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日本工業経済新聞社(茨城)
2019/01/09

【茨城】原研が県内で1兆円試算/施設廃止の長期方針


 日本原子力研究開発機構は原子炉等規制法の許可施設79施設について、廃止や廃棄物処理・処分の方法などを定めた「バックエンド対策」の長期方針(ロードマップ)を公表した。茨城県内の施設は@原子力科学研究所(東海村)が「JRR―2」(研究用原子炉)など31施設A核燃料サイクル研究所(東海村)が「Pu―1」(プルトニウム燃料第一開発室)など20施設B大洗研究所(大洗町)が「常陽」など18施設―の合計69施設が対象。対策は約70年間を想定し、3期に分けて推進する。対策費用は約70年間で1兆9100億円を試算。そのうち茨城県内の施設は原科研に3500億円、核サ研に1兆400億円、大洗研に2800億円の合計1兆6700億円を試算した。(2面に茨城県のバックエンド対策対象施設を掲載)

 原子力機構では、保有する原子力施設の安全強化やバックエンド対策のため28年度までの施設中長期計画を17年4月に策定した。一方でバックエンド対策は長期間にわたるため、原子炉等規制法の改正に伴う廃止措置実施方針と併せ、バックエンド対策のロードマップを策定した。
 ロードマップは@廃止措置A廃棄物処理・処分B核燃料物質の管理Cバックエンド対策費用D効率化・最適化に向けた取り組み―に整理。
 対策期間は3期に区分。第1期(28年度まで約10年)では施設の安全確保(新規制基準対応・耐震化対応、高経年化対策、リスク低減対策)を優先しながら対策を行う。
 第2期(29〜49年度の約20年)では処分の本格化および廃棄物処理施設の整備により本格的な対策に移行する。
 第3期(50年度以降、約40年)では本格的な対策を進めて完了させる。
    ◇
 バックエンド対策のロードマップの概要は次のとおり。
 【廃止措置】
 ・役割を終えた原子力施設はできる限り早期の廃止措置を目指す。廃止措置は原則としてリスク低減効果が大きな施設およびコスト削減効果が大きな施設(維持管理費が高い施設)を優先するとともに、発生する廃棄物の管理、放射性物質の施設外移転などに伴う措置に係る安全、核セキュリティ、保障措置の観点などを総合的に考慮して進める。
 ・第1期では主に施設中長期計画で廃止とした施設を実施する。廃棄物発生量が少ない比較的規模が小さい施設を主に進める。第2期移行は施設中長期計画で継続利用としていう施設を含め廃止措置を本格化する。
 【廃棄物処理・処分】
 ◆廃棄物処理
 ・長期間の継続利用が必要な処理施設は原則として修繕、リプレースなどにより機能を維持する。
 ・第1期では既存の処理施設による対応を主に進めるとともに、新規施設の一部(低放射性廃棄物処理技術開発施設、α系統合焼却炉など)を整備する。
 ・第2期では保管廃棄物の逼迫(ひっぱく)回避および処分の本格化へ未整備の設備・施設を順次整備する。
 ・過去に海洋投棄を念頭にセメントなどにより固化した廃棄物は処分方法を含めた合理的な処理方策を検討する。新規施設の整備は第2期後半とする。
 ・溶融処理は、整備している原子力科学研究所の高減容処理施設および大洗研究所の固体廃棄物減容処理施設の処理実績などを踏まえた上で計画を具体化する。新規施設の整備は第2期後半とする。
 ・第3期は全ての廃棄物処理を行う。
 ◆保管・処分
 ・処分の実現へ向けた対応を着実に行い、第2期からの累積保管量の増加を抑制する。
 ・当面、廃止措置で発生した廃棄物は廃止施設の一部を保管廃棄施設として活用するなど保管能力の確保に努める。
 ・処分は放射能レベルの低いトレンチ処分およびピット処分から優先的に進め、第2期での本格化を目指す。
 ・余裕深度処分は合理的かつ効率的な処分が可能となるよう国および関係機関と連携協力して処分の在り方の調整を進めていく。
 ・地層処分は今後、原子力発電環境整備機構などと調整を進め計画を具体化していく。
 【バックエンド対策費用】
 費用は施設解体費用、廃止措置などで発生した廃棄物の処理処分費用から成る。施設解体費用は原子力機構が開発した簡易評価コードにより、廃棄物の処理処分費用は既存処理施設の運転費などを基に仮定した単価、処分単価などにより試算した。
 ◆施設解体費=合計5400億円(青森100億円、原科研900億円、核サ研2100億円、大洗研900億円、敦賀1400億円、人形峠100億円)
 ◆廃棄物処理処分費=合計1兆3700億円(青森100億円、原科研2700億円、核サ研8300億円、大洗研1900億円、敦賀800億円)