沢の東山で古い町家を買い取って『東山寮』にリニューアルしたが、それも昔ながらの伝統文化の中に住み、実際に生活したりすることで金沢を立体的に捉え、地域文化やまちづくりを本質的に考える機会にしたいという思いからだ」

hokuriku